そしてパリは2015年を救った
2015年は、気候とエネルギー政策に関して、次の10年で具体的にどのように気候変化に立ち向かうのか、欧州のビジョンを待っただけの年でした。2030年までの排出削減、再生可能エネルギー、エネルギー効率などの重要な目標は2014年末には既に合意されていましたが、実際にどのようにしてこれらの目標を達成するのかという計画策定においてはほとんど進展がありませんでした。パリにおける国際的な気象交渉(COP21)に臨むにあたり、EUは具体的な対策を議論することに乗り気ではありませんでした。
重要な目標を確実に達成するための適切なガバナンスという課題は、気候変動緩和を超えた様々な作業分野を受け持つ全エネルギー連合のガバナンスにより昏迷状態にありました。最近発行されたバードライフ・ヨーロッパとRSPBへのコンサルテーション報告書には、再生可能エネルギーの利用が確実に自然と調和した形で進むように、より効果的で包括的な計画を策定する必要性が有ることが明記されていますが、最近のエネルギー連合の動きを見るとこの点ではただの要望に留まっています。
今年の2月にバードライフ・ヨーロッパが公表したEUの2030年気候政策‘マニフェスト’で優先事項として強調した他の分野では、それなりの進展がありました。EUが2030年までに相互接続送電網に対するより高い目標に合意したので、優先送電線に対する同意プロセスがスピードアップすることが期待されます。‘再生可能エネルギー送電網イニシアティブ’における企業及びNGOの連合は、エネルギー政策分野においてこれが自然保護を犠牲にして行われてはならず、EUの自然法の改変を必要としないやり方で進められるべきであることを明確に示してきました。
EU委員会は今後の10年間でのEUの気候変動緩和の取り組みに土地利用と森林の関係者を含めること、また、全てのバイオエネルギーの持続可能な利用のための新たな政策を提案することをその責任とすることを確認しました。バードライフ・ヨーロッパはこの二つの進展を歓迎していますが、正念場はこれからやって来ます。これらの政策が実効性を持ち、NGOが示したようなバイオエネルギーの真の持続可能性への懸念に立ち向かうものになるかどうかはまだ分かりません。
そして、もちろんCOP21がパリで開催され、2015年は前向きの雰囲気で終わりました。合意内容には確かに多くの前向きな特徴があります。少なくともそのうちの3つはここで述べておく価値があるものです。
第一はかつてない多数の国が署名したことです。京都議定書策定の時と異なり、パリで協定には地球上のほぼすべての国が加わりました。第二は野望です。1.5℃の上限と2050年以後の炭素ニュートラルは気候活動に携わる人々に歓喜をもたらす目標です。残念ながら野望を現実のものにする一連の対策とプロセスを示した‘野望メカニズム’は今のところ非常に曖昧で、各国政府を正しい道筋に進ませるには材料が全く足りていません。‘後退禁止条項’(2020年以降、5年ごとの見直しでは、各国はより高い目標のみが許される)は確かにある程度の安心感をもたらしますが、十分でないことは明らかです。
第三は私たちの心に最も近い‘自然談話’です。今回ついに、気候変化との戦いにおける、森林から海洋を含む健康な生態系の役割が、合意文書の序文から明確に認識され文書に反映されています。さらに今回、適応対策が地球温暖化に立ち向かう上で戦略的かつ必須であることが完全に認識されました。この成果によって、‘自然保護活動家’と‘気候運動家’のギャップが埋まっていくことが期待されています。
報告者: Sini Erajaa
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