EUのバイオマス政策: 否定から行動へ

ブラッセルの道という道が渋滞になり、夏休みのための旅行カバンが満杯になった7月最後の日、欧州委員会は遂に勇気を持って欧州連合(EU)内における新しいバイオ燃料の持続性の評価を発表しました。夏休み直前という発表のタイミングのために驚くことではありませんが、‘固形および気体バイオマスの持続性の現状’報告はあまり関心を呼びませんでした。それでも、これはバイオ燃料業界が取るべき方向について良い指標になります。

一言で言えば、この報告書はEUにおけるバイオ燃料の使用増加による持続可能性の危機を認識してはいますが、このような危険を止める方法については何も提案していません。耕作地への圧力の増加、温室効果ガス節減の失敗、森林の劣化などに関するバードライフ・ヨーロッパ、他のNGO、科学者から提起された深刻な懸念は全て最終的に欧州委員会により認識されました。それにも関わらず、問題は軽視され、行動はまだ取られていません。

報告書はエネルギー目的でのみ樹木から収穫されたバイオ燃料は、森林や土に貯蔵される炭素を考慮に入れて換算された時にはGHG(温室効果ガス)の節減という観点では無視できる程度になってしまうということを認識しています。ほとんどのGHGの計算方法がこのような排出を無視しており、尚且つ今回委員会が用いた欠点のあるGHGの計算方法によってさえもEU外から輸入されたトウモロコシや木材ペレットによるバイオガスは推奨されている70%のGHG節減に達していません。

殆どのバイオ燃料が依然としてGHG節減を行っているものと想定されていながら、このような想定を支持する計算や数値や参考資料が何もないという事実が不作為の証明です。バードライフ・ヨーロッパと欧州運輸・環境局による最近の研究では、現在計算に加えられていない木材のバイオ燃料からの有機物から発生する排出はEUの要求する年間GHG節減(約100MtCO2eq/年)に相当する量であると示唆しており、これはかなりの量です。

持続可能性という別の面で、欧州委員会は、EU森林戦略、共通農業政策(CAP)およびその中の農村開発資金などの既存の法律やEUの活動の効果を確信しているように見えます。しかし、バードライフやパートナーが農村開発計画の中の持続可能でないバイオ燃料プロジェクトについて懸念を呈すると、その回答はあまり前向きなものではなく、委員会がどのように対応するつもりなのかが不明瞭なままでした。バイオ燃料の持続可能性に関して、あるべきEU法がないことは間違いなくこの作業を困難なものにするでしょう。

欧州委員会の報告書には2020年の気候およびエネルギー目標に影響を与える新しい法的アクションは何も取らないと述べられていますが、バイオ燃料の持続可能性に関する問題は協議の対象になっています。新しい2030年気候・エネルギー政策にはバイオ燃料の真の持続可能性の問題が考慮されるべきでしょう。

委員会は報告書に「2020年以後の期間には広義のバイオ経済でのバイオマスの気候・資源効率による利益を最大限にするために改正バイオマス政策が策定され、その一方で、強固で検証可能なGHG排出削減の実施と、予期せぬ環境への影響のリスクを最小化するだろう。」と記載されています。約束された新しい改正バイオマス政策が確実に実施されるかどうかは新しい欧州委員会の手に委ねられています。

しかし、疑いもなく、バイオ燃料を支援するEUのアプローチは総点検されるべき状態です。現時点でも、このことは明確に記載されています。もしこれを無視すればバイオ燃料企業と彼らに投資をしている金融機関は深刻な間違いを犯すことになるでしょう。今現在は容易に利益が上がるように見える持続可能でないバイオ燃料構想はすぐにも行き詰まるでしょう。EUのバイオ燃料産業の哀れな状況は訓戒になるはずです。

(報告者:エロディー・カンタルーブ)

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