1羽のキジバトを追跡することでどのように種全体を救う助けが出来るか

昨年、アフリカへの渡りの旅立ちの前に追跡用タグを装着されたコキジバトの‘タイタン’
写真提供: RSPB

英国で初めての科学実験として、コキジバトのサフォーク(英国)からアフリカのマリを往復する11,200kmの旅を人工衛星用タグによる追跡調査が行われました。

コキジバト‘タイタン’の辿ったルートは英国・フランス・スペイン・モーリタニア・セネガル・マリ・アルジェリア・モロッコに及びました。 資料提供: RSPB

コキジバト‘タイタン’の辿ったルートは英国・フランス・スペイン・モーリタニア・セネガル・マリ・アルジェリア・モロッコに及びました。
資料提供: RSPB

ほとんどの時間を暗闇の中を飛んだ‘タイタン’と名付けられた鳥は途中でセネガル、モロッコ、スペインなどを訪れながら北アフリカのアトラス山脈、サハラ砂漠、カディス湾(スペイン)などの壮大な地形を越えて一晩に500~700キロを飛びました。

2014年の夏に英国のサフォークでRSPB(英国のパートナー)の保護科学センターにより‘タイタン’に小型で軽量な人工衛星用タグが装着されました。それ以後、‘タイタン’は深刻な保護問題、即ち、どのようにして欧州でのコキジバトの急減を防ぐか、を解決するための重大な役割を果たしてきました。

コキジバトは欧州大陸で1980年以降個体数が77%も急減したことに伴い、2015年欧州版レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に格上げになりました。事実、本種の個体数減があまりにも急なところから英国では6年ごとに半減しています。もしこの率で減少が続けば今後20年以内に本種は英国で繁殖する鳥のリストから消えるでしょう。

英国では1960年代と1990年代では一つがいのコキジバトの巣立ち雛の数が半減しており、それ自体で英国で繁殖するコキジバトの個体数の減少を説明できます。RSPBは農作業の変化によりコキジバトが好む雑草の種の減少が本種の繁殖率の低下を招いたとの前提により活動を行っています。私たちは営巣のための生垣や雑木林と採餌場所の提供を支援する農業・環境スキームの多くを農家と共同で行っています。これらの場所では鳥のために特別に種まきや管理が行われるのです。

英国内のRSPBのボランティアにより庭で‘タイタン’に人工衛星タグが装着されました。 写真提供: RSPB

英国内のRSPBのボランティアにより庭で‘タイタン’に人工衛星タグが装着されました。
写真提供: RSPB

タグを装着された後‘タイタン’は9月末までサフォークに留まり、それからフランスを目指し、スペインを通過し、最後にアフリカに向かい、モーリタニアからセネガルを通り、最終地マリで越冬しました。

渡りの途中で多くのコキジバトは地中海を越えますが、ここは本種のハンティングが行われる危険地帯です。‘タイタン’が最初にこの地方に入った時、フランスとスペインでは狩猟シーズンが盛期を迎えていました。推定では毎秋西ヨーロッパ・フライウェイでおよそ百万羽の鳥が殺されると示唆されます。

けれどもこれは渡り鳥が直面する多くの問題の一つに過ぎず、すべての鳥が渡りを無事にやり遂げるわけではありません。RSPBの研究者は2014年に2羽のコキジバトに人工衛星タグを装着しましたが、‘タイタン’だけが無事にアフリカの越冬地に行き、英国に戻りました。

アフリカには餌や水などの当てにできる供給源の不足や適切な塒が限られていることなど、コキジバトの憂慮すべき減少の原因となる多くの要因があります。最近の数十年でアフリカでは農業の大幅な拡大や集中化、また砂漠化が起きています。

 ‘タイタン’の旅の追跡調査はRSPBの保護科学センターに貴重な情報をもたらしました。それには‘タイタン’が辿ったルート、休息地とそこに止まった日数などが含まれ、今後の保護活動の目標を何処に絞るかを理解する上での助けになります。

コキジバトは2015年版ヨーロッパの鳥のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。 写真提供: Andy Hay/RSPB

コキジバトは2015年版ヨーロッパの鳥のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
写真提供: Andy Hay/RSPB

コキジバトを救う計画での国際協力を進めるために、RSPBは8月に開催される欧州鳥学会会議でのシンポジウムと円卓イベントの開催を支援していました。そこにはフライウェイ規模での本種の生息地全域からの学会と保護活動家が一堂に会します。それに加えて、バードライフでは2015年4月にコキジバト他15種の保護のための必要条件を特定し、‘国際的種の行動計画’を策定するために新しい3年間に亘る‘EU LIFE+資金支援プロジェクト’を開始しました。

またコキジバトが越冬するサハラ砂漠帯の‘再緑化’を行う広範囲な活動も行われており、それによりねぐらの幾つかが復活するでしょう。

 

‘タイタン’は最終的に5月19日に越冬地のマリを後にし、モーリタニアとアルジェリアを素早く通り抜けて5月24日にモロッコに到着しました。サハラ砂漠の2,000キロを横断し、モロッコで約2週間休んだ後、6月6日にヨーロッパに入りました。スペインとフランスを通過した後、遂に英国に戻り、一年前に衛星追跡タグを最初に装着された場所のすぐ近くで渡りの旅を終えました。

報告者: Jamie Wyver

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