ヨーロッパで122ヶ所もの自然環境の重要なサイトが破壊の危機にある
バードライフ・インターナショナルの新報告書によれば、地球上で自然にとって最も大切なサイトのうちの350ヶ所以上が永遠に失われると危惧されています。
‘重要生息環境(IBA)’は鳥類や他の自然を保護するために国際的に重要な場所のことで、世界中で12,000ヶ所以上が特定されています。バードライフの科学者が作成した新しい報告書ではその中の102ヶ国の35ヶ所におよぶIBAが失われる恐れが差し迫っていると特定されています。そのうちのおよそ半分は法的に保護されており、これは保護区の管理効率改善の重要性を際立たせるものです。
「“危機にあるIBA”のリストは政府、開発機関、国際環境保護条約、企業および幅広い市民社会に対して国際的に重要なこれらのサイトが今以上に損傷あるいは失われることを避けるよう行動するための最重要点を提供するものです。」とバードライフの科学・政策・情報部長のメラニー・ヒースは言いました。「私たちはIBAに対する脅威を減らし、開発の初期段階で環境保護が確実に行われるように国や地方の法律と政策の実施を強化し、同時にこれらのサイトの管理強化が行われるよう共に活動しなければなりません。」
新しい報告書「IBA: 自然を守り人々に利益をもたらす世界的ネットワーク」は、IBAへの多くの脅威を明らかにし、バードライフにより指定されたIBAネットワークがどのようにして優先サイトに目標を置き、多くのサイトが公的に保護区の指定を得たことで保護活動を助けたかを示しています。
‘危機にあるIBA’は国際的に重要な湿地56ヶ所以上と重複しています。これらのエリアは無料で水処理や洪水からの防御を提供し、また周辺住民の生計を支えます。
欧州には122ヶ所の‘危機にあるIBA’があり、その大部分が緊急な保全と管理を必要としています。これらのサイトに最も影響を与えるのは持続可能でない方法による農業と水産物養殖で、これに続くのがエネルギー生産、鉱業、公害および外来種です。スペインのサ・コニリェラ、ブルガリアのカリアクラ、ワッデン海(デンマーク、ドイツ、オランダに跨る)などがEU圏内で最も危惧される‘危機にあるIBA’です。
サ・コニリェラはバレアレス諸島(スペイン)に最後に残された未開拓の島の一つで絶滅危惧IA類のBalearic Shearwater(和名未定)の重要なコロニーがあります。同IBAはスペイン及びEU法により保全されています。ところが、島の灯台をホテルにする計画があり、もし実行されればコロニーに重大な影響を与えます。SEO/BirdLife(スペインのパートナー)はこの議論を呼ぶ計画を撤回するよう当局にロビー活動を行っており、また環境に配慮した教育と調査活動を続けています。
カリアクラIBAはブルガリア北部の黒海沿岸に位置し、絶滅危惧IB類のアオガンや他の多くの種にとって重要な場所です。同IBAは現在採鉱活動とエネルギー・インフラ開発による脅威を受けており、これらは生生物に対して永久的で後戻りできない影響を及ぼします。
デンマークからオランダに広がる広大な沿岸性IBAのワッデン海は世界最大の沿岸湿地です。ここは欧州で最重要な水鳥のための湿地で、また東大西洋フライウェイにおけるシギ・チドリ類の重要な中継地です。推定1,200万羽の鳥が生きるためにここに依存しており、これがワッデン海が2009年に世界遺産に登録された主な理由の一つです。バードライフパートナーのDOF, NABU, VBNが公害、船舶およびレクリエーション活動の脅威を受けているこのエリアの保全と振興を目的に共同で活動を行っています。
バードライフ・ヨーロッパの保護活動ヘッドのIván Ramírezは「IBAはバードライフの活動のバックボーンです。‘危機にあるIBA’リストは世界で最も危惧されるサイトを守るための呼びかけです。欧州にある122のIBAのそれぞれが注目、投資、適切な管理を必要としています。これらのサイトを守ることこそが多くの危惧種を守るだけでなく将来世代のために私たちの遺産を守る道なのです。」と言いました。
1970年代末のIBAプログラム開始以来、バードライフは世界120のパートナーと共に、正に世界中の陸と海で、この影響力のあるアプローチをサイトの保全のために使って来ました。IBAプログラムの鳥と生物多様性保護への大きな直接貢献に加えて、IBAに認定されたことでその直接的な結果として数百カ所のエリアが保護区に指定されました。IBAはまた生息地喪失、生態系の劣化、持続可能な資源の利用および気候変動などの多くの環境問題への対応によりこれまでにも様々な関連性を持って来ており、それはますます増大しています。
報告者: エロディー・カンタルーブ
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