衝撃と・・・・理解: 鳥の密猟に終止符を打つための戦略
疲れ切った渡り鳥が鳥もちに捕まり、喉の渇きと疲労に苦しんでいます。カスミ網にからまり、絞め殺され、毎年数百万羽の鳥が繁殖地に辿り着く前に虐殺されています。エジプトの市場では翼の折れたカモやムクドリモドキが生きた状態で商人の背中に乗せられて運ばれ、やがてナイフで殺されます。数えきれないほどの猛禽類やコキジバトなどの他の渡り鳥も籠の中で自分の運命を待っています。皆様の多くが地中海地域における鳥の密猟の実態を生々しいビデオでご覧になったことでしょう(3日間で視聴者数が3百万人に達しました)。
このビデオは5月10日の「世界渡り鳥の日」に渡り鳥の密猟と違法取引に対する認識を広め、行動への支援を集めるためにリリースされました。
警告:このビデオは子供に見せるのは好ましくありません。
けれども、これを見せることがどれほど厳しいことであっても、私たちはそうせざるを得なかったと考えています。
その理由は、変化のために政府や人々に単にショックを与えることではありません。保護活動にはそれ以上に多くのことが求められています。例えば、密猟に生計を委ねている人々はどうでしょうか?彼らも生きて行かねばなりません。
保護活動にはまず初めに理解が必要となります。今回のケースでは密猟を後押しする社会・経済的な要因の理解が必要です。毎年推定6百万羽が違法に殺されるエジプトは、イタリア、レバノンと並んで渡り鳥にとって地中海地域で最も危険な場所の一つです。何故でしょうか?この質問に答えるために、先述のビデオの他に、衝撃的な発見を報告する新しい研究成果を発表しました。
バードライフと共同でネーチャー・コンサベーション・エジプト(同国のバードライフ・パートナー)が発表したこの研究は鳥の殺傷と罠猟の75%以上が違法であることを明らかにしています。論文の著者であるネーチャー・コンサベーション・エジプトのSalwa Elhalawani博士は次のように言っています。
「この研究はエジプトの地中海沿岸での密猟の規模を明らかにしています。けれども最も重要なのは、私たちが密猟者の素性を明らかにし、彼らを密猟に走らせる社会・経済的背景を示したことです。それにより私たちは今後、鳥だけでなく彼らを一緒に支援する取り組みを推進することが出来るのです。」
現実的には、鳥を販売することによる経済的価値が動機である‘商業ハンター’に対しては、鳥を貴重なタンパク源としている‘最低限の生活のためのハンター’や楽しみや習慣として鳥を撃つ‘レクリエーション・ハンター’とは非常に異なる戦略が必要になるでしょう。
この研究にはこの‘狩猟コミュニティ’に関する情報も多く含まれています。捕えた鳥を自己消費に回しているのは彼らの僅か7%だけです。ほとんどの鳥は市場で売られます。私たちがインタビューをしたハンターのほぼ3分の2が初等教育を受けただけか、全く教育を受けていませんでした。ハンターの半数以上が所得の50%以上、21%のハンターが所得の75%以上を密猟で得ていました。
研究は幾つかの‘分かりきった’情報(ほぼ半数のハンターは漁民で、大家族で生活している)だけでなく、予想外の事実も報告しています。密猟者のほぼ20%は公務員で、恐らく狩猟法についてもよく知っている人たちだったのです。法律とその施行が重大な問題なのです。ほぼ全てのハンターが違法と知っていながらカスミ網(100%)やバード・コール器具(85%)を使っています。
ネーチャー・コンサベーション・エジプトの上級コーディネーターのNoor A.Noorは次のように言いました。
「この研究は‘責任ある狩猟プログラム’により行われる科学的調査に必要な情報を提供しています。密猟の背後にある人的要因への理解を深めることにより、私たちは地元コミュニティと共同で持続可能なやり方を推進するための適切な取り組みを推進することができるのです。」
バードライフの保護活動専門家であるClaire Thompsonはこの研究を「地中海地域での鳥の密猟をなくすための、より戦略的で全体的なアプローチである」と明らかにしています。
政府と協力すること、警察力の行使、コミュニティの教育等々この研究で推奨されている解決策の範囲は多岐にわたっています。それらは有効でしょうか?ほどなく結果が分かるでしょう。
この研究はエジプトでの渡り鳥の密猟に取り組むための広範囲の行動計画の一部を形成しています。より詳しくはこちら。
報告者: Luca Bonaccorsi