数百万羽のペンギンを守る世界最大のマリーン保護区
人類が常住しない唯一の大陸として、南極は生き物にとって地球上で最も手付かずの生態系を有する生息地です。魚が豊かな海域に惹きつけられてトウゾクカモメやウミツバメなど46種の鳥が、この一見不毛に見えますが豊富な生命を育む氷の大陸へ翼を広げてやって来ます。
けれども、この最も荒涼とした土地でさえも自然が人によって脅かされないとは言えません。例えば、南極を代表する最も象徴的な鳥ペンギンも、気候変動や過剰漁獲などの外部要因により最も安全を危惧される一種となっています。
これが、南氷洋のおよそ150万平方キロメートルを今後35年間商業漁業から守る、‘ロス海マリーン保護区’の設立をバードライフが歓迎する理由です。
ロス海はニュージーランドの南東に位置する南極大陸の一部、ビクトリアランドのアデア岬からエドワードVII世半島にかけて広がっています。このエリアはバードライフにはおなじみの場所で、既にいくつかのIBA(重要生息環境)を定めています。
特にこのエリアはペンギンにとって極めて重要です。推定155,000羽のコウテイペンギン(準絶滅危惧種)と250万羽を超えるアデリーペンギン(準絶滅危惧種)がこの海域で活動しています。また世界的に重要な長距離の渡りをするオオトウゾクカモメとギンフルマカモメの生息地でもあります。
またオオフルマカモメ、ハイイロアホウドリ、マユグロアホウドリ、ナンキョクフルマカモメ、ユキドリ、アシナガウミツバメなど多くの海鳥がこの海域で採餌をする姿が見られます。それらに加えて、この海域はヒョウアザラシ、シャチや100種ほどの魚類と約1,000種の無脊椎動物の生息地です。
「ロス海保護区の設立は、アデリーペンギンを始めとする世界の重要な海鳥の個体群を含む南極の海洋生物にとって大きな勝利です。」とバードライフの世界政策ヘッドのPepe Clarkeは言います。「ロス海の豊かな海洋環境で漁業の圧力を減らすことにより、このマリーン保護区は過剰漁獲により脅かされるペンギンやミズナギドリの個体群に安全な場所を提供するでしょう。」
海鳥は世界中の鳥類の最も絶滅が危惧されるグループの一つで、バードライフにとってもその保護は最優先です。その中でもペンギン類は特に危惧されており、半分以上の種が絶滅危惧ⅠB類または絶滅危惧Ⅱ類に分類されています。海洋保全の優先事項をより良く知らせるために、私たちは海鳥の国際的に重要な3,000ヶ所のエリアをマッピングしました。それには海鳥追跡の最先端技術を利用し、南極大陸には200ヶ所以上のサイトを含めました。
南極大陸に不可欠な生態系を保全するために国際コミュニティが取るべき次のステップは、南氷洋にマリーン保護区の統合的ネットワークを設立することで、それにはここが海洋性哺乳動物、魚類および海鳥のための最重要エリアであることに重点を置くことが必要です。バードライフは今後も専門的知識を使い、国の管轄下にない海域(公海)にマリーン保護区の設立を行う活動を続けていきます。因みに、今月の初めにバードライフは海洋性生物多様性にとって重要と特定される大西洋の公海の一地域に、保護区を与えるべきであると提案しました。
報告者: Alex Dale
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