アジアの沿岸性湿地を保全するためにバードウオッチャーが集合

毎年、繁殖地のアラスカから越冬地のニュージーランドの間に広がる11,700kmの太平洋の大海原を10日間ノンストップで飛ばなければならない鳥を想像してください。春には渡り鳥は二つの飛行に分けて北へ帰ります。まずニュージーランドから中国へ(10,300km)飛び、次に黄海に接する豊かな干潟で1ヶ月間掛けて体力の補給を行い、そして次の6,500kmを飛んでアラスカに帰るのです。これは東アジア-オーストラリア・フライウェイを通るオグロシギにとっては毎年恒例のことなのです。では、このように大切な中国や韓国の干潟が突然無くなってしまったらどうなるかを想像してください。

鳥と野生生物の保護に関係する世界最大のフェアが今年はアジアの豊かな干潟に命を委ねている数百万羽の渡り鳥を救うために資金を集めています。今週末にラトランド・ウォーター(英国)で開催されるバードフェアは様々な人から‘その年の国際的な野生生物のためのイベント’あるいはより率直に‘バードウオッチャーのためのグラスストーンベリー・フェスティバル(英国で毎年開催される世界最大のロック・フェスティバル)のようなイベント’と呼ばれています。

今年のバード・フェアが支援する渡り鳥は、北極圏ロシアやアラスカからオーストラリアやニュージーランドに伸びるルートに沿って、途中およそ22の国々を通過して、高緯度地方から太平洋の熱帯の海岸までの壮大な旅をします。5千万羽を超える渡り性水鳥が毎年このフライウェイを利用します。絶滅危惧ⅠA類のヒガシシナアジサシやヘラシギなど22種の渡り鳥の実質的な総個体数がこのフライウェイに生息しています。しかし、彼らが依存している沿岸性生息地は今驚くべき速さで失われつつあり、多くの種の個体数が急速に減少しています。

絶滅危惧ⅠB類のカラフトアオアシシギの生息域のほぼすべてがこのフライウェイに限られている

このフライウェイ上の国々は世界人口の3分の1以上を有し、そのほとんどが経済の力強い成長期にあります。このことが都市化、工業化、農業および水産養殖などによる沿岸湿地の保全に対する大きな圧力となっています。最近のIUCN(国際自然保護連合)の研究によれば、過去50年間に中国では沿岸湿地の51%が、日本では40%が、韓国では60%が失われたとされています。この急激な湿地の喪失は、多くの沿岸開発計画が進行中あるいは計画されていることから、少なくとも近い将来に亘っては続く可能性があります。その他の脅威としては公害、持続不能な狩猟、魚貝類の採取などがあります。

「バードフェアが資金を支援する予定のプロジェクト・サイトでの重要な活動の一つは、湿地環境の保全と管理に地域のコミュニティを動員することです。」とバードライフの保護部長のリチャード・グリメットは言いました。「これは地域保護グループ(CCG)すなわち保護地域管理者や地方政府当局の活動を支援する、しばしばボランティアで構成されるサイトをベースとする地域の利害関係者グループの能力を確立することにより達成されるでしょう。このような組織はすでにマレーシア、タイ、ベトナムの幾つかのプロジェクト・サイトで始まっています。」

バードフェアの共催者マーチン・デイビーズは「バードライフの組織とLCGは計画サイトで保護区および地方政府と共にパートナーシップを築くことを求めており、それにより水鳥の生息地の保全と管理を強化する助けとなるでしょう。今週末にバードフェアに参加する人は皆このようなマラソン的な旅をする鳥たちにとっての特別な場所を守る助けを行うことになるのです。」と付言しました。

8月17日(金)~19日(日)に開催される今年のバードフェアは第24回目で、エグレトン自然保護区(英国中東部)で行われます。フェアの共催者は今年のイベントは過去最大規模になると期待しています。フェアの開会はミャンマーの駐英大使Kyaw Myo Htu閣下により行われます。ミャンマーは多くの絶滅危惧種を含む数万羽の水鳥の重要な越冬地なのです。

このフェアは世界的な保護プロジェクトに資金提供をしてきた長い歴史があります。1989年の開始以来、フェアは280万英ポンド(約3億5千万円)の資金を調達し、南海でのアホウドリの保護からエクアドルやインドネシアでの熱帯雨林保護などいろいろな保護プロジェクトを支援してきました。

2011年のバードフェアではヨーロッパとアフリカ間の渡り鳥に支援金を集中しました。その時には22,000人の参加者があり、185,000英ポンド(約2,300万円)を集め、主要な西アフリカ諸国(ブルキナファソ、ナイジェリア、ガーナなど)のバードライフ・パートナーを通じて注目される保護プログラムの開発と保護活動に資することができました。

 

 

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