あなたの保護活動はどんな影響を生み出したでしょうか?新しいツールキットPRISMが答えを見つけてくれるかもしれません
自然保護活動を現場で行うことは重要ですが、その影響を正しく評価することも同じくらい重要です。先日、PRISMと呼ばれる評価ツールが公開され、世界のどこに居ても評価を容易に実施できるようになりました。PRISMは、特に中小規模の保全活動プロジェクトのために設計され、効果的かつ簡単に使える無料のツールです。
保護活動団体が、保護活動そのものに優先的に時間、エネルギー、資金を投入したいと考えるのは道理です。けれども、その活動が望んでいる効果を上げているかどうかを見出すことも同じくらい必要なことです。これが、プロジェクトの結果と影響の評価のやり方を改善することを目的に新しい評価ツールキットPRISMが開発された理由です。PRISMは使用が容易かつ完全に無料で、現場での活動を妨げることなく、活動の改善につなげるために考案されたものです。
バードライフと他の保全団体が共同で開発したPRISMの主な目的は、プロジェクトが与える影響の評価をこれまでにないほど容易にすることです。PRISMは、保全活動コミュニティ全体に利益を与えるでしょう。誰もが成功例なら好んで話すでしょうけれども、失敗や挫折すらも、他の人たちが同じ失敗を繰り返さないように共有し、記録するために必要なのです。バードライフの影響評価オフィサーのIain Dicksonがこれを上手く説明しています。
このツールキットは、プロジェクトの影響と成果を他の要因と分離することが難しい複雑な環境で行われている中小規模のプロジェクトのためにデザインされています。既にいくつかの国で、様々なテーマのプロジェクトの評価に試用されています。評価に参加した人々は、PRISMを利用する利点を理解し始めています。インドネシアでの試験からは、下記のような感想が得られています。
「PRISMの手法とガイダンスを用いることで、プロジェクトの成果について新たなより詳しい情報を得ることが可能になり、さらにそれによりプロジェクトが地元コミュニティの福利や生計にもたらした影響をさらによく理解できるようになります。」とブルン・インドネシア(同国のパートナー)のTiburtius Haniは言いました。
評価したい保全活動プロジェクトはありますか?PRISMがあなたのプロジェクトに適切かどうかご確認ください。
PRISMとは?
PRISMは中小規模の保全プロジェクトによる成果と影響を評価するためのツ-ルキットです。
ほとんどのプロジェクトは活動の実施具合や結果(プロジェクトで実施したこと)を測るためにデータを集めます。ところがこれらのデータは、活動の成果と影響(プロジェクトによりもたらされた短期、中期、長期的な変化)を常に効果的に評価出来ているとは言えません。
このツールキットは、プロジェクトチームがプロジェクトにより生じた変化(良い面と悪い面の両方)を把握し、課題を特定したり、成果を関係者に共有したりといった作業を、時間やリソースといった面で可能な範囲内で実施できるよう、実践的な手法を提供するものです。
このツールキットは主に中小規模の保全プロジェクトを行う実施団体およびこうしたプロジェクトの支援団体が利用することを想定して設計されています。「中小規模」のプロジェクトに明確な定義はありませんが、下記項目の一部またはすべてに当てはまるプロジェクトを想定しています。
- 予算規模$5,000-$100,000
- 短期(3年未満)
- 評価の経験が少ない小規模なチーム
- 評価のために使える資源が限られている
- 成果と影響を他の要素から分離することが難しい複雑な環境下でのプロジェクト
ツールキットの内容は?
このツールキットでは、まず中小規模の保全プロジェクトにおける評価の基本的な考え方や理論を解説し、次に成果や影響を評価する手法を一つ一つ順を追って説明しています。
ステップ1: 評価対象の選定 |
ステップ2: データ収集方法の決定 |
ステップ3: 結果の解釈 |
ステップ4: 結果の活用 |
プロジェクトの成果/ 影響の何に注目するかを決め、質問を設定します。 |
評価をデザインし、評価の質問への答えを得るのに適切なデータの収集方法を選択します。 |
データを分析して可視化し、検証することで、最終目標に対する進捗や課題を明らかにします。 |
評価結果をもとに今後の活動を改善し、成果を他の環境保全団体や一般に共有します。 |
様々な保全活動に使用できるよう、下記5つのモジュールが用意されてます。必要に応じて、これらのうちの一つまたは複数のモジュールを使用して評価を実施します。
- 意識・行動の変化
- 能力形成
- 生計向上
- 政策
- 種・生息地の管理
モジュールごとに、データの収集から分析、解釈に関する実践的で簡潔なガイドや補足資料が用意されています。
ツールキットの入手方法は?
ツールキットは以下のURLから無料でダウンロードできます。
www.conservationevaluation.org
PRISMはどのようにして開発されたのか?
PRISMは、国際環境保全団体の連合チームが、保全活動家や、研究者、活動支援団体からの協力も得ながら開発しました。これまでにツールキットはケニア、インドネシア、タンザニア、タイ、ベトナム、ジンバブエでのプロジェクトで試験運用されています。
今後の開発計画は?
開発チームは、中小規模の保護プロジェクトを対象とした評価能力を確立するために開発を続けます。次の予定は、ツールキットを題材とした研修や教材などの補足ツールの開発です。
報告者: Jessica Law