世界で唯一の山岳性(しかも肉食の)オウムの探索
野生のケアを捕まえるにはずる賢くなければなりません。Kimberley Collinsがニュージーランドのネルソン湖国立公園で、世界で唯一の山岳性のオウムを探索した物語をご紹介します。
頭上にそびえる標高1300メートルの頂上を見て、長くて厳しい登山の心構えをしてこなかったことを後悔しました。自然保護局のケア・チームと共に、私はアッパー・ワイラウ渓谷に着いたばかりでした。私たちは雌のケアとその巣を探しに、セントアルノー山脈へ向かっているところでした。
ケア(和名ミヤマオウム: ケアはニュージーランドでの通称)は世界で唯一の山岳性のオウムであり、その巣へたどり着くまで一つや二つの山越えがあることは知っておくべきでした。Corey Mosen とSarah Fisherはケアの保全のための活動を、繁殖期である8~12月に行っています。通信タグを装着した成鳥を追跡し、これまでに確認している巣をまだに使っているかどうかを調べます。
「私たちの目的は卵や雛や巣を見つけ、繁殖期の終わりに若いケアが群に加わっているかどうかを確認することです。」とMosenは言っています。
ケアは自然の洞穴や岩の隙間、また巨木の空洞や根に巣を作ります。そのために、外来の哺乳類に狙われやすいのです。オコジョは雌の成鳥や雛を殺し、ネズミやフクロネズミはケアの巣を荒らし、卵を食べるのです。
私が息も絶え絶えになりながらも急傾斜を上っていると、Mosenは息も切らさず、ケアが卵から孵って巣立ちするまでにおよそ4カ月かかることを説明してくれました。
「これだけ長い間巣に残っているために外来哺乳類の犠牲になりやすいことが、3分の2もの雛が巣立ちできない要因の一つです。その一方で、雛が巣立ち、独り立ち出来れば生存率は高くなります。ですから私たちのチームは雛を無事に巣立たせるための取り組みを行っています。」とMosenは言います。
山と崖を登ると、営巣地があると想定していた場所に着きました。片側が切り立つ急斜面、反対側が聳え立つ崖、という中で、幅1メートルもない細道が森を通っていました。丘の側からはコケに覆われた巨岩が突き出ていて、その下には細く深い割れ目が続いていました。ここはケアを見つけられる可能性がある場所だとMosenは言いました。
ザックを下ろし、巣に何か居るかどうか見るために慎重に横たわりました。箒の柄の先にカメラが付いた道具を使って覗き込むと、岩の奥深くには孵ったばかりの雛2羽と卵1個が見つかりました。
このような幼い雛を抱えた雌の邪魔をするわけにはいかないので、私たちは道具を片付け始めました。けれども、荷物をまとめその場を離れようとした瞬間に、頭上のブナの木の中からカサカサという音がしたので、振り返りました。するとなんと頭上には、深緑色の羽毛から雨のしずくをしたたらせた、もう1羽のケアがいたのです。足環が付けられていない雄でした。
Mosenは直ちにバッグからバンディングの道具を取り出しました。彼は岩の割れ目の前にネットを張り、携帯電話を置き、録音していたケアの長く鋭い鳴き声を再生しました。足環のない雄はすぐにこれに興味を持ち、高い木の頂から突き出た岩の上に舞い降りました。そしてケアは携帯電話の上に着地しました。こうして私たちはネットに掛かった彼を捕まえたのです。
Mosenはケアの足から慎重にネットを外し、逃げないように保定しました。彼は私にケアを持ったことがあるかと聞きました。カカ(ニュージーランドのオウムの一種)なら一度持ったことがあるとつぶやいたところ、「それで十分だ」と答え、片手で嘴の後ろ辺りを持ちながらもう片方で足を掴むと良い、と説明してくれました。
剃刀のように鋭いケアの嘴が私の指に近づくと心臓がドキドキしましたが、大きく息を吸い、しっかりと掴みました。Mosenの一連の行動は一瞬のことのように思えました。彼は足環を付け、嘴と頭を計測し、重さを量り、血液のサンプルを採取しました。その後ケアを放すと、ケアは大急ぎで走り、羽毛を逆立てながら近くの木の中に飛び込んで行きました。
ニュージーランドで最もよく知られた、象徴的な鳥の一種をこれほど近くで見たことは私にとって驚くべき経験でした。自然保護局のスタッフが本種の保護にどれほど真剣に取り組んでいるかを初めて知っただけでなく、ケアの個体数が近年でどれほど減ったかも知ることができたからです。
かつて数十万羽を数えたケアは大きな問題に直面しており、今では推定1,000~5,000羽しかいません。ニュージーランドにどのくらい生息しているのかを正確に推定するのは大変なことです。彼らはアクセスが困難な荒涼とした場所に生息しており、さらには群を作らない性質を持っているため、一回の調査で1~2羽を見られる程度です。
報告者:Kimberley Collins, Forest & Bird (BirdLife NZ)