ハイイロペリカン保護のドラマ
「そしてビデオは無くなった」(注: アガサ・クリスティーの代表作‘そして誰も居なくなった’を模した表現)
Noé Conservation(組織名)のBjanka Prakljacic(人名)は、この時の懸念をこのように表現した。そして、投資チームは地中海域での自然保護プロジェクトを実行に移します。
ハイイロペリカンは世界で最大の鳥の1種でありながら、大変かく乱に影響を受けやすい種です。モンテネグロのシュコダル湖では1970年代以来困難に陥り、数が減って来ています。
シュコダル湖のハイイロペリカンには豊かな歴史があります。モンテネグロとアルバニアの中間に位置するシュコダル湖は欧州最大の野鳥保護区の一つですが、同時に人の活動の中心地でもあります。バルカン地方最大の淡水湖の不朽のシンボルである、この巨大な白い鳥は今もなお深い青色の水面を飛んでいるのを見ることが出来ます。けれども、絶滅危惧Ⅱ類から絶滅危惧ⅠB類に危険度が上がって分類されそうな今、ハイイロペリカンを救うための活動を行うべき時が来ています。
バルカン半島のシュコダル湖に残されたハイイロペリカンのコロニーを守るための活動している保護活動家にとって、繁殖が失敗することに対する恐れは極度に神経が苛立つ経験です。
2014年に作られた繁殖用の筏は大成功でした。全ての船舶への外周300mの立ち入り禁止区域が2015年の繁殖期に備えて作られました。漁師はかく乱を防ぐためにペリカンの近くではどのように振舞えば良いか訓練を受けました。レンジャーとモニタリングも支援を受けました。そして、今年は新たに筏の上で営巣するペリカンをライブで見守るためのモニタリング・ビデオが営巣筏に設置されました。
ところがビデオ画像が途絶えてしまったのです。離れた場所から観察していたプロジェクト・チームは筏が空になっており、ペリカンは湖のあちらこちらに散らばっているのを見たのです。何故ペリカンは筏を放棄したのだろうか?いろいろなことが彼らの頭を駆け巡りました。密猟者が画像を撮影されるのを恐れてビデオを壊してしまったのでしょうか?コロニー全体での繁殖の成功が危ぶまれました。
自然のコロニーでの繁殖が全く無かった今年、全ての卵は一つのバスケット、即ち、プロジェクトの人工営巣筏に集められました。ハイイロペリカンがかく乱への感受性が高いことが分かっているので筏にペリカンが居るかどうか行って見るという決定が急遽行われなければなりませんでした。もし居なければ急いでビデオでのモニタリングを進め、何が起きたのかを見つけるように努めることです。
その結果確認されたのは、ワイヤーの破損・切断で、カメラの電源であるソーラー・パネル用のワイヤーが折り曲げられていました。
モニタリング・チーム(モンテネグロ自然史博物館)はビデオ装置の損傷を修理し、すぐに戻りました。ペリカンは30分もしないうちに筏に戻って来ました。しかしチームはカササギに壊された卵の残骸も発見し、またその残骸をきれいにしました。ペリカンたちはワイヤー事件の間怖がって巣を長く離れすぎたので、第1回目の卵は死んでいました。
しかし活動は再開しました。プロジェクトはペリカンへのかく乱の減少に集中した結果、より多くのペリカンが戻りました。
「筏の上の平和が何日も続いたのを見るのは信じられないほどで、1月中旬には再び新しい卵が見られるようになりました。」とBjankaは言いました。
「いつ災難が彼らを襲うかも知れないことを知りながら、遠くから毎日卵を温めている彼らを見ているのは不安なことでした。
そしてビデオがまた止まってしまった
その日はプロジェクト・チーム全体に落胆、怒り、涙さえも現れました。彼らに出来ることはモニタリング・チームからの報告を待つことだけでした。その間、慎重なチームは次のように思いました: ビデオ・モニタリングを止めるべきだろうか?再度の営巣が失敗したのはビデオ・モニタリングのためだろうか?レンジャーや漁師と一緒に行った作業は無駄だったのだろうか?
そして電話がありました。「筏はペリカンで一杯です。ペリカンは安心してそこに居て、ペリカンが居るためにビデオ装置の所に行くことが出来ませんでした。1羽がソーラー・パネルの上に止まっています。ワイヤーは最初からペリカンが曲げていたのです。」
最初のビデオ・モニタリングが止まってしまった理由はまだ完全には分かっていませんが、とにかくチームはペリカンが元気にしているので安堵のため息をつくことが出来ま
した。
今年はペリカンを守るチームの責任は果たされ、シュコダル湖のペリカンは大成功の繁殖シーズンを送りました。
「皆さんはエネルギーの全てを活動に投入することが出来ますが、結局のところ、ペリカンの未来を守るのは地元の人たち次第です。」とBjankaは言いました。
このプロジェクトは引き続きシュコダル湖周辺での関心の喚起とエコツーリズム確立のために続きます。それはプロジェクトが終了した後もこの神経質なペリカンの保護を確実に行うためです。
(報告者: ショーン・ハレル)
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