科学者が、食の安全と生物多様性を守るための気候変動への適応資金の対象となる10ヶ所の優先地域を特定した
気候変動の影響を調べている新しい研究により10ヶ所の優先地域が特定されました。これらの地域では気候変動に対する弾力性とそれへの適応のための資金が人々と地球上の生命を支える自然の生態系の両方に最大の利益をもたらすのです。
アフリカから南米、中央アジア、アジア太平洋地域に及ぶこの研究で特定された地域は、小規模農家が気候変動の影響を最も大きく受け、また生物多様性ホットスポットがある場所です。
資金の提供により人々への利益が最大になる可能性のある10ヶ所の優先地域は以下の通りです:
- 中央アメリカ: メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア
- カリブ海地域: ジャマイカ、ハイチ、ドミニカ、プエルトリコ、ベネズエラ
- アンデス地域(南米): コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、アルゼンチン
- ギアナ高地: ベネズエラ
- ブラジル大西洋岸(南米): ブラジル
- アルバーティン地溝帯: ザイール、ブルンジ、タンザニア、ウガンダ
- マダガスカル: マダガスカル
- フィリピン: フィリピン
- ジャワ: インドネシア
PLOS ONE誌に発表された‘生物多様性と食の安全のための世界的気候変動への適応の優先順位’は農業と生物多様性の双方に対する気候変動の影響の評価をまとめた初めての地球規模での研究で、双方にとっての優先順位を明らかにする目的がありました。
コンサベーション・インターナショナルとバードライフ・インターナショナルの研究者がカリフォルニア大学サンタバーバラ校、カンサス大学、ソウル国立大学、ニュージーランド・リンカーン大学の研究者と共同で研究を行いました。
研究結果について論文の主筆者でコンサベーション・インターナショナルの上級気候研究者のリー・ハンナは言いました。「この研究は多くの地域で貧しい農民と野生生物の未来が結びつくことを示しました。」
この研究ではトウモロコシや豆類などを作る小規模土地所有の農家にとって重要な作物モデルと気候変動に対する鳥の反応モデルを使って、作物と環境の持続性の双方に変化が大きい地域を特定しました。鳥については野生生物全体を代表するものとして各エリアの固有種を選びましたが、鳥は比較対象となる他の生物のグループよりもその生態がはるかに良く知られているからです。
「自然の生態系は花粉媒介者や害虫制御種などにより多くの方法で農家を支えていますが、一方、農家の気候変動への対応はしばしば生物種と生態系に影響を及ぼします。」とバードライフの科学部ヘッドでこの論文の共著者の一人でもあるスチュアート・バッチャートは言いました。「私たちの研究結果は、気候変動の人と生態系への側面に同時に取り組む両方の解決策に投資するために優先度が最大な地域を特定するものです。」
研究論文の著者たちは今回特定された地域の農民と野生生物を助けるために早急な活動が必要だと言っています。そのような活動には、森林地帯で生活する農民を含み、また‘日陰で栽培するコーヒー’のような生物多様性に優しい作物を奨励することなどが含まれます。
「この研究は農業と自然に対する気候変動の影響のために世界中からトップ10の地域を特定しています。」と論文の共著者のカリフォルニア大学サンタバーバラ校のPatrick Roehrdanzは言いました。
10ヶ所の優先地域への気候変動適応資金の投資は、同時に気候変動の人と自然への影響にも取り組むことになります。このような複数部門での計画は始まったばかりなので、これらの地域は他の地域における影響対策投資のモデルにもなります。これらの地域で見られる脆弱で生息域が限られる種の比率が高いことは、他の理由によっても国際的な投資のための高い優先度をもたらします。各地域で特定のサイト・レベルでの機会を特定するために、より詳細にわたる計画策定が必要になっています。
10ヶ所の地域は全ての世界的な生物多様性ホットスポットを特定し、熱帯地方の耕作地の13%と世界人口の7~9%の貧困地域をカバーしています。これらの優先地域は貧困の削減と自然保護の両方で気候適応投資に対して高いリターンをもたらす可能性があります。