レッドリストのスター:2種のキウイが絶滅危惧種の指定から外れる

ノースアイランドブラウンキウイの個体数は安定しており、場所によっては増加していると推測されています。 写真提供: © Neil Robert Hutton

およそ30年におよぶ人工飼育、捕食動物の管理、そして地域コミュニティの努力によって、ニュージーランドのキウイが2種とも復活しようとしています。

恐竜が絶滅したと唱える人も、キウイを見たことはないでしょう。ニュージーランドの天然林に夕暮れが近づくと、彼らの鳴き声が聞こえてきます。思い切って森の中に入れば、三つ又の足跡を目にすることができるでしょう。この独特の飛べない鳥を見るのに準備は必要ありません。目撃者によれば、キウイを言い表すとすれば、ジュラ紀の痕跡そのものだ言います。大きな体は体重も重く、下半身を前後に揺らながらその太くて力強い脚を使って、まったくもってユニークな歩き方をします。非現実的な光景です。

けれども遠い祖先である恐竜とは異なり、キウイが近いうちに絶滅する心配はなさそうです。政府機関、地元の保護団体、マオリ(先住民)のコミュニティの約30年にわたる努力の結果、2017年のレッドリストで2種のキウイは、スターになったのです。今回、オカリトキウイとノースアイランドブラウンキウイが絶滅危惧ⅠB類からⅡ類に格下げになったのです。

まさに負け犬のサクセス・ストーリーです。オカリトキウイは1995年には僅か160羽でしたが今では成鳥400-450羽にまで増加しました。ノースアイランドブラウンキウイは場所によっては年率2%以上で増加していると推定されています。

彼らの減少原因は昔から変わっていません。外来種です。キウイの卵と雛を食べてしまうオコジョ、フェレット、野良猫が原因です。成鳥でさえも安全とは言えず、多くのノースアイランドブラウンキウイが野良犬に捕食されてきました。犬はニュージランド北島で人ともに増え続け、今や生態系の頂点に君臨しています。

オコジョなどの侵略的外来哺乳動物がニュージーランドの在来の鳥にとっての
大きな脅威です。
写真提供: © David Hallett

行動を起こさねばなりませんでした。そこで1991年に自然保護局がニュージーランド銀行およびForest & Bird(NZのパートナー)と共同で「キウイ復活プログラム」を策定するためにタッグを組みました。彼らは、大きなことを成し遂げる最善の方法は、活動内容を明確に規定された管理可能な手順に細分化することと知っていました。これが「キウイ復活計画」となりました。

最初の「キウイ復活計画」は情報を集めることであり、何羽のキウイが残っているか、どこに生息しているか、何が最大の脅威かなどを明らかにすることでした。その結果、特にオコジョによる巣での捕食がキウイ減少の最大の原因であることがわかりました。Forest & Birdのロビー活動により5つの広大なキウイ保護区が設立され、キウイを管理し、捕食者の影響を抑制する最善の方法を調べるために年間2百万NZドルの予算が組まれました。

しかしながら、オコジョ管理の方法を探っている間にも、幼鳥の生存率を高める取り組みを即座に実施する必要がありました。そこで「巣と卵作戦」が生まれたのです。

キウイは体の大きさとの対比で鳥類最大の卵を産み、その大きさは雌の体重の20%にもなります。「巣と卵作戦」はこの膨大なエネルギー投資が無駄にならないようにすることが目的でした。野外からキウイの卵を採取し、孵った雛を飼育下で育て、オコジョには安全な体重(約1キロ)になると野外に放しました。これが上手く行きました。この方法で幼鳥の生存率は、無残な5%から60%にまで上昇したのです。

これまでの知見とキウイ保護区で開発されたツールを使って、第3次キウイ復活計画では、景観規模での害獣駆除を展開しました。地元コミュニティをキウイの個体群管理に巻き込んだ取り組みは、やがてニュ-ジーランド全土にコミュニティ主導の活動となり、大成功を収めました。ここで強調したいのは、キウイを生態系の指標とし、健全な生態系の一部としてキウイの管理を進めたことです。キウイを支えることは、他の動植物の利益にもなるのです。

一部の地域では「巣と卵作戦」を継続しました。他の地域では「kōhangaキウイ」エリアが設立されました(kōhangaとはマオリ語で巣を意味する)。このエリアでは、捕食者のいない、あるいは少ない場所(島や捕食者防止フェンスの内部など)にキウイの個体群が形成されています。そこで生まれた幼鳥は、本島に新たな個体群を形成したり、既存の野生個体群に補充したりするために移送されます。

第3次復活計画の発表以降、特に北島で守るための外来捕食動物の最適な管理方法に対する理解が大きく進展しました。キウイ保護区での活動によって、オコジョ抑制のための毒薬の空中散布など、広大なエリアでキウイを守る方策が改善されました。

地上での害獣管理の限界にも理解が進みました。罠や毒餌の使用における特に重要な発見は、罠や毒餌を避けるオコジョが出てきたため、別の技術を導入する必要性が出てきたことです。

犬の脅威は、特に人の近くに居るキウイの個体群にとっていまだに重要な課題として残っています。ペットであれ、労働犬であれ、狩猟犬であれ、野良犬であれ、犬は成鳥のキウイを殺します。

北島のブラウンキウイの寿命は非常に短く、他の地域のブラウンキウイの寿命が30〜40年であるのに対し、北島では13-14年しかありません。これは主に犬による捕食が原因です。キウイを含め長命の生物は一般的に繁殖率が低いため、繁殖能力のある成鳥の死は幼鳥の死よりもはるかに重大です。

ノースアイランドブラウンキウイは復活中。
写真提供: © Simon Fordham

犬が問題となっている場所では、たった一匹の犬でさえ、キウイの地域個体群を容易に一変させ、僅かな時間で長年にわたる保護活動が無に帰してしまう可能性があります。

第3次復活計画で大きな成功を収めたにもかかわらず、管理の行われていない本島の個体群は年率約2%で減り続けています。これは2015年に政府により認識され、ニュージーランドのキウイ5種のすべてについて年2%の減少を2%の増加に転ずるための追加予算が組まれました。

まもなく発表される予定の第4次キウイ復活計画(2017-2027年)では、2030年までにキウイの個体数を7万羽から10万羽に増やす野心的な目標が定められています。

この目標を達成するため、同計画ではこれまでよりも費用対効果が高い捕食者管理をより広範に展開することを謳っています。景観規模の捕食者管理は新たな段階に入ります。特に南島では、キウイの個体群が荒涼とした地形の広大なエリアに分散しており、キウイの小個体群にのみ管理が行われているのが現状であり、新たな取り組みが行われるでしょう。

同計画はまた、2050年までにニュージーランド全土から捕食者を無くすとした政府の提案を受けて、キウイの管理を拡大することも提案しています。ニュージーランドは1960年代初頭から外来種駆除取り組んでいるパイオニアで、その技術は飛躍的に向上しています。害獣管理に関する知識は、主にキウイの保全活動の経験により過去10年でも大きく向上しており、この傾向は今後も続くものと想定されています。

Predator-Freeイニシアティブは全国から支援を得ており、コミュニティの保護団体、地元のマオリのコミュニティ、慈善家、一般のニュージーランド人から大きく歓迎されています。

規模と広がりの両面で、キウイの復活はニュージーランドにおけるもっともユニークかつ成功を収めた保護活動の一つです。キウイ復活グループは僅か3人の創立者から始まり、マオリ、捕獲管理担当者、独立の研究者、コミュニティの代表を含むまでに拡大しました。同グループは復活計画を作るだけでなく、活動の実施方法について自然保護局やフィールドでの保護活動家に定期的に専門的な助言を行ってます。

活動は、北は北島の北端から南はスチュワート島にまで及び、数百人もの多様なステークホルダーが積極的に参加しています。それは5種すべてのキウイに利益につながるもので、次回のレッドリストの更新時には、他のキウイも絶滅危惧度が下がる可能性が大いにあります。

この愛すべき象徴的な鳥は、ニュージーランドの生態系すべてに利益を与える技術と環境復元の進歩の触媒の役割を果たしてきました。今やニュージーランドの名誉ある恐竜は、未来に目を向ける時が来たのです。

報告者: Kevin Hackwell, 森林・鳥類部門 保護活動主任アドバイザー

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