EUの野鳥保護関連法が絶滅危惧種を守っていることを科学者が証明

EU野鳥指令のお蔭でオジロワシの個体数は増加している
写真提供: BZD, Flickr

RSPB(英国のバードライフ・パートナー)、バードライフおよびダラム大学(英国)の最新の調査によれば、世界で最も進歩的で成功している自然保護法の一つと考えられているEU野鳥指令がヨーロッパで最も危惧されている野鳥の保護に大きな影響を与えています。

「私たちはEU全域で繁殖する全ての鳥に関する情報を解析しました。その結果は野鳥指令により高い保護レベルにある種(付表1に掲載)で個体数の増加が見られる傾向にあり、このような結果は長い期間EUの加盟国だった国で特に顕著です。」とRSPBの科学者で論文の主筆者フィオナ・サンダーソン博士は言いました。

これは当然なことに思えるかも知れませんが‘コンサベーション・レター’誌に掲載されたこの研究は、より強力な保護対策の結果、付表1に掲載の種(ニシハイイロペリカン、クロヅル、オジロワシ、カオジロオタテガモなど)の大部分がここに掲載されていない他の危惧種に比べて個体数が回復していると記しました。

これは他の付表に掲載されている種についても良好な保護プロジェクトの実施が必要であることを示すものです。同報告は長距離の渡りをする種は短距離の渡り鳥ほどには個体数が増加しておらず、これは強力な保護対策をもってしても渡りのルートや気候変動による危険から鳥を守るには十分ではないことを意味します。

絶滅の縁から戻った付表1記載種のニシハイイロペリカン 写真提供: Sebastian Bugariu

絶滅の縁から戻った付表1記載種のニシハイイロペリカン
写真提供: Sebastian Bugariu

世界的な絶滅危惧種ニシハイイロペリカンは生息地の喪失と劣化、迫害および電線への衝突などにより20世紀にはヨーロッパでほぼ絶滅の状態になりました。けれどもEU自然指令のお蔭で現在では数十年前の個体数の5倍の2,500繁殖ペアになりました。

保護対策の成功によりカオジロオタテガモは22羽から2,000羽に回復しました。 写真提供: Agustín Povedano

保護対策の成功によりカオジロオタテガモは22羽から2,000羽に回復しました。
写真提供: Agustín Povedano

 

カオジロオタテガモは正に絶滅寸前でした。湿地の破壊と迫害により1977年には僅か22羽になってしまいましたが、強力な生息地の保全や他の保護対策のお蔭で現在では2,000羽以上になっています。

過去25年で個体数が平均50%減ったオグロシギ 写真提供: Andreas Trepte, Photo-natur.de

過去25年で個体数が平均50%減ったオグロシギ
写真提供: Andreas Trepte, Photo-natur.de

付表1以外の付表に掲載されている種はあまり幸せではありません。例えば付表2に掲載されているにもかかわらず、オグロシギの個体数は急激に減り続け、現在ヨーロッパ全域では‘絶滅危惧種’に、EU27カ国では絶滅危惧ⅠB類に指定されています。個体数はヨーロッパ全体では過去3世代で30-49%減少し、EU27か国では50-79%減っています。

「私たちの調査は、これまでに例のない気候変動と生息地喪失の時代にあっても、EU野鳥指令により保護されているこれらの危惧種は繁栄する傾向があることを証明しています。」とRSPBの保護科学者主任のポール・ドナルド博士は言いました。

この調査報告は将来のEU自然法に関する公聴会の終了日7月26日の数日後に公開される予定です。欧州委員会は現在EU野鳥指令と生息地指令の効果について見直しを行っています。520,325人と120のNGOからの署名がこの見直しに反対するオンライン・キャンペーンを支持し、欧州委員会による協議に対する一般市民からの最も大きな反応になっています。

「EU加盟国であることの利益に対する疑問が増加しつつある現在、この調査は少なくとも自然に対してはEUが大きな状況改善を果たしていることを示しています。欧州委員会にとって、機能することが証明されており、市民から幅広い支持を受けている法令を撤廃するのは理に叶わないことでしょう。」とバードライフ・ヨーロッパのEU政策ヘッドのAriel Brunnerは言いました。

 

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