【視察報告】ミャンマー ヘラシギの越冬地における生態調査と保全
バードライフ東京は、2017年度トヨタ環境活動助成プログラムの支援を受けて、2018年1月~2019年6月の期間に、ミャンマーのパートナー団体Biodiversity and Nature Conservation Association(BANCA)と共同で絶滅危惧種のヘラシギ等の渡り鳥の保全を進める活動を実施しました。
この度、6月末にプロジェクトが終了するにあたり、当団体の職員がプロジェクト評価のため現地を視察してきましたので、活動成果を中心にご報告します。
プロジェクトの背景・概要はこちら。
(1) ヘラシギ調査
2018年3月、12月、2019年1月に、それぞれ約1週間~10日間、活動地にてヘラシギの個体数や分布など詳細な生態調査を行い、得られた情報をラムサール条約湿地情報票(RIS)の作成、保全計画策定に用いました。2019年1月の調査では、水鳥64種、136,383羽を記録し、ヘラシギの個体数は112羽と推定されました。また、14羽のヘラシギには足環がついていて、それらがロシアや中国の地域へ渡っていることが分かりました。
(2)ラムサール条約湿地登録ラムサール条約湿地登録エリア拡張のための合意形成
2017年、モッタマ湾の42,500ヘクタールに渡る地域が、最初のラムサール条約湿地として登録されました。本プロジェクトでは、それを161,030ヘクタールまで拡張するため、中央政府、地方政府、地域住民を始めとする利害関係者間の合意形成を行いました。最初の登録時は合意形成を得るのに3~4年もの時間を要しましたが、今回は3~4か月程の短期で合意に至り、ラムサール条約湿地情報票を条約事務所に提出し登録申請をすることが出来ました。現在は審査結果待ちの状況です。拡張エリアが条約湿地に登録された暁には、より効果的な保全活動の実施が期待されます。
(3)地域住民グループによる持続的な保全体制構築
モッタマ湾沿岸地域に発足した地域住民で構成される7つの「保全活動グループ」に対し、啓発活動、研修、資材供与等の支援を行いました。これにより、グループメンバーが自らパトロール等の活動計画を立ててヘラシギ調査、密猟者の通報、結果報告を行う体制が整いました。今回の視察の際にアンケートを行った結果、メンバーや近隣村の地域住民は、保全活動グループ設立前にヘラシギのことを全く知らなかったのが、現在、メンバーは勿論のこと、地域住民のヘラシギ認知度が60-80%程度まで上がり、地域を巻き込んだ保全体制が構築されていることが確認出来ました。
(4) パートナー団体BANCAについて
BANCAは若いスタッフが多く活発なNGOです。全国レベルでは環境省と、地方レベルでは各地方政府と密接に協働しており、地域住民からも信頼を得た啓発活動や支援等の働きぶりが評価されています。本プロジェクトを含むそれらの活動の多くは、ドナーの支援に支えられています。ヘラシギ保全活動の最前線に立つ保全活動グループの多くのメンバーは、非常に不利な環境で貧しい暮らしをしている人たちであるため、財政的にも自立した活動を行うのは依然困難な状況にあります。保全活動を継続していくためには、今後も引き続きの支援が求められています。
当団体は、現在「Yahoo!ネット募金」にてヘラシギ保全のための寄付を募集中です。
是非、こちらのページもご覧ください。
また、本プロジェクトにて、ヘラシギの特徴や各国での保護活動について紹介するリーフレットを作成しましたので、是非こちらのページもご参照ください。