ルーマニアの狩猟法が野鳥の脅威となり、EU野鳥指令にも反する
ルーマニアで春季の狩猟と私有地への立ち入りを認める法律が認可されようとしています。この法律はEU野鳥指令と生息地指令に違反することが明らかなだけでなく、ルーマニアの国民にも重大な影響をもたらします。バードライフ・ルーマニアと他のNGOがこの法律の制定を阻止するために戦っています。
非常な速さで進められているこの新しい法律は春の渡りのシーズンに野鳥を殺すことを認めるのでEU野鳥指令に違反します。この時期は渡り鳥にとって繁殖に向かう重要な時期で、彼らが繁殖を行い個体数が増加する前に殺してしまうことは全く理に叶っていません。この新法は狩猟期を春の渡りの時期を含めて3ヶ月延長するもので、ガン・カモ類を主とした18種を対象にしています(欧州の希少種オナガガモとシマアジを含む)。これは特に対象種に含まれていない絶滅危惧種アオガンなどが対象種と一緒に群を作り偶発的に殺される恐れがあります。
新法が適用される18種のうちの一つにヒバリがあります。ヒバリはルーマニアで最も愛されている鳥の一つで、世界中の多くの偉大なミュージシャンにインスピレーションを与えて来ました。その囀りが人々を魅了するところからルーマニア人は素晴らしい歌手に‘ヒバリ’というニックネームを付けるほどです。ヒバリは現在ルーマニアと他の5つのEUの国(ギリシャ、キプロス、イタリア、フランス、マルタ)で狩猟が認められています。けれどもヒバリの欧州での個体数は1980年以降約50%減っているので、狩猟期を延長すれば状況の悪化につながるだけです。またハンターがヒバリを捕るという名目で実際には他の保護種も殺してしまうことが知られています。
この法案は土地所有者の権利に対する攻撃でもあります。もし法案が通過すると誰もが所有者の許可なく個人所有の土地に野鳥を追って入り込むことが出来るようになります。政府による何とも弱い論拠は野生の狩猟動物は国の所有物なので、これを追っている人は誰でも土地所有者の同意なしでどこへでもターゲットを追いかけて行くのが認められるべきだと言うものです。これはNGOや各種基金が野生生物を保護すると言う明確な目的で土地や森林を購入したことに対する少々皮肉なことです。この法案は‘ナチュラ2000’保護区のようなルーマニア内の鳥と自然を守ることを想定されている場所にも影響があります。即ち狩猟の自由化がこれらのサイトを台無しにする可能性があることです。
もう一つ注目すべきなのはこの法律はルーマニア人の狩猟のルールを変えるだけでは済まないということです。法案が可決すれば外国からのハンターに対する全ての規制も実際には撤廃され、彼らが野鳥を追ってルーマニア内の誰の土地にでも踏み入れることが出来るようになります。これまでのところ、外国人は土地所有者または当局から狩猟をするために土地に入るには招待状を必要とされていました。ルーマニアでは鳴禽類の鳥が既に大量に捕られています。特にそのためにルーマニアにやって来るイタリア人による狩猟が顕著です(注: 主として伝統料理の食材として)。もしこの法案が可決すれば鳴禽類の大虐殺につながるでしょう。
「2009年にイタリア人ハンターが狩猟対象種ではないカンムリヒバリを2000羽も持っていたことにより警察に逮捕されました。2010年には15人のイタリア人が1000羽以上のヒバリ、カンムリヒバリ、ウズラを捕まえたために逮捕されました。2011年にはルーマニアで捕獲された11,000羽を超えるヒバリがイタリアへの出荷直前にハンガリーの国境で押収されました。2013年には一人で5,400羽ものヒバリを持っていたイタリア人ハンターが逮捕されました。このような状況が続けば私たちは鳴禽類の囀りを博物館でしか聞けなくなってしまいます。」とルーマニア鳥学会/バードライフ・ルーマニアの広報担当Ovidiu Bufnilăは言いました。
私たちのパートナー、バードライフ・ルーマニアはその会員や他のNGOの支援を得て、このようなことが起きるのを黙って見逃すことはありません。彼らは議会に対して自然は大切なものでありルーマニア人は彼らの鳴禽類が虐殺されるのを黙って見ていることはないというメッセージを送るキャンペーンを主導しているところです。
(報告者: リサ・ベネデッティ)
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