ヘラシギの冬のおとぎの国がラムサール・サイトに
バードライフ・パートナーBANCAのたゆまぬ努力によって、ミャンマーのモッタマ湾の一部がラムサール条約に登録されました。世界的に絶滅が危惧されているシギ・チドリ類の重要な越冬地を過剰漁獲などの脅威から守る足がかりとなります。
想像してみましょう。そこは強い波が際限のなく干潟に押し寄せ、常に海岸線の形が変わる荒々しい自然の海岸です。
生命に満ち溢れた干潟を想像してみましょう。3つの河川が流れ込み、運ばれてきた堆積物や栄養分がたくさんの魚や無脊椎動物を育んでいます。今あなたが心に思い浮かべたのは、ミャンマーにある巨大な漏斗状の河口域で、アジアで最も重要な渡り性水鳥の越冬地の一つである、モッタマ湾です。
ヘラシギの2羽に1羽がモッタマ湾の豊かな干潟を利用しています。この絶滅危惧ⅠA類のシギは越冬地の喪失が大きな脅威となっています。ここモッタマ湾には毎冬推定180~200羽のヘラシギがやって来ますが、これは世界の全個体数のおよそ半分に当たり、モッタマ湾は同種の保全に非常に重要な地域となっています。
しかし、ごく最近までモッタマ湾の将来は安心とは程遠い状態でした。ヘラシギ、オバシギ、カラフトアオアシシギなどの絶滅危惧渡り性シギ・チドリ類のとって重要な地域であり、バードライフによって「危機にあるIBA」(IBAs in Danger)に認定されているにもかかわらず、モッタマ湾には公的な保全が全くなく、湾内の資源が危機的な速度で失われています。
この貴重な生態系にとって最大の脅威は過剰漁獲です。その水域の魚類はこの10年で急減しており、その大きな原因は網を使って幼魚を含むあらゆる大きさ、魚種の魚を見境なく捕る違法な漁法です。近年は鳥の狩猟も問題になっていますが、政府による保護のない場所でこれらの脅威を効果的に低減するのは困難です。
BANCA(ミャンマーのパートナー)は何年にもわたりこの重要な湿地の保全活動を行って来ました。シギ・チドリ類のモニタリング、ハンターからのヘラシギ保護とパトロールなどの現地での保全活動に加えて、モッタマ湾のラムサール条約への登録において重要な役割を果たしました。
5年を超える弛まぬ苦労が遂に実り、2017年5月10日の「世界渡り鳥の日」にモッタマ湾内の45,000ヘクタールのエリアがミャンマーで4番目のラムサール・サイトに公式に指定されました。これはミャンマーの法的保全地域外の場所では初めてのケースです。ラムサール条約への登録は、BANCAや他の地元の保全活動グループによる狩猟や過剰漁獲などを適切に抑制する活動の強力な援軍となるでしょう。狩猟や過剰漁獲は、世界的な絶滅危惧種のシギ・チドリ類だけでなく、この河口域の生産性や水を浄化する働きを持つ生物に依存する地元コミュニティの生計を危険に陥れるものです。
世界的な利益もあります。干潟は重要な炭素の吸収源なので気候変動の影響を緩和につながります。
「モッタマ湾は渡り性水鳥にとって東アジア・オーストラリア・フライウェイにある最も需要な場所の一つです。ラムサール条約への登録は、モッタマ湾の保全にとって重要な一歩となるでしょう。」とバードライフのアジア部門上級保護オフィサーのマイク・クロスビーは述べています。
報告者: Alex Dale