チリのまき網漁プロジェクトが環境保全の賞にノミネートされました
チリで開発された改良型まき網は、海鳥の混獲を減らすための新しい効果的な対策方法です。昨年この混獲対策のプロジェクトはラテンアメリカ・グリーン賞から評価されました。
10月になると、シロハラアカアシミズナギドリがチリ沿岸沖のロビンソン・クルーソー島に到着し始めます。
アメリカ大陸西岸沿いにはるばるアラスカに渡り、卵を産みヒナを育てるためにとてつもなく長い旅をして南のこの小さな島にやって来ます。繁殖期の間、自分とヒナのための魚を捕ることに成功する鳥もいますが、残念ながら運が良くない個体もいるのです。美味しい魚を求めて潜水する際、トロール船のケーブルにぶつかるか、巨大な漁網に掛かってしまう可能性があります。このように海鳥が商業漁業により偶発的に殺されてしまうことを‘混獲’といい、海鳥にとって最大の脅威の一つです。
「このような漁船団は海鳥が餌をとるのと同じ場所で漁をしています。漁船は正に海鳥が食べる魚を捕っています。多くの海鳥は渡り鳥で、栄養補給やヒナを育てるために餌を最も必要とする時期に漁船団も操業するのです。」と混獲の対策活動を行っているチリのアホウドリ・タスクフォースのメンバー、Cristian Suazoは言いました。
幸運にも、この10年における海鳥の混獲数を減らすための活動は大成功を収めました。2006年にバードライフとRoyal Society for the Protection of Birds(英国のパートナー団体)はアホウドリにとって最も脅威である漁業による混獲を減らすためのパートナーシップ、アホウドリ・タスクフォース(ATF)を設立しました。
チリではATFは2007年以来活動をしており、最初は外洋のはえ縄漁での混獲を減らすために始まりました。ATFチームはメカジキ漁の釣り針に掛かってしまうアホウドリなどの数を減らすため、鳥を寄せつけないようにするトリラインを使いました。トリラインは効果があり、混獲の著しい減少がみられました。
しかし2013年に同チームはまき網漁による混獲もあることに気付き、この漁での混獲も減らすために活動を始めました。まき網漁では上端が海面に浮き下端には錘がついている巨大な網を広大なエリアに広げます。そして網の下端を巾着のように閉じ、中に入った魚を全て捕らえます。この漁法はチリ沖を流れるフンボルト海流に豊富に生息するイワシやサバなど群を作る魚を捕るのには極めて有効です。けれどもまき網漁はシロハラアカアシミズナギドリのような潜水をする鳥も偶発的に捕らえてしまいます。鳥は網の中にいる魚を食べようとして漁網に飛び込み、網に掛かり溺れてしまうのです。
混獲を減らす最善の方法を見つけ出すために、ATFは漁業がもっと海鳥に優しいものになる方法を求めて、まき網漁師と共に海に出ました。漁師の自発的な協力のお蔭でATFのメンバーは鳥がどのようにして漁網に捕らわれるのかを観察し、漁師の生計に影響を与えずに混獲を減らす最善の方法を解明するために彼らと共同で活動しました。
「私たちは漁網の浮きを設置する方法を変える必要があることに気付きました。また一部のまき網は海面に広がる余分な網の部分に鳥が掛かり溺れてしまうので、網の余剰を減らす必要がありました。」とSuazoは言いました。
そこでチームは改良型まき網を作りました。幾つかのまき網船でこの新しい網を実験的に導入したところ、海鳥の混獲は98%も減少しました。この改良型まき網の成功は見過ごされることはなく、昨年 ‘ラテンアメリカ・グリーン賞’ によりラテンアメリカにおける500の環境保全の取り組みの一つとして評価されたのです。しかしATFのチームにとって何よりの喜びは、この取り組みによってより多くのシロハラアカアシミズナギドリや他の海鳥が混獲されずに無事に巣へ帰れることなのです。
報告者: Margaret Sessa-Hawkins
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