私たちの海のための計画
1979年は記憶すべき年でした。この年にEUで最初の自然保護法‘野鳥指令’が採用されました。それに続いて1992年には‘生息地指令’が発布され、この二つを合わせてヨーロッパの自然を支える‘EU自然指令’が出来上がりました。また1979年は著名な水産生物学者 H. A. Cole が・・・と疑問を呈した年でもありました。
「特定の目的を優先して海洋エリアを管理するというコンセプトのどこが悪いのでしょうか? 土地利用については計画の立案が必須で、その管理は優先的利益として人の幸せに基づいて行われるという考えが古くから容認されていました。では何故これと同じ考え方を海洋について考えることがこれほど難しいのでしょうか?」
Coleは海における人と人の対立が海洋資源、特に漁業資源を毀損していたことに懸念しました。当時、海洋空間計画(MSP: marine spatial planning)はグレート・バリア・リーフなどの保護区では進んでいましたが、彼はどうすればこれを全ての活動とエリアに拡大することが出来るだろうかと悩んでいました。
その後MSPは暫くの間忘れられていましたが、最近華々しく復活し、ヨーロッパの経済成長を解き放つ鍵と考えられ、その結果、‘海洋空間計画指令’という独自の指令になったのです。何故突然関心が持たれたのでしょうか?それは洋上風力発電によるものです。過去15年の洋上再生可能エネルギーの開発はヨーロッパのMSPにとって形成を一変させる出来事でした。EUの数カ国がMSPを風力発電の適地を見つけるために使っており、最近ではそれが波力発電や潮力発電にも及んでいます。
海洋空間計画指令の発令は大きなニュースですが、一方でEU自然指令は攻撃にさらされており、その受け入れられが弱められ、ヨーロッパの保護区を指定、管理する方法が危うくなっています。‘自然指令’はEU本部のあるブリュッセルで好まれる業界用語、経済の‘ブルーな成長’を阻害すると主張する人もいます。けれども、MSPも自然指令もその背景は共通しており、最善のサイトを守り、その他のサイトを注意深く管理することにより、これ以上の環境劣化を防止する必要から生じたもので、それにより海洋生態系の復活を可能にするのです。
これはEUの経済成長を最優先に進めるためにMSPを利用するという見方に少々矛盾するものです。即ち、もし適切に実施されれば自然指令とMSPは共に環境の質と投資の確実性を同時に改善することが出来るのです。真実は、自然指令は人の活動あるいは再生可能エネルギーの開発の重荷ではないということです。英国が2012年にこのことを尋ねた時、「自然指令の実施は良好に機能しており、主要なインフラ開発と高レベルの環境保全が維持されことが確実に行われている」ということが判明しました。持続可能な開発での遅れやコストは自然指令の存在がもたらすのではなく、全く反対です。それは‘野鳥指令’発布後の36年に至るも、海洋エリアではまだ完全に実施されていないことが理由なのです。
MSPに関しても同じことが言えます。H.A. Coleが言ったように、海の利用に関する割り当てのシステムがないことが、「資源の利用はタダ」という態度に繋がり、これが資源の過剰開発を誘発します。少なくとも理論的にはMSPは人の争いを原因とするこのような野生生物への影響を減じることにより、環境の再生により‘自然指令’を支えられるはずです。再生可能エネルギーのためのエリアを割り当てる時に環境を考慮すれば、開発業者は彼らのプロジェクトが成功することの確実性を高め、その一方で、適切な管理方法のある一連の明確な保護区は、そこで何が出来て、何をしてはならないかが正確に分かることを意味します。
この可能性を開放する鍵となるツールは証拠です。例えば、私たちRSPBがここでやった活動は、海鳥が繁殖期にどれ程風力発電地帯の影響を受けているかを示しています。私たちはこれまでになく活動と環境の間の相互作用について知っています。また、私たちは活動を行うべき、あるいは行ってはならない場所についてもこの情報をより注意深く利用することが出来ます。
新しい世代に向かうに従い、私たちは資源の持続可能な利用を促進する基盤としての生態系を守るためにMSPと自然指令両方の元々の目的に向かわせねばなりません。生態系を考慮することは開発を制限することを意味せず、実際には正しいやり方で開発を促進することが出来るのです。
A. Coleのビジョンは現実のものとなって来ており、それが現在も未来も野生生物のために確実に果たせるようにするのは私たち次第なのです。
(報告者: アレック・テイラー)
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