鳥は地球温暖化問題の隠れた犠牲者: RSPBの新報告

この20年間で英国での個体数が70%減少したミツユビカモメ
写真提供: John Fox/BirdLife

気候変動は自然と野生生物にとって最大の長期的な脅威の一つです。現在、地球の温暖化は植物、哺乳動物、鳥類、そしてヒトなどの幾つかの種の適応力よりも速く進んでいます。気候変動に対する自然の回復力は生息地の喪失、過剰な開発、その他の人の活動により既に弱められていることで、より現実のものとなっています。

RSPB(王立自然保護協会: 英国のパートナー)は気候変動の影響についての私たちの理解を深めてくれるような科学的研究に関わって来ました。事実をより多くの人々に認識してもらうため、RSPBは気候変動が現時点で既に欧州の野生生物に与えている影響の科学的証拠を集めた新報告書を発表しました。

この報告書は、私たちが目にしてきた野生生物への地球温暖化の影響、今後予想される変化および自然と人の双方の利益となる可能性のある保護活動の対応について報告するために作成されました。

英国や欧州全土で気候変動は既に自然を変えてしまっています。植物や動物はある気象条件下でのみ生息することができます。気候の変化に伴い、生物は新たな環境条件の影響を受け、それに対応しなければなりません(既に北あるいは標高の高いところへ移動するなどの対応をしている種もいます)。極端な気象現象による野生生物の大量死から気温上昇による不適切な生息地への移動まで、気候変動は野生生物に大きな困難を突き付けています。

もし世界の気温が今より摂氏3度上がるとすると、欧州で繁殖する鳥が生息できる地域は今世紀末までに550キロメートル北に移動すると推定されます。気候変動だけで鳥は繁殖地の20%を失う可能性があるのです。

今すぐに急いで行動を取らなければ野生生物は気温上昇の結果現在よりも厳しい環境に直面することが研究により示されています。

RSPBの新報告書の各章には既に起きている影響と今後予想される影響が例示されています。また各章にはRSPBが行ってきた学術研究や保護活動に焦点を当てた詳細なケース・スタディが掲載されています。

例えば報告書ではイギリスで過去20年の間に個体数が70%も減少したミツユビカモメの窮状を明らかにしていますが、気候変動による種のミスマッチが原因の一つと言われています(北海では水温上昇がプランクトン群集を変化させています。新たにやってきたプランクトンはミツユビカモメの主食の小魚、サンディールにはあまり適さない種で、この結果ミツユビカモメの餌が減る原因になっているのです)。

けれども報告書には暗い事実ばかりが書かれているではありません。種によっては生き残りのために急速に新たなエリアに移住していることが報告されています。1900年以後セイタカシギ、ヒメヨシゴイ、アマサギなど少なくとも120種が英国内でコロニーを形成しました。ただし、広範囲の欧州全体で、今後の数十年単位で考えると、これらの変化は鳥にとって利益のあるものではなく、より困難なものになるでしょう。

とはいえ、野生生物は適切な生息環境が十分ありさえすれば気候変動にも適応できるでしょう。報告書は種の移動を可能にする、より野生生物に優しい広い場所を作ることに加えて、管理の向上、既存の保護区の連結性、新しい陸上および海洋の保護区の設立を提唱しています。

それ故に、継続的に温室効果ガスの発生を減らす努力に加えて、EU野鳥指令と生息地指令がEUと加盟国によりこれまで以上に履行される必要があるのです。加盟国はこれらの重要な法律が欧州委員会の‘フィットネス・チェック’の名のもとに変えられることに異議を唱えるべきなのです。

最も大切なこととして、この報告書では気候変動への人類の適応を助け、同時に生物多様性にも利益をもたらすことが出来る自然に基づいた解決策の必要性を挙げています。例えば、自然保護団体、政府及び産業界によるパートナーシップを通じた生態系の復元が求められています。

 

報告者: Sanya Khetani-Shah

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