外来捕食動物の一掃によるパラダイスの復活

ソシエテマミムナジロバト: 個体数は200羽以下から回復に向かっている 写真提供: © Marie-Helene Burle/Island Conservation

太平洋の5つの孤島が史上初の再生プロジェクトの成功により、再び4種の世界的希少種の安全な避難所になりました。

国際自然保護団体により、フランス領ポリネシアのアクテオン&ガンビエ群島から外来動物を駆除する活動が開始されたちょうど2年後、目標の6島のうちの5島が捕食動物のいない島になったことが確認されました。その面積は1,000ヘクタールにもなります。世界の他の場所にはいない希少な鳥(固有種)やその他の在来動植物が、これらの島々が元に戻るのに伴い既に回復しの兆しが現れています。

ソシエテマミムナジロバトは、200個体ほどしか残っていない世界で最も希少な種の一つです。仏領ポリネシアの有害な外来動物による捕食と競争が、本種や他の希少な固有鳥類を絶滅の縁に追いやりました。本種はバードライフにより私たちが生きている間に絶滅する危険性の極めて高いことを示すカテゴリー、IUCNレッドリストの絶滅危惧ⅠA類にリストアップされています。

「アクテオン&ガンビエ諸島は、かつて太平洋の島々に広く分布していたソシエテマミムナジロバトの最後の生存個体群の生息地です。この鳥に残された捕食動物のいない生息地はあまりにも小さかったので、このような介入なしでは、サイクロン、長引く日照り、偶発的なネズミや鳥の病気が本種の絶滅を招く可能性がありました。」とバードライフの外来種マネジャーのSteve Cranwellは述べています。

フランス領ポリネシアの南東に位置する隔絶しほぼ無人のアクテオン&ガンビエ群島は多くの絶滅が危惧される固有野生生物の生息地です。写真提供: © Steve Cranwell / BirdLife

合計19種の留鳥の海鳥が、このプロジェクトの恩恵を受けると期待されています。写真はアカアシカツオドリの幼鳥。
写真提供: © Caroline Blanvillain / SOP Manu

1500年以降の鳥の絶滅要因の90%が、外来哺乳動物だと考えられています。初期の探検者たちがネズミなどの外来種をアクテオン&ガンビエ群島に持ち込み、自然のバランスを崩し、陸生捕食者に対する防御なしで進化した元からの動植物を危機にさらしました。

復元作戦

資源、専門知識、装備、運搬技術を統合して、バードライフ、SOP Manu(仏領ポリネシアのバードライフ・パートナー)、アイランド・コンサベーションなどのNGO連合が、仏領ポリネシア政府、土地所有者、他のパートナーおよび地元のボランティアの支援を受けて、2015年にこの挑戦的なプロジェクトの完遂を目指して、仏領ポリネシアの孤島、バハンガ、タナルンガ、テモエ、カマカ、マカロア、マニュイの6島に1500㎞の航海をしました。

このプロジェクトには、数年にわたる計画策定と資金調達(ゲームアプリ「Angry Birds」のメーカーRovio社の協力を含む)を要しました。また、9つの許可証、165時間のヘリコプターの飛行時間、数百トンもの設備と、主要パートナーのBell LaboratoriesおよびTomcatから寄贈された餌を運搬するための3隻の船、および、異常気象と海洋条件の中で12日間の往復の航海を耐えた6ヶ国(3つの大陸の)31名の隊員を要しました。

「徹底したモニタリングの結果、4月に行った調査で6島のうちの5島での成功が確認されました。これは捕食や外来種との競合により島で激減した在来種に対して、恒久的な解決策を提供する大きな成果です。」とSOP Manuの理事David Beaune博士は報告しました。

写真提供© Caroline Blanvillain / SOP Manu

二つの利益:安全な生息地と地元でのココナッツ生産

「このプロジェクトは、ソシエテマミムナジロバトと絶滅危惧ⅠB類の陸鳥ツアモツシギの生息地の安全性を倍増させました。島は新しい在来植物により活気があるように見え、2種の鳥が定着し、テナルンガ島で数を増やしています。これは何十年も見ることが出来なかった光景です。」とCranwellは言いました。

プロジェクトの恩恵は、自然だけに止まっていません。「ネズミがいなくなったことにより、地元の土地管理人から2016年に孤島のコミュニティの主要な所得源であるコプラ(乾燥したココヤシ)の生産が倍増したと報告がありました。」とカトリック協会の司教総代理Pere Joel Aumeran氏は言いました。「島の自然の価値を守ることはポリネシア文化の基盤で、カトリック協会にとっても大切なことです。この地元の人々の生活への多大な貢献は、島が完全に回復し、捕食者のいない状態を確実にします。これはポリネシアの次世代への遺産です。」

「このプロジェクトの成功は、これらの世界的な絶滅危惧種の未来を確保するために重要ですが、同時に外来捕食動物のいない場所がほとんどない地域で、他の固有種にも安全な生息地を提供します。また、他の孤島においても同じ作戦が同規模で行われるならば、外来種に起因する絶滅を避けることが出来るという指標にもなります。」と、島嶼保全プロジェクト・ディレクターのRichard Griffithは言いました。

外来の捕食動物がいなくなったことにより個体数が復活中のツアモツシギ
写真提供: © Marie-Helene Burle / Island Conservation

これからのステップ

「私たちに必要なのは、これらの種がかつて生息していた島に小さな個体群を移して生息域を拡大することです。これはポリネシアでは高い効果が確認されている保護技術です。」とBeaunej博士は述べています。「トモエ島にソシエテマミムナジロバトとツアモツシギを再導入するとともに、ノドジロウミツバメなどの絶滅が危惧される他の海鳥をこれらの捕食者のいない島に招き寄せる計画も進んでいます。」

厳しい地形の複数の島に将来の復元活動を伝えるために、成功しなかったカマカ島での活動事例の解析を行っています。外来動物が5つの島から除去された今、チームの注目はバイオセキュリティに移っています。即ち、モニタリング、教育(観光客へのパンフレットや立て看板)、入船に対する厳しい検査などを通して外来種の再上陸を防ぐことです。

「仏領ポリネシアは、このプロジェクトの完遂を大いに誇ってよいと思います。その規模と複雑さはこの地域では初めてのものでした。ポリネシア政府はこの成功を利用し、オセアニア諸島から有害な外来種を駆除するための太平洋でのリーダーになる絶好の立場にいるのです。」とGriffithsは言いました。

カンショウヒメアオバト(準絶滅危惧種)も利益を受ける。写真提供: © Tommy Hall / Island Conservation

 

報告者: Shaun Hurrell

 

 

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