鳥の巣いろいろ
「レンズを通して」婦人画報誌2026年4月号
写真・文=高円宮妃久子殿下
協力[画像編集]=藤原幸一(NATURE’S PLANET) 編集=桝田由紀(婦人画報)、バードライフ・インターナショナル東京
春から夏は、 多くの鳥の繁殖時期です。鳥は卵を産み、体温で温め、ヒナを孵化させますので、ごく一部の鳥を除き、そのための特別な巣を造ります。その巣の材料や形、巣を造る場所は、実に多様です。そこで、今回は、鳥のさまざまな巣をご紹介いたします。
最初はアオサギの巣です。アオサギは通常、河川敷や海岸近くの高木の上部に皿状の巣を造りますが、この巣は崖の地面に造られたとても珍しい例です。鳥にとって巣を造る場所は安全であることが最も重要ですので、この例は安全であれば地面でも良いという鳥の融通性の一端を示すものと言えましょう。

アオサギ 95cm サギ科
通常、高木の上部に巣を造るので、実際に卵を見たのは初めて。
この珍しい崖の営巣地は見下ろせる場所にあり、青い卵やヒナたちの可愛い姿がよく見えた。
© HIH Princess Takamado
その下の写真(web上では下の写真)は高木の上に造られた典型的なアオサギの巣です。雄が雌に長い枝を渡しています。このペアは産卵前でしたが、近くの別の巣では、抱卵中の雌が渡された枝で巣の補強を行っていました。
次はアカゲラの掘った巣穴です。嘴を使って雌雄で掘りますが、枯れ木、または腐朽菌などにより内部が柔らかくなった木を選びますので、樹木を大きく傷めることはありません。巣は入り口から水平方向に掘り進み、その後に垂直方向に掘り下げます。毎年新しい穴を掘りますので、使われなくなった古巣は、他の鳥の巣として使われます。
下の写真はカイツブリの浮き巣です。池の浅い場所に生える植物や水中の水草、水面に垂れ下がった木の枝などを利用して造ります。巣は水位変化に対応して浮き沈みはしますが、流されないよう、周囲の植物の茎に繫ぎ留められています。

カイツブリ 26cm カイツブリ科
水位が上がって、巣が水没した場合でも、諦めずに新しい巣材を積み重ね、繁殖を続ける。
また、カイツブリは巣を離れるとき、周囲の水草で卵を覆い隠す習性がある。
© HIH Princess Takamado
小さな写真(web上では下の写真)は巣材のコケをくわえたヤマガラです。自分では巣穴を掘れませんので、自然の樹洞やキツツキの古巣に巣材を敷き詰めて、巣として利用します。
そして次のページの右上の写真(web上では下の写真)は泥を運ぶイワツバメです。イワツバメは、泥に枯れ草などを混ぜて巣を造ります。
このページの右下の写真(web上では下の写真)は、海岸の断崖絶壁にある岩棚に営巣しているハヤブサです。この4羽のヒナが大きくなり、羽ばたきの練習などを始めると、巣から落ちてしまわないか心配になりました。

ハヤブサ 雄41cm 雌49cm ハヤブサ科
営巣の場所として、外敵が近づきにくい、目前が開けた場所を好む。近年では都市部の高層ビルや鉄塔などで営巣する事例が増加している。
© HIH Princess Takamado
最後の写真はエナガの巣です。今回、ご紹介した鳥の巣の中では最も精巧にできています。コケをクモの糸で固めて袋状に造り、最後にたくさんの鳥の羽を集めて中に敷き詰めます。平均で9個の卵を産みますので、ヒナが育つと巣が膨らんでくるのがわかります。
最後にひと言。先日、友人に「鳥は越冬先にも巣を持っているのか」と聞かれました。鳥の巣は人の「家」と違い、そこに住んでいるわけではございません。繁殖と子育てのためのものです。念のため……






