気候変動が314種の北米の鳥に脅威を与える
ナショナル・オーデュボン協会(米国のバードライフ・パートナー)が公表した新研究によれば、気候変動はハクトウワシを始めハシグロアビ、ボルチモアムクドリモドキ、カッショクペリカンその他数10種を含む米国とカナダの大陸部に生息する鳥のおよそ半分に脅威を与えます。
この研究は2050年までに126種が現在の分布域の50%以上、場合により100%を失うと特定しており、地球温暖化が現在のまま進行すると、これらの種には他の場所に移動できる可能性がありません。これに加えて更に188種が2080年までに生息地の50%を失う危機に直面していますが、これらの種は新しい地域を占有できればこのロスの一部を穴埋めすることが出来るでしょう。これら合計314種には以前は危惧されると考えられていなかった多くの種が含まれています。報告者は地球温暖化が阻止されなければ多くの絶滅が起こりうることを示しています。
「これは腹部へのパンチです。今鳥が直面している最大の脅威は地球温暖化です。」とこの研究を主導したオーデュボン協会のチーフ科学者Gary Langhamは言いました。「これは私たちの7年に及ぶ慎重かつ徹底的な調査による明確な結論です。地球温暖化は鳥と人が依存している基礎的な生活構造を危うくするものです。鳥や私たちへの大惨事を避けようとするなら、私たちは直ちに断固として行動を超おこさなければなりません。」
「このような圧倒的なロスの見通しは恐ろしいことです。けれども私たちはアメリカの鳥の未来のために橋を架けることが出来ます。この報告書は計画表であり、次の二つのことを言っています: 現在鳥が生息している場所を守ることと、地球温暖化の過酷さを減らすために共同で活動しなければならない、ということです。」とオーデュボン協会の会長・CEOのDavid Yarnoldは言いました。
Langhamその他のオーデュボン協会の鳥類学者は、鳥の生息地と彼らを支える気象条件との間の関連を知るために、30年間の北アメリカの気象データ、これまでの数万件に及ぶオーデュボン・クリスマス・バード・カウントの結果、アメリカ地質調査所による北米繁殖鳥調査を分析しました。このような関連を理解することにより、科学者は将来どの場所に鳥が生き残ることが出来そうか、また出来ないかを予想することが可能になります。
種によっては変化する気候に適応できますが、北米で最も身近な象徴的な鳥の多くが適応できないでしょう。米国の国鳥ハクトウワシは今後の65年間に現在の夏の分布域がほぼ75%減るでしょう。ミネソタ州の州鳥ハシグロアビは2080年までに48の下部州(アラスカとハワイを除く全州)で繁殖できなくなるでしょう。メリーランド州の州鳥でボルチモア・オリオールズ(メジャーリーグ球団のチーム名)のマスコットであるボルチモアムクドリモドキは気象条件の変化に適応するのではなく、北へ移動し、現在の中部大西洋沿岸地域での繁殖を止めるでしょう。危惧される他の州鳥にはカッショクペリカン(ルイジアナ州)、カリフォルニアカモメ(ユタ州)、チャイロコツグミ(バーモント州)、ムジルリツグミ(アイダホ及びネバダ州)、エリマキライチョウ(ペンシルバニア州)、ムラサキマシコ(ニューハンプシャー州)およびモリツグミ(ワシントンDC)などが含まれます。
「私たちは、気温と降水量を含む気象の変化が殆どの鳥が住む場所、住まない場所―例えば暑すぎるなどの理由でーを決定することを知っています。」と今回の研究には加わらなかったがオーデュボン協会の役員を務めるノーベル賞受賞者のスタンフォード大学教授Terry Rootは言いました。「オーデュボンの研究は今北米の鳥の全てが住む場所を決定する気象変化を究明し、次に将来どこに鳥が生息する可能性が高いかを推定するために気象予測を見事に利用しました。私たちは皆自分の裏庭で変化する気象の影響を目にするでしょう。このような厳しい警鐘を見逃すわけには行きません。」
「この北米での新研究は、気候変動が多くの種に利益ではなく困難をもたらし、世界中の鳥に広範囲にわたる影響を与えることを示したヨーロッパ、アフリカ、アジアからの調査結果とも一致しています。」とバードライフの科学部ヘッドのStuart Butchart博士は言いました。
「けれどもそれは同時に世界12,000ヶ所のIBAの効果的保全の強化が緊急に必要とされることなど、野生生物が変化する環境に適応することを助けるために必要な活動の方向を示しています(IBAとは重要生息環境のこと)。」
2080年までに現在の生息地の99%以上を失う可能性のある10種の鳥
- アメリカソリハシセイタカシギ
- クロハギマシコ
- チャガシラヒメゴジュウカラ
- アカエリツメナガホオジロ
- ハジロカイツブリ
- シロカツオドリ
- アメリカキンメフクロウ
- ナキハクチョウ
- シロガシラキツツキ
- シマクイナ
資金の一部を米国魚類野生生物局から受けた今回の研究は、自然保護、公共政策および今後の研究に対する多くの意味合いがあり、科学者、保護活動家、政策立案者に対する一連の新しいツールを提供します。例えば、この研究では‘拠点’地域を特定しており、そこは気候が変動しても鳥の種によっては安定的で、保全と管理の対象候補です。
オーデュボン協会は鳥と地球温暖化の関連を理解するための専門の新しいウェブ・ポータルを始めましたが、そこには危惧される314種のアニメの地図と写真、技術的報告、このトピックが特集されているオーデュボン・マガジンの9~10月号からの掘り下げた記事などが載っています。
「アメリカ中の数百万人の人々が、鳥は彼らにとって重要なので、個人的にもこの脅威を受け止めるでしょう。」とYarnoldは言いました。「愛鳥家にとって、この問題は不快な政治情勢を超越するものです: これは鳥の問題です。そして、私たちは鳥のために良いことをするのは人のためにも良いことを知っています。鳥が生き残るために必要とする場所を保全し、クリーン・エネルギーを推進するために裏庭の植物を変えることから、コミュニティや州レベルで活動することまで、誰もが何かを行うことが出来ます。鳥にとっては私たちだけが希望なのです。」
報告者:マーチン・フォーリー