新種か、気付かれていない苦境か?
美しい新発見の種‘タルバー’はミミヒダハゲワシをデジタル処理した画像です。この架空の鳥は‘世界ハゲワシ啓発の日’にアフリカのハゲワシの苦境に注目を集めるためのキャンペーンの一環なのです。
バードライフ南アフリカが慎重に計画したキャンペーンは直ちにソーシャル・メディアの関心を呼び、写真の信ぴょう性についての議論を引き起こしました。すぐに広がったこの画像は‘世界ハゲワシ啓発の日’を支援するバードライフ南アフリカによる大胆な活動の一部だったのです。
インターネット上のビデオでは‘タルバー’が普通のハゲワシに戻る逆のバージョンを見ることが出来、種明かしが示されました(鋭い観察眼があれば分かるように、‘タルバー(Tuluver)’はハゲワシ(Vulture)のスペルの並びを変えた言葉遊びなのです)。「私たちが新種の発見にこれほど熱を入れるのなら、何故種の絶滅を防ぐことに熱意を持てないのでしょうか?」とビデオはメッセージをまとめています。
バードライフ南アフリカとのパートナーシップにより通信社ユートピアによりコンセプトがまとめられたこの大胆な活動は窮状が気づかれていない、正しい評価がされず、絶滅の恐れがあるハゲワシへの認識を高めることが目的です。
「多くの人はハゲワシの持つ環境への価値を知らないだけで、‘醜い’鳥だと思っているのです。」とユートピア社のクリエイティブ・パートナーのCarl Cardinelliは説明しています。「私たちのアイディアはもしハゲワシが綺麗だったら人々が彼らに気付くかどうかという心象をテストすることでした。私たちは伝統的な美的感覚に従って作ったことを除けばハゲワシの持つすべての特徴を備えた新しい架空の鳥‘タルバー’を作り上げました。」
不可欠なサービスの提供者
「アフリカのハゲワシは深刻な状態にあり緊急な保護活動が必要です。そのために私たちは‘世界ハゲワシ啓発の日’の活動を通じて思い切ったアプローチを取ることを決めました。」とバードライフ南アフリカのCEOのMark D. Andersonは説明します。
「私たちは既にジクロフェナクと呼ばれる鳥にとって致死的な薬品(ボルタレンという名称でよく知られる)の使用により絶滅寸前まで追い込まれているアジアのハゲワシ3種に起きた大量殺戮を見ています。ハゲワシが居なくなったことにより野良犬が増え、その結果狂犬病が増加し、人の健康を守るためのコストが約150万米ドルかかっていると推測されています。」
「科学は多くのバードライフ南アフリカの活動の基礎となっており、ですから私たちは今回の架空の鳥の発見表明によって起きた批判に対しても心を開くことが出来るということを自覚しました。けれども私たちは野鳥保護活動において実情を認識しているということが極めて重要であることを知っており、それ故に、時には型にはまらないキャンペーンも必要なのです。今回のことで‘羽を逆立てて怒る(feather ruffled)’ようなことがありましたら心からお詫びしますが、アフリカのハゲワシに、アジアのハゲワシや北アメリカのカリフォルニアコンドルと同じ道を辿らせないようにするなら、私たちは大胆でなければならないのです。」とAndersonは言っています。
今回の大胆な広報活動は、バードライフ南アフリカがこれまでに成功させた最大の広報キャンペーンであり、間違いなくハゲワシに注目を集めることができました。「最初のインターネットへの投稿に対するレスポンスの多さに圧倒されました。例えば最初の48時間にFacebookへのレスポンスが25万回に達したのです。他のメディアを通しても、数多くの反響がありました。‘世界ハゲワシ啓発の日’の精神の中で、人々がビデオをご覧になり、私たちのキャンペーンの真の理由を支持してくれることを期待しています。」とAndersonは言っています。
新たな脅威
「アフリカのハゲワシの減少に関する最近の新しい要因は密猟です。密猟者は毒薬を塗った獲物の死骸をひもで縛り、ハゲワシへの致死的な最後の食事を与えます。ハゲワシの頭上での旋回飛行はレンジャーに対して密猟者の存在を示すサインになるでしょう。」
「その他の脅威には食物の減少、家畜農家による不注意な毒物散布、送電線による感電死、農業用水池での溺死などがあります。悲しいことに、ハゲワシの脳みそを食べると宝くじやサッカーの結果が予測できるようになると信じている人もいます。」
「多分パンダほどには可愛くなく、サイほどには堂々としていませんが、ハゲワシの窮状はそれらと同じぐらい重要なはずです。ハゲワシは自然の究極の清掃スタッフで、死骸を処理し、それにより、狂犬病、炭疽病、ボツリヌス中毒症などの病気のまん延を阻止します。ハゲワシは環境にも人にも同じように極めて重要なのです。」とAndersonは説明します。
「残念なことに多くの人はハゲワシが嫌いで、醜いとか汚いと思っています。もちろんこれは誤解なのですが。」
報告者: マーチン・フォーリー