東アフリカの生物多様性ホットスポットには考えられていた以上に多くの危惧種が生息
タンザニア・ケニアの東部山孤・沿岸森林(EACF)には現在750種以上の世界的な絶滅危惧動植物が生息していると考えられ、これは2003年のアセスメントによりリスト・アップされた333種の2倍以上です。これは新たに発表されたEACF(‘東部アフリカ山地’と‘東アフリカ沿岸森林’の世界的生物多様性ホットスポットを構成するエリア)の2008年~2013年における生物多様性の状況と傾向に関する報告によるものです。
10年前に比べて危惧が高まり新規にリスト・アップされた26種に加え、前回のアセスメントでは資料がなかった植物の総合的なアセスメントが行われたことが今回の大幅な増加の主な理由です。20種の両生類と爬虫類、1種の哺乳類および1種の植物などのこの地域での新しい種が明らかにされています。また報告書では地域内には世界的に絶滅が危惧される分類群の動植物が生息していることにより、17のサイトを‘生物多様性重要地域(KBA)’に認定することを推奨しています。
報告されているEACFにおける生物多様性への脅威には、持続可能でない薪炭の生産が含まれ、これは絶滅危惧ⅠB類のキバラクロハタオリやハイイロコノハズクの生息地として重要なケニアのDakatcha森林地帯の森林被覆の減少と生息地の断片化の大きな要因になっています。その他の脅威には森林の農地への転換、人口増加、森林火災などが挙げられます。外来種も以前考えられていた以上にこの地域における深刻な問題として強調されています。少なくとも22種の外来植物が問題があると考えられており、中でもムシジ、Rubus(キイチゴ属)、スパニッシュシダーが最も深刻でしょう。ケニアではメスキート(マメ科)がタナ川デルタに侵入したことが報告されています。
良いニュースとしては保護状態の改善による森林管理の改善が幾つかのサイトで見られています。その中にはタンザニアのアマニ自然保護区の3ヶ所の森林ブロックが個人所有から国有化された例があります。また‘参加型森林管理(PFM)’アプローチの効果を裏付ける証拠も出て来ています; PFMが実施されている西ウサンバラなどにおける幾つかのサイトで野生の狩猟対象動物の個体数が増加していることなどです。
また良いニュースには新REDD(森林減少{しんりん げんしょう}・劣化{れっか}による温室効果{おんしつ こうか}ガス排出量{はいしゅつりょう}の削減)プロジェクトの、特にタンザニアでの実施が続きます: コミュニティの森林管理プロジェクトを通したZanzibarでのREDDの導入と、タンザニアの東部山孤・沿岸森林プロジェクトでコミュニティと森林保全のためにREDDを機能させることがその内容です。これらのプロジェクトは、二酸化炭素排出を減らし、地元住民をREDD資金供給の受益者にすることにより彼らの生計を改善するように計画されています。一方、報告書はREDDプロジェクトの成功には、コンプライアンスを守るための村の規則を強化し、プロジェクト対象地域内での森林利用者のための規則強制の重視が必要であることを推奨しています。
報告書は最後に最近の前向きな政策開発を強調しています。その中にはタンザニアの東部山孤森林の保護戦略の展開が挙げられます。またArabuko-Sokoke森林保全のための行動計画策定も挙げられており、これは生息環境の連続性と質の充実と、人と野生動物の衝突を守りつつ、象の安全を確保することを強調しています。ケニア野生生物保護管理法の制定やタンザニアでの観光業法および政策も強調されています。
EACFはケニア・タンザニア沿岸900kmに亘り広がり、タンザニア沖の島々Zanzibar, Pemba および Mafiaを含みます。この地域は生物の多様性と豊富さにとって非常に重要です。同地域は高い種の固有性、動植物の非常に優れた多様性および深刻な脅威によって特徴づけられます。この報告書はEACFに対するREDD+と‘REDD準備’の影響力を増加するために同地域の生物多様性のデータをまとめ、示すことを目的とするバードライフのプロジェクトの最近の結論です。報告書は同地域での研究者からの直接の情報提供を含む様々な情報源からの公開された情報を照合したものに多くを依存しています。
このプロジェクトはバードライフ・アフリカ・パートナーシップとネーチャー・ケニア(ケニアのパートナー)により実施されました。プロジェクトのための資金は、フランス開発局、コンサベーション・インターナショナル、EU、世界環境ファシリティ、日本政府、マッカーサー財団および世界銀行が提供しました。その基本的な目標は市民社会が生物多様性保全に確実に携わることです。
報告者:Obaka Torto