国連の気候変動に関する警告とバードライフの取り組み
国連環境計画(UNEP)が最近発表した報告書「オーバーシュートの抑制」は、生態系の機能が根本的に損なわれた場合、元の状態に回復することはなく、地域的または世界的に絶滅した種は二度と戻らないと警告しています。
バードライフ・インターナショナル 名誉総裁 高円宮妃久子殿下のお言葉 グローバル・パートナーシップ・ミーティングにて:
「気候変動は私たち共通の仇敵であり、
どの国も単独で解決できない課題です。国際協力は極めて重要です。
なぜなら、私たちが直面している課題は共通のものであり、生物多様性を守るには、
個人と組織が別々にではなく、ともに取り組む必要があるからです」
国連環境計画(UNEP)が9月に発表した画期的な報告書「オーバーシュートの抑制」によると、現在の政策や目標のままでは、世界の気温上昇を1.5℃以内に抑えることは難しいと警告しています。2030年の温室効果ガス排出量は、目標達成に必要な水準を大幅に上回る見通しです。そのため、国際社会は、目標値の超過、「オーバーシュート」を経て、ピークに達し、低下するという道筋をたどらざるを得ません。オーバーシュート(超過)が長引くほど、人類、経済、自然への回復不能な影響のリスクは高まり、自然へのリスクは食料、水、健康、エネルギー、生計を支えるさまざまなシステムへと連鎖的に波及するおそれがあります。
オーバーシュートは絶滅への道
気候変動はすでに世界の鳥類に深刻な影響を及ぼしており、生息域の変化、局所的な絶滅、繁殖時期と食物の不一致を引き起こしています。報告書は、機能が根本的に損なわれた生態系は回復せず、地域的に、あるいは世界的に絶滅した種は二度と戻らないと警告しています。
海洋熱波により海鳥が広域で大量死しています。勢力を増すエルニーニョ現象と相まって、食物網にさらに影響し、海鳥からコククジラ(Gray Whales)に至るまで海洋生物に連鎖的な影響を及ぼす可能性があります。オーストラリアもまた、人々や野生生物への影響の厳しい事例を示しています。2016年から2019年には、熱波により1,000人以上が死亡、2023年~2024年の単一の海洋熱波では60万羽を超える海鳥が死にました。
バードライフのグローバル・パートナーシップは125の国と地域のNGOで構成されており、9月にケニア・ナイロビで、4年に一度のパートナーシップ・ミーティングと第2回グローバル・フライウェイ・サミットを開催しました。世界各地域から寄せられたメッセージは明確でした。気候危機と自然危機は深く相互に関係しており、これらに取り組むには、課題の規模に見合った緊急かつ協調的な行動が求められています。生物多様性条約は、2030年までに自然の損失を食い止め、回復させるという明確な目標を掲げていますが、渡り鳥の9種に1種はいまだ絶滅の危機にさらされています。

ハネナガミズナギドリ(タスマン タスマニア州 オーストラリア) ©John J. Harrison

©BirdLife International

©BirdLife International
サミットでは、参加者が「ナイロビ・フライウェイ宣言」に署名し、国際的な環境へのコミットメントを国家的な規模での行動に移すこと、また、自然と気候の目標達成のため、国境を越える渡りルート(フライウェイ: Flyways)
の保全に向けた資金を増やすことを求めました。

©BirdLife Internatioal
地域での取り組みと国・世界レベルの政策を結びつける力
バードライフ・パートナーシップは、現地での保全行動の推進やリーダーシップの強化から、各国の政策立案プロセスへの支援、さらにその経験を政府間の協議の場に活かし、各国政府による意欲的な意思決定を後押しすることまで、幅広く取り組んでいます。
必要な変革を推進するための資金を確保すべく、バードライフは世界銀行、アジア開発銀行、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)、ラテンアメリカ・カリブ開発銀行(CAF)、そしてパートナーである全米オーデュポン協会(NAS)と連携し、渡り鳥と人々にとって重要な生態系の保全と持続可能な利用のため、数十億米ドル規模の資金獲得を目指すとともに、再生可能エネルギーへの移行を支援しています。
クリーンエネルギーへの移行を加速することは、オーバーシュートを抑制するために不可欠です。UNEPによる報告書は、適応には適切な空間計画が必要であることも強調しています。
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)によれば、生物多様性、気候、人間の各システムの相互依存関係を、政策や制度の枠組みに明確に反映する必要があります。各国がエネルギー転換を加速する中、再生可能エネルギーのインフラをどこに、どのように配置するかによって、人々と自然に利益をもたらすのか、あるいは本来避けられるはずの自然環境への負荷を生じさせるのかが左右されます。バードライフは現在、政府や金融機関がエネルギー計画や開発に生物多様性への配慮を組み込めるよう支援する空間計画ツール「AVISTEP」を積極的に展開しています。
フライウェイ・サミットで、バードライフのパートナー団体は、各国の政策立案プロセスにおける相乗効果の促進に向けた決意を改めて表明しました。私たちは、政府や関係者が、国が決定する貢献(NDC)、国家生物多様性戦略・アクションプラン、土地劣化の実質ゼロを目指す目標を、相乗的に達成できるように支援していきます。これにより、気候変動対策、自然保護、人々のための意欲的な目標を、具体的な行動へとつなげていきます。
State of the World’s Birds(世界の鳥類の状況)を発表
グローバル・フライウェイ・サミットで発表されたバードライフを代表する主要報告書 「State of the World’s Birds(世界の鳥類の状況)」は、気候変動が鳥類に及ぼす影響が深刻化していることを強調するとともに、各国が気候変動対策と自然保護の目標を相乗的に達成するうえで、鳥類が依存する生態系の保全がいかに重要であるかを示しました。

©BirdLife International
気候変動と生物多様性の損失は、切り離して考えることのできない課題です。鳥類とその生息地を守ることは、自然環境の保全だけでなく、気候変動への対応や人々の暮らしを守ることにもつながります。バードライフはパートナーとともには、世界各地での保全活動と各国の政策、国際的な取り組みを結びつけ、気候と自然の危機に対する実効性のある行動を推進していきます。
本文を一部編集しました
原文はこちら

