新しい地図が保護活動の様相を変える

バードライフは世界を主導する‘地理情報システム(GSI)’ソフトのプロバイダーESRI(環境システム調査研究所)主催のサンディエゴで行われたESRIユーザー会議に参加し、私たちの新ウェブ・ツールなど、保護活動のためにはマッピングが重要であることに目を向けて、10年以上に亘る同社とのパートナーシップを祝いました。

世界中から集められた数千あるいは数百万のデータ点(data points)の列があるスプレッドシートを思い浮かべてください。単一のデータ点は混とんとした数字や記号の灰色の山の中で失われ、忘れられてしまうかも知れません。

けれども、もしこの単一データ点が偶々エジプトハゲワシの背中に付いていた皺しわの白い羽根を人工衛星追跡して送られて来たものだったらどうでしょうか(このような鳥に人工衛星追跡をするためにタグをつける苦労も考えてください)?また、もしこのデータ点が他の単一データ点、例えば風力発電装置や高圧電線の開発予定地などと直接交叉しているものだったらどうでしょうか?

世界的な絶滅危惧種エジプトハゲワシにとっては二つのデータ点の交叉は文字通り大きな影響があります。開発業者にとっては、彼らがハゲワシやその保護にとって風力発電装置や送電線の位置が重要であることを知ってさえいれば、その建設場所を決めるのは容易です。しかし、あの混沌としたスプレッドシートの中でこれらの二つのデータ点を読み取ろうとすることを想像してください。

これが私たちが地図を利用する理由です。

地図があれば、その単一データ点は生き生きとして来てそれ自身の物語を語るのです。

その単一データ点は保護されていないIBA(重要生息環境)の中のヨルダン北東部にズームインされた部分を横切る数多くの赤い線の一部になっています。開発計画地は緑色がかった茶色の衛星画像上では黒いX印になっており、その地図は開発業者にこの特別な地域の微妙なことを警告します。

自由に空を飛ぶエジプトハゲワシ 写真提供:M. Mendi

自由に空を飛ぶエジプトハゲワシ
写真提供:M. Mendi

その単一データ点はバードライフが産業界に示す目に見える証拠になり、また政府や国際会議で影響を与えるためにバードライフが利用するロビー活動用資料になるのです。

全てがこれを地図上に見える形で示すことが出来るからです。

バードライフの科学者たちは保護活動のデータを地図上に描くことに優れており、彼らは今週(7月14-18日)ESRI(環境システム調査研究所)のユーザー会議に1万5千人のマッピングとビジネスの専門家と共に参加し、最新の研究結果を紹介しています。今年の会議のテーマは‘より良い未来を計画し創造するテクノロジーとして、どのように我々の努力の結集とGIS(地理情報システム)を利用できるかを考える’です。

「ESRIは私たちが表示する必要のある複雑なデータを利用可能にするツールを作り、それにより数字から物語を取り出し、生物多様性に何が起きているのかを地図に描写し、何故それを保全しなければならないかを示すことを可能にします。」とバードライフの世界情報管理コーディネーターのJohn Cornellは言っています。

ESRIのマッピング・ソフトは保護活動の話の全てを見せることを可能にします。もし人々がこれを見ることが出来れば、彼らは参加し、注意を払い、状況を改善します。」野鳥保護科学の主導的科学的権威者として、地図は私たちの活動に不可欠です。

この記事の最初にあったハゲワシの例はバードライフの‘帆翔鳥感度マッピング・ツール’からのもので、Johnはこれを会議でプレゼンする予定です。私たちの地域パートナーのネットワークを通して、バードライフは紅海・リフト渓谷フライウェイにおける帆翔鳥の分布と現状に関する膨大なデータを照合することが出来ました。このツールは計画当局、開発業者およびプロジェクトへの出資者に情報を目に見える形にして相互にやり取りし、新規の開発を行う安全な場所の決定を知らせます。これは無料で提供され、このエリアでの渡り鳥への悪影響を劇的に減らすことを狙っています。

バードライフは正にLynx Edicions社と共同で図解の‘世界の鳥のチェックリスト’を出版するところで、これにはあらゆる種の分布図(ESRIソフトで作成されたもの)が含まれています。これは前例がないだけでなく、巨大な作業です。マッピング・ソフトの改良と使い良さにより初めて私たちの科学者が一生涯で出来た作業でした。

会議での巨大なポスターに、バードライフは海鳥の追跡データを使ってどのようにしてマリーンIBA(海洋における鳥を指標とする重要自然環境)を特定するかを示す予定です。これにはハイガシラアホウドリの極地周航の話や採餌・繁殖ホットスポットを特定することなどが含まれます。

海洋の未来にとって非常に重要な飛躍的前進は2012年にバードライフが始めたe-Atlas マリーンIBAがあります。作成のための6年間と世界中からの千人を超える資金提供者の支援により、これは初めての世界的な海洋保全で優先すべきサイトのリストになりました。約3,000ヶ所のマリーンIBAが初めて簡素な双方向性のESRIのオンライン地図に並べられました。他の海洋性哺乳類の地図もこれに続くように他の団体も督励して、このパイオニア的試みは公海における国際的なサイトの保全を達成するための先例になりました。

 「保護データはともすると見ることも使うこともない巨大な変わり映えのしないデータベースの中に放置されます。しかしESRIのソフトは複雑な生態学上や政治的データを管理し、分析し、目に見える形にすることが出来ます。また、一瞬のうちにこれを世界中のパートナーと共有することも出来ます。正しく使われるなら強力なツールなのです。」とJohnは言いました。

報告者:ショーン・ハレル

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