SATO YAMA UMI 通信‐カンボジア訪問
カンボジアのパートナー団体であるBirdLife Cambodia Programme(以下BLカンボジア)では、「オオヅル生息地におけるオオヅル保護のための地域住民への環境教育」と題し、小学生に対する環境教育プログラム、地域住民に対するオオヅル保全のための普及啓発活動と若手スタッフの育成を実施しています。
このたび、活動状況の確認と今後の取組についての情報交換のため、7月初旬に当団体の職員が現地を視察してきました。今回視察した、本プロジェクトの活動地である非繁殖期のオオヅルを支える生息地のAnlung PringやBoeng Prek Lapouv保護区の様子及び、小学校での環境教育と地域住民向けの普及啓発活動の一部をご報告いたします。
1.BirdLife Cambodia Programme (BLカンボジア)
2001年にカンボジアの鳥類やその生息地の保全を目的に設立され、重要生息環境(IBA)の保全、絶滅危惧種の保全、保全活動の重要性に関する普及啓発や人材育成を行っています。
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2.タケオ州Boeng Prek Lapouv(BPL)保護区
Boeng Prek Lapouv保護区(8,305ヘクタール)は、オオヅルの非繁殖期を支える重要な生息地の一つです。BLカンボジアは、ここで小学校で使う環境教育用教材の開発を日本環境教育フォーラムの現地パートナーであるMlup Baitongと共同で作成し、環境教育プログラムを実施しています。また、地域住民に対するオオヅルの保全と農薬使用を抑制するよう普及啓発活動を行っています。今回の訪問では、環境教育プログラムを実施している小学校での授業やビデオ上映会の視察、レンジャーステーションで現在の活動状況を報告してもらいました。
小学校での環境教育プログラム
小学校では「再利用」についての授業が行われており、教室内での授業だけでなく、グループごとに校庭でゴミを拾いながら再利用について考える時間が設けられていました。また、教員によると環境教育の授業が始まってから、生徒たちの環境に対する意識に変化がみられ、環境に良い事など自分達で考えて行動するようになり、また農薬の使用による影響についても考えるようになったそうです。
オオヅル保全活動
一方、保護区における保全活動は、湿地の農地への違法な転換、周辺の水田における過剰な農薬使用、またオオヅルの保護活動を担っているレンジャー達の劣悪な就労環境等、もう一つの保護区Anlung Pringよりも課題が多い印象を持ちました。
3. カンポット州Anlung Pring(AP)保護区
Anlung Pring保護区(217ヘクタール)は、オオヅルの非繁殖期を支えるもう一つの重要な生息地です。BLカンボジアは、ここで地域住民に対するオオヅルの保全や農薬・農業有害廃棄物による影響について普及啓発活動を行っています。
今回は、APのインフォメーションセンターにて管理・運営委員会のメンバーから、APにおけるエコツアーの現状やオオヅル保全活動について話を聞きました。エコツアーはオオヅルが飛来してくる冬の時期に限られてしまうため、地域住民にとって主要な収入源にならないことが問題となっていることや、保護区のすぐ近くではエビの養殖等がおこなわれており、ボートでの往来や除草剤などの影響が懸念されています。
農業用の有害廃棄物の適切な管理に関する普及啓発活動
農業用の有害廃棄物の処理について検討するため、コミューン長や他のメンバーと打合せを行いました。この地域の農家の人々は農薬による健康への影響をよく理解しており、農薬の散布を特定の人々に任せているそうです。今回の打合せでは、散布作業を担っている人達の健康への配慮からマスクや衣服を配給することや、農薬が入っていたパッケージを特定の場所に捨てるよう呼びかけるための方法など有意義な検討が行われました。
今後も、現地パートナー団体のBLカンボジアに少しでも興味を持って頂き、彼らの活動を応援して頂きたいと思います。