地中海地域での鳥の密猟に対処するためバードライフ・パートナーが協力
渡り鳥にとって密猟はこれまでの危険で困難な旅に加わる新たな脅威です。EU野鳥指令は時期や方法など一定の条件の下で数種の鳥のみを狩猟の対象と認めることを記して、毎年2回繁殖地と越冬地の間を渡る数百万羽の鳥を守るものです。ところが、地中海地域ではEU法への違反が広範囲で行われており、過去40年の間に渡り鳥の個体数に大幅な減少を招いています。
イタリア(LIPU)、ギリシャ(HOS)、スペイン(SEO/BirdLife)のバードライフ・パートナーがこの問題に取り組むには共同活動と共通アプローチが必要であると決め、‘野鳥のための安息所’LIFE+プロジェクトを作りました。このプロジェクトは以下の3ヵ所の渡り鳥の問題地域、スルシス(イタリア、サルディニア南東部)、イオニア諸島(ギリシャ西部)、スペイン南部および東部(カタロニア、バレンシア、アラゴン南東部)、の地元コミュニティの態度を変えることが目的です。
これらの地域すべてでEU法や国内法で保護の対象となっている種に対する大規模な密猟が定期的に行われ、それにより渡り鳥の繁殖個体群の生存を危うくしています。残念なことに地元当局は密猟に目をつぶり、最近バレンシア地方で起きたケースでは当局がこれを合法化しようとまでしています。
このプロジェクトでは前記3つのバードライフ・パートナーは‘そのままにしておくことが生きること’キャンペーンを立ち上げましたが、これは渡りが鳥のライフ・サイクルの重要な部分なので鳥には渡りをする権利があり、密猟は止めなければならないと説明することを目的にしています。テレビのパーソナリティ、歌手、俳優、作家などの有名人の支援を得て、密猟者によって自然が受けるトラウマを伝える最初のキャンペーン・ビデオが公開されました。
選ばれた3ヵ所の問題地域だけで環境犯罪が行われているわけではないので、パートナーたちは人々に状況を伝え、この問題に彼らも積極的に加わるよう働きかけています。市民や政治家を対象にした様々な地元でのイベントが計画され、ギリシャとスペインでは移動展覧会が予定されています。地元の学校では密猟とそれによる地元や欧州の生物多様性への影響に生徒の関心が向くようなワークショップが行われます。最後に、これらの環境犯罪の重大性を明らかにし、他の地域の経験も共有するために各国の法執行機関を加えた国内外でのワークショップが開催されます。これらの活動を合わせれば渡り鳥の安全な飛行と彼らの未来を確保することが出来るでしょう。
(報告者:レベッカ・ランガー)
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