ニュージーランドヒメアジサシ(絶滅危惧ⅠA類)の新たな脅威

マンガファイ湾とニュージーランドヒメアジサシ
写真提供: Karen Bair and Brian Chudleigh

世界におよそ5~6ペアしか残っていないニュージーランドヒメアジサシ(ヒメアジサシの亜種)はニュージーランド北島にある美しい港、マンガファイ港で繁殖しています。彼らの繁殖場所は、自然保護局とニュージーランドヒメアジサシ・トラストが捕食動物に対する罠猟プログラムを実施している広大な砂場にあり、ここでは繁殖期の間は巣がしっかりとモニターされます。けれども近年マンガファイ港復元協会(MHRS)なる団体がマングローブのない港を望み、計画当局にマングローブの伐採を申請しました。2012年、環境裁判所は一部のマングローブ伐採を認め、昨年の冬に実施されました。自然保護活動家は、マングローブの伐採はその気根の中で採食し生活するアジサシの主食の一つであるハゼ類を激減させる恐れがあると懸念しています。アジサシの採餌調査はニュージーランドのバードライフ・パートナーForest & BirdのKaren Bairdが他の科学者と共同で行い、野鳥保護インターナショナル誌に公開しました(Ismar et al, 2014: Foraging Ecology and Choice of Feeding Habitat of the New Zealand Fairy Tern Sternula nereis davisae)。この研究は、マングローブ林に生息するハゼが引き潮の時にマングローブ林から出て干潟の水路や水溜りに現れた時にアジサシが捕え、雛に与えていることを明らかにしました。

MHRSは更に多くのマングローブを伐採するために第2段階の計画を提出しました。これは彼らが狙っている地域は残さなければならないという環境裁判所による判決に反するものです。タウランガ以北のニュージーランド北部では、かつてはその高い環境上の価値により適切な保全が行われていたマングローブに関する規制を緩めようとする、地方議会に対する圧力が増しています。

マングローブは依然として、偏見や誤解の対象となっており、保全活動は間違った情報に基づく組織的なキャンペーンとみなされています。マングローブに対する否定的な見方には、マングローブは外来種で北島の港を占領し、モーターボートやジェットスキーのための広いスペースで人々が楽しむのを制限し、マリーナの開発や浚渫の障害になり、開発業者による沿岸の資産の売却価値を損ねると思われています。

実際にはマングローブはニュージーランドの原産種です。海洋生物の生育場としてのその生態学的価値はよく知られており、オーストラリアサンカノゴイやナンヨウクイナなどの絶滅危惧種の生息地でもあり、また自然の緩衝地帯として海岸線を浸食から守っているのです。

仮にこれまでのマングローブ伐採がまだ手遅れなほど進んでいないとしても、さらなる伐採はニュージーランドヒメアジサシにとって深刻な問題を引き起こしかねません。アジサシにとっては彼らの繁殖地に近い豊かな採餌場所、特にマンガファイ港のマングローブが立ち並ぶ水路に沿った場所へのアクセスが非常に重要です。十分なアクセスがあってこそ、メスは抱卵期にも十分な餌にありつくことができ、雛への給餌や巣立ち後の育雛が可能になります。タスマン地方からは警戒すべき情報が入ってきています。クーロン国立公園における近縁亜種・オーストラリアヒメアジサシの繁殖失敗は、採餌場所周辺で適切な餌が不足していたことが原因でした。Bairdと彼のチームは現在マングローブ伐採後の港におけるハゼ類の個体数追跡調査を行っています。それに加えてForest & Birdは、開発計画文書の見直しを行っている北島地方議会と共同で活動を行い、この場所を更なる保全を必要とするサイトとして、IBA(重要生息環境)に認定させるべく取り組んでいます。

 

報告者:Karen Baird

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