EUの新しい外来種規制は数十億ユーロを節約する機会を失うのだろうか?

カササギフエガラスはEUが提案したリストに含まれていない外来種の1種です。
写真提供: Cskk/Flickr

侵略的外来種(IAS: 偶発的あるいは意図的に本来の自然環境に持ち込まれた動植物、以後単に外来種と称する)は西暦1500年以後の世界的な鳥の絶滅の大きな原因です。134種の絶滅した鳥類のうちの71種が外来種に関係しています。一国でこの問題を解決できる国はありません。外来種問題に取り組むには各国間の協力と共通ルールが必要なのです。

EU全体での対応は長期に亘り延び延びになっており、2014年に自然保護団体は外来種の持ち込みと拡散を防止し、管理するEU規制 1143/2014 の採択を歓迎しました。これは間違いなくEU(欧州連合)により‘外来種に対するEU生物多様性戦略2020年度ターゲット5’と‘CBD(生物多様性条約)愛知ターゲット9’を達成するための最も重要な政策的対策となる可能性があります。

けれども、EUの提案による外来種のリストの長さから考えて、それは実現しそうにありません。EUで容認できない外来種37種にはアカオタテガモ、アフリカクロトキ、ウシガエル(両生類)、アライグマ(哺乳類)および5種のザリガニが含まれていますが、インコ類とカナダガンおよび多くの陸生、水生植物がリストから除外されているのです。

ヨーロッパでは外来種が島嶼で海鳥の個体群減少に重大な影響を及ぼし、淡水の生態系を変えてしまいました。バードライフ・ヨーロッパはこの規制の採択につながるプロセスに加わり、他のNGOや科学コミュニティの協力を得て、規制の条文に影響を与え、リストの上限50種の制約を外すことに成功し、また証拠に基づく意思決定のための科学フォーラムを行いました。

ところがEUの提案リストは50種よりも少なかったことから、これまでの努力が不十分だったことが明らかになりそうです。

提案されたリストは外来種の防止に焦点を当てておらず(提案リスト37種のうち僅か3種がヨーロッパに現存していないか、外来の初期段階にある種である)、また、種の拡散の主要経路に取り組んでおらず(海洋の種がリストには全く含まれていない)、さらに経済的論議を元に最も広範囲に広がっている種への取り組みを怠っています。経済推計には何もしないことによって発生するコストと将来世代に転嫁される巨額の財政負担(数十億ユーロ)が含まれていません。

最近、欧州委員会の資金支援によって科学者のグループが行った水平走査(将来的に問題となる可能性のある種の試験)により、95種の海洋性、陸生、淡水性の種が、現在はまだ居ないか侵入の初期段階にあるがリスク評価で非常に高い優先性があると考えられるものが特定されました。それらは水生無脊椎動物からミノカサゴ、ハッカチョウ類からアカハナグマに及んでいます。これらの種は最も脅威のある新しい外来種で、欧州委員会あるいはEU加盟国は早急にリストに加えるよう提案すべきです。

バードライフ・ヨーロッパが主導する類似のイニシアティブでも外来種の生物多様性への影響可能性、関係する生態系サービス、彼らがヨーロッパに現れた歴史などに基づくリスク評価のために種に優先順位を付ける系統的なアプローチを用いました。そこでは200種が緊急なリスク評価の優先度の非常に高い種、326種が2021年6月に今回の規制を見直しが行われる前にリスク評価を完了しておくべき種だと特定しています。私たちのリストにはアメリカミンク、数種のマングース類、ヘビその他の爬虫類、カササギフエガラス(写真)、数種のインコ類、アリおよび陸生と水生植物の長いリストが含まれています。

この活動の結果は科学雑誌に掲載するために提出されており、その時には有用な政策提言用のツールになるでしょう。

欧州委員会には外来種に関してもっと先見性があり、その侵入を防ぐことに焦点を合わせるための充分な科学的根拠があります。外来種規制が有効に影響するかどうかは外来種リストの長さ、包括性、予防的な性格かどうかに掛かって来るでしょう。

もしそうならなければ、違いを生み出し、数十億ユーロを節約する機会を失うだけでなく、EUは2020年生物多様性戦略と愛知ターゲットから逸脱してしまう結果を招くことでしょう。

 

報告者: Carles Carboneras

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