新しい調査により、EUの保護区が野生生物の気候変動への適応を助けることが示された
地球温暖化は野生生物にさまざまな影響を与えており、その一つが種の個体群の地理的分布の変化です。バードライフの専門家を含む16カ国の科学者が集めた新しい調査がEUの特別保護区(SPA)が分布の変化を助長することを示しています。
科学雑誌“Diversity and Distributions”(多様性と分布)に公表されたこの研究は、欧州では稀で保護の対象になっているカモの1種ミコアイサ(写真)に的を絞っていますが、その越冬個体群が最近25年間の穏やかな冬の気候により欧州の北東方向に分布が変化しています。
著者の一人、フィンランド自然史博物館のDiego Pavón Jordánによれば、「20年前には6%だったことに比較して、現在はミコアイサの全個体数の3分の1がヨーロッパ北東部で越冬しています。さらに、この地域での個体数増加率はEU野鳥指令のSPA内ではSPA外と比較してこの25年で2倍も速くなっています。」と言っています。
この発見は、特別保護区(SPA)および良く設定された保護区のネットワークが種が新しい分布に適応するのに伴い、最良の条件の生息地を守ることにより、生物多様性に対する気候変動の影響を緩和するのを助けることを確認しています。今回の結論は1990年以来の16カ国からの‘国際水鳥センサス’からのデータに基づいたものです。
けれども今回の結論はEUの特別保護区(SPA)のネットワーク、特に北欧のそれに重大なギャップがあることも明らかにしています。多くの国がSPAを定めたのは20年以上前のことで、当時は現在のような急激な環境変化は考慮されていませんでした。ラトビアとスウェーデンで越冬するミコアイサの8割以上、フィンランドではほぼ全数がSPAネットワーク外で越冬しているのです。
今回の発見は、もう一人の論文共著者のフィンランド自然史博物館のAleksi Lehikoinenを次のような提案に導きました。「気候変動による分布の移動は今後も続くので、SPAネットワークの更新はミコアイサだけでなく他の多くの種にとっても至急必要です。それはこれらのネットワークの効率と種の保護状態を維持するためです。」
地域全体の総合的な保護区のネットワークを維持することはEU野鳥指令やナチュラ2000ネットワークの究極の目標ですが、この目標を達成するにはより多くの活動と資源が配分されなければなりません。
(報告者:エロディー・カンタルーブ)
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