エネルギー施設の迷路を通る渡り鳥
ヨーロッパの夏が秋に変わるのに伴い、数百万羽の鳥がアフリカを目指して渡ります。彼らはエジプト、エチオピア、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、サウジアラビア、スーダン、シリア、イエメンなど紅海とリフト渓谷を通る世界で2番目に大きな帆翔鳥のフライウェイを利用します。これらの地域の多くは人々の間の不穏と争いにより常にニュースに登場しますが、渡り鳥にとっても障害のない通路ではありません。
農薬による被毒、生息地の破壊、狩猟、廃棄物の投棄など全てが渡り鳥への脅威となります。エネルギー生産が彼らを益々危険に晒していることを知れば更に驚きでしょう。
電力需要の増加と共にクリーンで安全なエネルギーへの転換が急がれていることにより、アフリカ地域で5年の間に再生可能エネルギー開発を支えるために5百万キロメートル以上の新しい送電線の設立が計画されています。これらの政策は本来意図するところは望ましいのですが、場所と設計が間違ったエネルギー・プロジェクトは帆翔性渡り鳥にとって危険なものになりかねません。例えば‘キラー電線’として有名なスーダン港の送電線は撤廃されるまでに数百羽、恐らくは数千羽のエジプトハゲワシを感電死させました。
フライウェイ沿いに間違った位置に建てられた風力発電施設の累積的影響は全個体群に生き残る可能性を危うくさせかねません。ですから保護活動は問題が起きてから対応するのではなく、施設の計画段階から鳥の安全が完全に考慮され、組み込まれているような積極的なものにする重要な機会なのです。
施設の危険性は渡り性帆翔鳥にとってより危険です。これらの種は上昇気流を利用することにより常時翼を羽ばたかずに前進することが出来ます。その結果、彼らの渡りのルートは陸地と結びついており、ルート上には紅海地域のような重要なボトルネックが出来るのです。これは空の狭い回廊を飛ぶ鳥の交通渋滞のようなものです。このため不注意なエネルギー設備の建設は鳥への危機を増加させるのです。
エネルギー分野の脅威はこれだけにはとどまりません。鳥が越冬地に到着しても、彼らはバイオ燃料の需要を増加させる再生可能エネルギー政策による自然環境の破壊あるいは劣化に直面します。ケニア、ガーナ、モザンビーク、タンザニアなどの国々ではバイオエネルギーのために原産ではない樹木や穀物のための新しい農場が作られており、東アフリカ全体の自然の生態系に影響を与えています。
これらの全てが紅海を通ってアフリカに向かう数千羽の渡り鳥を守るためのバードライフの活動の中心課題であることの理由です。それはUNDP(国連開発計画)とGEF(地球環境基金)の支援によりバードライフが主導し、実施しているUNDP/GEF‘渡り性帆翔鳥(MSB)’プロジェクトで取り組んでいる重要部門の一つです。このプロジェクトはエネルギー・プロジェクトの計画と開発は帆翔鳥への悪影響を最小化する方法で行われるようにすることが目的です。
MSBプロジェクトの一部として、異なる利害関係者のグループに対して数多くの持続可能な開発に関するガイドラインが策定されており、すでにその結果が出ています。スーダン政府とBSPB(ブルガリアのパートナー)の協力により、スーダンの‘キラー電線’の断線が行われ、鳥に安全な新しい絶縁電線に取り換えられました。鳥や野生生物にとって重要な同地域のセンシティビティ・マップ(環境の変化への感受性を示した地図)が作成され、これは新規のエネルギー・プロジェクトの計画に利用することが出来るもので、またエジプトの新・再生エネルギー局との協力関係も強化されました。
ケニアと欧州のバードライフ・パートナーは欧州市場向けのバイオディーゼルを生産するためにケニアのDakatchaの生物多様性に恵まれた5万ヘクタールの森林の伐採計画を止めました。DakatchaはIBA(重要生息環境)の一つであり、この土地に生計を依存している数千人の住人の拠り所です。
しかしながら私たちが将来のエネルギー需要を確実に環境に安全な方法にするためにはまだ多くのやるべきことが残されています。
報告者: Sini Erajaa
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