ハンガリーの自然が危ない

オオノガン
写真提供: (c) M. Zumrik

ハンガリーでは土地管理の権限をこれまでの政府機関の自然保護団体から、自然保護よりも経済的利益を優先する国土庁(central Land Agency)に移行すると言う法案が可決されようとしています。もしこれが承認されれば、数世紀に亘る自然保護の歴史と実績にダメージを与えるでしょう。

ハンガリーには数多くの天然記念物があります。例えば、ユネスコの世界遺産になっているAggtelek国立公園には全長26kmにも及ぶ欧州最大の鍾乳洞(一部はスロバキアに属する)があり、そこを訪れることが出来ます。あるいは欧州最大の温泉湖であるHéviz湖でリラックスすることも出来ます。ところがハンガリー議会が既に深刻に解体されてしまった同国の自然保護システムに破滅の刻印を押す可能性のある法案を受諾したのです。

ハンガリーには自然保護の長い歴史があります。それは1426年まで遡り、ハンガリー王ジギスムントが森林の管理と土壌の保全のための特別法を定めたことに始まります。そして、最初の高度で総合的な自然保護法は1935年の森林及び自然保護法で、これは動植物の保全を向上するだけでなく、自然エリアや環境の特別な状況にも同様に当てはめられています。

ヨーロッパ全土でもハンガリーは自然および野生生物を守るための強力な法律と確立した枠組みでよく知られていました。その理由の一つが政府機関で構成されている上手く開発されたシステムと政府所有地の広大な保護区のネットワークです。領土の9%が国の保護下にあり、63ヶ所の森林が保護区に指定されています。既知の洞窟4077ヶ所の全てが1961年以降保全されています。EUの‘ナチュラ2000ネットワーク’へのハンガリーの貢献は多大です。その面積は国土の21%、およそ2百万ヘクタールに及びます。

ところがハンガリーは最早欧州での自然保護のモデルではなくなりました。この十年の間にハンガリー政府はこれまでの自然保護活動の全てを台無しにしてしまいました。政府が既に少なくなっている国立公園理事会の予算を削り、2004年以降自分で資金の捻出を行うことを強制しただけに留まりません。2010年には環境省を撤廃し、農村開発省と一体化しました。それだけでなく、先頃既存の政府機関の自然保護団体が持っていた土地管理の権限を取り上げ、国土庁に移行する法案を通したのです。

自然保護を付託されている現政権のハンガリー国立公園理事会は国家所有の保護区の幾つかを管理しており、そのほとんどがナチュラ2000サイトです。一部の土地は農民に貸与されていますが同理事会はこのような土地を直接に管理しています。彼らは草刈りのタイミングや放牧圧などの管理は自然保護の目的に沿ったものであると確約していました。もし新しい法案が成立すると、このような管理は既存の国有地基金に完全に移されます。この組織は残りの国有地を管理しますが経済的判断のみで運営されます。自然保護当局が管理権を失えば野生生物や自然エリアに対してマイナスに働くでしょう。例えば脆弱な種オオノガンの生息するエリアは以前は非常に注意深く管理されていましたが、その主要生息地の一部がジャガイモの集約栽培のために貸与され、その結果オオノガンに悪影響を与えました。

独立した法律家のグループが法案の一部は憲法違反だと言っていますが、法案は前進しそうな様子です。けれどもバードライフ、WWF、フレンズ・オブ・アース(地球の友)などのハンガリーに基盤を持つ積極的で熱意のある自然保護NGOのグループとこの問題を憂慮する市民も静かに見守っているわけではありません。彼らはその懸念を言葉に表し、ハンガリーの自然保護活動がこれ以上侵されることを阻止し、ユニークな自然遺産を守ることに貢献するあらゆる有力なパートナーに呼び掛けています。議会の決定に続き、自分自身を‘グリーン大統領’と断言しているハンガリー大統領János Áderは現在この問題を調査しており、今週中にも彼は決定を行う予定です。

これは他の国でも良く聞かれるお馴染の話です。ですから、残された疑問はこの呼びかけが彼らの耳に届くかどうかです。カタシロワシ、セーカーハヤブサ、アカアシチョウゲンボウなどの絶滅危惧種が空を飛ぶ国では、私たちバードライフはこのようなことがないことを希望します。

(報告者: リサ・ベネデッティ)

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