野鳥マフィア
膝に手を置きカメラにポーズを取る男の前には20列もの獲物が並んでいました。夕方までには獲物は陸路でイタリアへ密輸されるために皮を剥かれ、箱詰めされ、冷凍されます。48時間以内にその大部分がイタリアの伝統料理用にレストラン向けの闇市で販売されるのです。
このメッセージは大西洋を越えて“欧州での小鳥の虐殺”という記事になって世界中に伝わります。ニュースウィーク誌の記者Luke Dale-Harrisはバルカン諸国でのこのゾッとするような鳥の密猟と違法取引について書いています。記事は南東ヨーロッパ、特にルーマニア、セルビア、アルバニア、ブルガリアで活動するイタリアからやって来た密猟者がどれほど自然や鳥や自然保護活動家に対する最大の敵であるかを記しています。
セルビアではセルビア野鳥保護・研究協会(BPSSS)の会長Milan Ružićは過去10年間政府がこの犯罪を止めるための行動に拍車をかけるようにするために費やしました。「セルビアで密猟を取り仕切っているのはイタリア人なのです。」と彼は言います。旅行会社を所有するイタリア人ビジネスマンに巧みにお膳立てされたツアーで客を集め、鳥の殺戮会を主催し、イタリアの闇レストランで提供されるようバルカン諸国から数万羽の鳥を不正に出荷する手配をするのです。
セルビアのメディアはこの事実に殆ど目を向けておらず、更に悪いことに、このような違法行為を防ぎ、告発する責任がある検査官、税関、検察、裁判所が見て見ぬふりをすることがしばしばあるのです。検査官の数は少なく装備も不十分です。密猟を支援するロビー活動をするグループ、当局やビジネス界はこの犯罪を行う人たちと密接なつながりがあり、そのために密猟が政府によっても大っぴらに見逃されているのです。限られた数の地元住人も、密猟が鳥を簡単に多数殺すことが出来る場所や渡りのルートを知っている地元民の雇用につながるので協力します。
役人の買収が広がっているのでこれは最悪の組織的犯罪です。MilanとLukeは典型的な場面を目撃しました。そこではある池の周囲にイタリア人の団体が日の出を待っており、その周りには数千羽の鳥がそれぞれの種に特有の群になって飛び立ち集まっています。しかし一たび射撃が始まると大混乱が起こり、鳥は何度もぶつかり合って行きつ戻りつし、地上に落下し殺戮者の手に落ちます。多くの参加者がこの違法殺戮をむしろ自慢しており、後刻平気で獲物の詳細な姿をソーシャル・ネットワークに投稿するほどです。Milanは怒っています。「これらの鳥を撃つと本来は監獄入りになるのです。この男は自分の犯罪をFacebookで宣伝しています。それでも警察はこの事実を知ろうともしないのです。」
BPSSSによればセルビアでは毎年17万羽の鳥が撃たれ、殺されています。そのうちの多くは(5万~6万羽)はウズラで、狩猟シーズンに撃たれるのがほとんどですが、違法な電子呼子(バード・コール)が使われています。2001年以後セルビアでの鳥の密猟や密輸事件は公に目に見えるようになりましたが、散発的です。イタリアでは違反者は告訴され罰せられますが、この犯罪は未だに普遍的で罰則も軽すぎます。ウズラクイナを違法に撃ってFacebookに写真を載せた男に対してBPSSSからの報告により2015年2月6日にBačka Palanka裁判所で判決が出ました。ただし判決は僅か200ユーロで、この種の犯罪を防止するにはあまりにも軽すぎます。
2008年にTRAFFIC(野生生物取引監視NGO)が発表した報告では、密猟と野鳥のイタリアへの密輸は「東南および中欧における密猟は極めて組織的な犯罪行為を含んでいます。毎年数十万羽の小鳥が違法に撃たれ輸出されています。この産業は全体で毎年1千万ユーロと推定されています。」と示されています。皮肉なことにこの金額のほとんどは地元には落ちません。撃たれ、イタリアへ密輸され、同国の闇市で販売される鳥の価格はハンターに支払われる金額のおよそ30倍です。種類により鳥の価格は1羽5ユーロから150ユーロです。もしセルビア、ルーマニアや他の関係国がこの事実を知り、また、イタリアが主犯であるだけでなく最も利益を上げていることを知ったなら、彼らは立ち上がり、行動を求めるでしょう。しかし、野鳥の特別料理に飢えたイタリアにより火が注がれた商売と戦うにはどうしたら良いのでしょうか?小鳥の骨に僅かばかり付いている肉ですから、食事と言うには全くクレージーなことなのですが。
クロアチアの自然・環境保護省の恐れを知らぬ監視員Željko Vukovićは何が出来るかという点で素晴らしい参考例を作りました。近年、密猟者はクロアチアを避けるようになりましたが、それはŽeljkoの疲れを知らぬ努力により多くの違反者を捕え、告訴に導いたことによります。彼がこの仕事に就く以前には、「密猟者は何処にでも居ました。これに対して誰も何もしなかったのです。私はバードウォッチャーやNGOの環境活動家やハンターまで味方にしました。彼らは私の眼なのです。彼らは何か起こっていると私に知らせてくれます。」とŽeljkoは言います。Željkoはクロアチア国境の税関職員を訓練して、鳥が皮を剥がれ、頭を切り落とされ、冷凍されていても適切な追跡と密輸の調査が出来るように教育しました。鳥の密猟は依然としてクロアチアでは大きな問題ですが、このような活動がプラスの影響を生んでいます。
野鳥を殺しているのは地元民が原因ではありません。それで儲けているのは地元民ではありません。問題の根本は地元民ではありません。今こそセルビア、ルーマニア、アルバニア、ブルガリアの政府が野鳥の虐殺を止めるべき時なのです。これらの国のバードライフ関係者はこの許しがたい犯罪にこれまで以上に真剣に取り組むために自然保護、狩猟および税関管理の法律を作り、実施する人たちに緊急の呼びかけを行っています。
(報告者:リサ・ベネデッティ)
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