アンデス高地の動物の避難所: ポオポ湖とウルウル湖
ポオポ湖の面積は過去25年で50%も減少し、この地域の住民と水鳥に深刻な影響を与えていますがこの減少理由はまだ調査中です。このラムサール・サイトに不可欠な適切な管理のための行動計画が、現在作成されているところです。同計画は環境的特徴の変化を調べ、管理の効率性を測るモニタリングの必要条件を明確にします。それには利害の衝突の緩和、管理活動を実行するための資金調達、サイト間・組織間・利害関係者間のコミュニケーションを可能にすること、地域・国家・国際的政策の遵守を確実に行うことなどが含まれます。
生物多様性に対するポオポとウルウルの重要性
ラムサール・サイト‘ポオポ湖とウルウル湖’はボリビアの標高3,700mのアンデス高地にあり、面積はおよそ967,000ヘクタールです。二つの湖は共に‘ポオポ湖、リオ・ラカ・ハウイラIBA’の一部となっています。ポオポ湖はペルーにも跨っている最大の湖チチカカ湖に次ぐボリビア第2の湖です。一方、ウルウル湖はポオポ湖に注ぐデサグアデロ川に沿った位置にあり、二つの湖は製造業や鉱山業のあるオルロ県の首都オルロ市に隣接しています。
両湖は流出する大きな川がない内陸湖で、特に乾期(5月~9月)にはアンデスフラミンゴの重要な生息地です。この時期にはコバシフラミンゴ、アンデスフラミンゴ、チリーフラミンゴの全個体数の相当数がアンデス南部から渡ってきます。湖の面積は広く、アンデス南部の気候が良くなるまでの間の数ヶ月これらの種がここで共存することが出来るのです。一方北部が冬の間の(11月~3月)雨季には新北亜区の渡り鳥がやって来ます。しかし2007年以後、これらの種の個体数に劇的な減少が起きていることが分かりました。減少の原因は究明中ですが、暫定的な結論としてはポオポ湖の面積の減少と湖岸への廃棄物の蓄積により鳥が利用できる環境が失われたことによると示唆しています。
脅威と解決策
残念ながら野鳥にとって大変重要であるにもかかわらず、このラムサール・サイトにはこの地に与える脅威を減じ、管理するための行動計画がありません。これを埋めるために米国魚類野生生物局の‘新北亜区渡り鳥保護法’により資金が提供され、理論・応用生物学研究センター(BIOTA)とアルモニア協会(ボリビアのパートナー)が実行を担当して“ラムサール・サイト‘ポオポ湖・ウルウル湖’における新北亜区の渡り鳥重要生息地の保護”プロジェクに取り組んでいます。このプロジェクトでは湿地の現状分析、地元の関係者や自治体の連携による行動計画、湖の面積減少による水鳥生息地の喪失分析、および、湖の自然の品質を保全することの重要性について住民の認識を向上させることによる再生計画を実行する道を探ります。
これまでの調査結果の中で最も驚くことは、僅か25年の間に起きた湖の面積の減少でしょう。何とポオポ湖はほぼ全体の50%に相当する約17,400ヘクタールも減ったのです。開水域での湿地帯の減少は主に気候変動によるものとされてきました。これは現在の水文学上の条件(高い蒸発率、少ない降雨、湖に注ぐ川の流れの減少など)と関連して湖の水位が上がっていないことを意味します。これによる塩分度の上昇と重なって湿地に依存する生物多様性に深刻な影響を及ぼしており、種によっては生存率の低下を招き、地元の経済へも大きな結果を及ぼしています。湖のサイズの減少はポオポ湖北部での採掘活動にもよります。湿地面積の縮小は渡り鳥の生息地が大きく失われることを示し、この影響は湖での定期的なバード・センサスの結果が分析されれば数値化された結論が出るでしょう。
湿地再生の側面活動の一部として、このラムサール・サイトの生物多様性に関する巡回展示会による啓蒙活動が行われました。これはポオポ湖とウルウル湖およびラムサール条約についての情報を示す11の可動式パネル、フラミンゴのビデオ、ボリビアの湿地、水のサイクルや役に立つリーフレットなどで構成されています。今日までに展示会は27か所の教育施設で開催され5千人の来客を迎えました。環境教育活動を通じて子供たちや先生からの関心が高いことから、プロジェクトの第2段階としてバードウオッチャー・クラブの設立が計画されています。
また、このラムサール・サイトに対する活動計画の準備が、同地域への脅威と圧力の明確化と、生態系サービスの早急なアセスメントに基づき進められています。活動計画には、サイトの管理およびサイトにおける特定の活動に対する公共・個人委員会の設立が考慮されています。それには基本的な地区割り、基本的な管理プログラム、湖の生物多様性と湖周辺の脅威に対する管理プログラム、コミュニケーションと教育プログラム、この地域の自然資源の持続可能な利用のための科学的調査の推進プログラムなどが含まれています。