ハゲワシを救う保護活動家コミュニティの設立
人と野生生物の問題に端を発する野生生物の毒殺は、東アフリカのハゲワシ類にとって大きな脅威となっています。ケニアのマサイ・マラではハゲワシの個体数は60%も減り(Viraniら 2011)、違法な毒殺が止められなければ今後も減少は続くでしょう。
保護区のすぐそばで暮らす人々は、野生生物との衝突にたびたび遭遇します。例えば肉食動物による家畜の捕食などです。それに対抗するため、一部の人々は捕食者の駆除のために動物の死骸に毒を施します。こうした方法は、見境いなく対象以外の多くの動物を殺害します。その最たる犠牲者がハゲワシ類です。一頭の牛の死骸で150羽以上の絶滅危惧ⅠA類のハゲワシが死に至ることがあります。
マサイ・マラの地域コミュニティはネーチャー・ケニア(同国のバードライフ・パートナー)の支援を受け、人と野生生物の対立を見定め、毒の使用を減らし、ハゲワシや他の野生生物の保護を進めるため地元の状況に合った解決策を見出しつつあります。このアイデアと経験を共有するために6月にネーチャー・ケニアはケニア各地から牧畜農家を招いた交流会を企画しました。マサイ・マラの18のコミュニティが、「ライオン守護者」と呼ばれるイニシアティブの支援を受けて活動しているアンボセリ国立公園のEselenkei保護区内のコミュニティを訪問しました。文化的慣習及び伝統的知識を科学と結びつけることにより、「ライオン守護者」の取り組みはアンボセリにおいて人と野生動物の対立とライオンへの報復的毒殺や殺害を減らす成功事例となっているのです。
「Eselenkeiではハゲワシも野生生物の重要な一部であることを知りました。そこでは人々が本当に野生動物を愛して、面倒を見ています。私も自分のコミュニティの人たちに伝統を守りながら野生動物や鳥の毒殺を止めるように促そうと思います。」と今回の相互訪問に参加したマサイ・マラのTalekゲートの副主任Wilson Soit は言いました。
今回の訪問でマサイ・マラのグループは、アンボセリの農民から、コミュニティ農場においてどのようにして家畜や、放牧、そして野生動物を管理しているのかを見学することができました。アンボセリの放牧管理計画では、野生生物との争いを最小限に抑えるため、放牧の場所と時間を事前に決めて実施するように定められていました。それに加えて、問題を起こすライオンには首輪が装着され、経験豊富なライオン監視人がライオンの動きを追跡し、ライオンとの遭遇を最小限に抑えるために農民に警告を発信するのです。また、監視員が家畜の飼育者と野生動物が互いの通り道を横切らないように放牧地をパトロールしています。これらがアンボセリのコミュニティで地域内での人と野生生物の対立を減らし、毒殺を止めている方法の一部です。
「私たちはライオンが毒殺されて埋められ、その後雨が降って毒がコミュニティの川に流れ込んだ事件があったことを知りました。20頭の牛と10頭のヤギが川の水を飲んで死にました。これによりコミュニティの多くの人たちが動物を毒殺することがいかに危険なことか知ったのです。動物を殺すだけでなく、人を殺す可能性があるのです。」とナロックの「マサイ・マラの友」という地元グループの代表で、相互訪問に参加したHarris Tagaは言いました。
Harrisはネーチャー・ケニアがこのような機会を与えてくれたおかげで今回の訪問から多くの教訓を得ることが出来たと言いました。
ネーチャー・ケニアは、「ライオン守護者」のような事例を参考に、毒を使わずに人と野生生物の対立を緩和する取り組みの支援を続けます。更に、このイニシアティブはハゲワシの危機についてより広く一般の関心を集め、それによりハゲワシの保護への支援を増やし、人と野生生物の健康に対してハゲワシが果たしている役割がより顕著になるでしょう。
報告者: Obaka Torto and Masumi Gudka