もっとも絶滅リスクの高いペンギンはどの種でしょうか?
世界のペンギン18種のうちの10種が絶滅危惧種です。図解付きペンギンリストを見て、彼らの生息地や直面する脅威をぜひ知ってください。
美しく勇ましい・・・しかし危機に瀕している
私たちは「ケープペンギンを守る保護活動」を続けています。
「美しい」
たとえあなたの心がコンクリートミキサーのようにコチコチでも、コウテイペンギンの雛が寒さに身を寄せ合って耐えている姿や、コガタペンギン(別名リトルペンギン)の鮮やかな青い羽毛の輝きを見れば、心を奪われること間違いありません。
「勇ましい」
地球上にペンギンほどあらゆる困難に耐えて生き残る生物がいるでしょうか?彼らが地球に誕生して以来、この素晴らしい鳥は世界で最も厳しい海洋環境での繁栄を可能にする適応力を進化させてきました。彼らは海水を飲み、零下60度の気温にも生きることができ、驚くほど敏捷なスイマーです。ペンギンの多くは人が走るよりも速く泳ぐことができるのです。
けれども「危機に瀕しています」。
ペンギンはその環境にうまく適応していますが、その特徴を進化させるには数百万年もかかっています。人間活動は、ペンギンの生息環境に多大な影響を及ぼし、その速度はペンギンが適応するにはあまりに速すぎるのです。これが今、世界のペンギンの半分以上が絶滅の危機にある本当の理由です。
ではどの種が最も絶滅が危惧されているのでしょうか?
ここにバードライフの存在意義があります。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストの鳥類部門の公式評価員として、私たちの科学チームは全ての種に関するデータを定期的に見直し、分布、個体数、減少率などの基準によりそれぞれの種に脅威のレベルを割り当てています。7つの脅威のレベルは以下の通りです(下から上へ):軽度懸念、準絶滅危惧、絶滅危惧Ⅱ類、絶滅危惧ⅠB類、絶滅危惧ⅠA類、野生絶滅および絶滅です。
世界の18種のペンギンが、どこに生息し、どの種が最も危機にあるかについて以下をご覧ください。
オーストラリア&ニュージーランド(6種)
絶滅危惧度:絶滅危惧ⅠB類
残存個体数:3,400羽
面白情報:本種はマオリ語で‘騒音発声者’という意味の‘ホイホ’と呼ばれています。うかつに巣に近付けば、耳鳴りを誘発するようなトランペット音が命名の由来です。
直面する脅威:ニュージーランド南島の陸上では、外来種(フェレット、オコジョ、野良ネコなど)が捕食者です。海では多くが漁網に掛かり溺死していることが疑われています。外来種の根絶プログラムと植生再生プログラムが、種の減少を食い止めるために行われています。
絶滅危惧度:絶滅危惧Ⅱ類
残存個体数:63,000羽
面白情報:この冠毛のあるペンギンの英名 Snares Penguin は、ニュージーランドの南200㎞にある小さなSnares諸島から名付けられました。ここが唯一の繁殖地で、分布域も狭いため、何か事故が起きれば(嵐や油漏れなど)本種の危惧度は容易に絶滅危惧ⅠB類または同ⅠA類になりかねません。
直面する脅威:幸いにも島には外来種がいませんが、ここはイカ漁の大船団の場所でもあり、本種には餌をめぐる人間との競争があるのです。
絶滅危惧度:準絶滅危惧種
残存個体数:1,700,000羽
面白情報:冠羽のあるペンギンの中では、顔が白いことが特徴であるロイヤルペンギンは、マカロニペンギンの亜種と考えられることがあります。
直面する脅威:ロイヤルペンギンには陸生の捕食動物がいません。本種は、ユネスコの世界遺産でニュージーランドと南極大陸のほぼ中間に位置する、タスマニアの一部である岩だらけの島、マッコーリー島でのみ繁殖しています。今のところ、この島で活発に活動していますが、分布域が限られていることから将来的には海洋汚染、気候変動、過剰漁獲などが脅威となるでしょう。
絶滅危惧度:絶滅危惧ⅠB類
残存個体数:150,000羽
面白情報:アニメファンなら日本のアニメ「新世紀のエヴァンゲリオン」に出て来るキャラクター「ペン・ペン」が本種を模したことがお分かりでしょう。ペン・ペンの翼には爪がありますが、科学的に正確な発信機ではありません。
直面する脅威:データの不足により説明が困難ですが、本種の個体数が急激に減少していることから、原因を追究するための調査が急務です。繁殖地が確保されていることから、原因は海にあると思われ、恐らくは海洋の温暖化あるいは漁業との競合だと考えられています。
絶滅危惧度:軽度懸念
残存個体数:469,760羽
面白情報:背の高さがちょうど33㎝のこの非常に青い鳥は、ペンギン界最小です。不思議なことに、本種のコロニーは、首都ウェリントンなどのニュージーランドの都市部に作られています。
直面する脅威:コガタペンギンの都市生活への珍しいこだわりには、それに伴う独特の脅威があることを意味します。例えば、この可愛らしいペンギンが車にひかれないようにするため、ニュージーランドには「ペンギン横断中」の標識が立てられています。
絶滅危惧度:絶滅危惧Ⅱ類
残存個体数:5,500-7,000羽
面白情報:コガタペンギンは、ニュージーランド人の玄関でも時々見ることが出来ます。しかし、人里離れた所に住むキマユペンギンを見るには、南島の隔絶した起伏の多い熱帯雨林に足を踏み入れなければなりません。地元ではマオリ族の神様に因んだ「タワキ」と呼ばれており、神話によれば、「タワキ」は「みすぼらしい衣装を明るい所へ投げ捨てるまで」彼は自分が神であることを知らなかったのです。もう一度、キマユペンギンのボルトのような冠羽をご覧になれば、類似点がお分かりになるでしょう。
直面する脅威:ネズミやオコジョなどの外来の陸生動物が、キマユペンギンの卵や雛を食べることが脅威と考えられています。さらに、混獲など海での要因により、本種は僅か10年で30%も減少しました。
南大洋島嶼(3種)
絶滅危惧度:絶滅危惧Ⅱ類
残存個体数:1千万羽以上
面白情報:驚くことではありませんが、マカロニペンギンは数百万羽もの巨大なコロニーを作り、隣の仲間と喧嘩をすることは有名です。この怒りっぽい種は陸上での争いを嘴での取っ組み合いや翼による叩き合い交戦で解決します。
直面する脅威:喧嘩以外にもあるのですか?個体数の大きさにもかかわらず、本種の将来は安全とはかけ離れています。繁殖コロニーにおける外来種と病気の発生が個体数の減少を招き、またアザラシの個体数増加は本種を捕食するだけでなく、繁殖地への往復やコロニーの増加を困難にしています。
絶滅危惧度:絶滅危惧Ⅱ類
残存個体数:250万羽
面白情報:イワトビペンギンは鳴き声、採餌行動および分子レベルでの違いにより2008年にバードライフによりキタイワトビペンギンと(ミナミ)イワトビペンギンの2種の別種に分けられました。
直面する脅威:20世紀を通してキャンベル島とフォークランド・マルヴィナス諸島などで幾つかの個体群が長期にわたり減少しています。その正確な原因は不明ですが、気候変動が主要因で、食物の供給に影響を及ぼすだけでなく、嵐の多発が繁殖コロニーを襲うことが影響していると考えられています。
絶滅危惧度:絶滅危惧ⅠB類
残存個体数:不明
面白情報:キタイワトビペンギンとミナミイワトビペンギンの2種は似ていますが、簡単に見分ける方法があります。キタイワトビペンギンの方が過眼線の飾り羽が長く派手です。
直面する脅威:最近になって分離された2種の個体数と繁殖習性はまだ十分に分かっておらず、追跡調査が行われています。世界全体の個体数の85%もが離島のゴフ島とトリスタンダクーニャ島に限られて生息しているため、オイル漏れや嵐など一つの出来事が種の将来に壊滅的な影響を与える可能性があり、事実、起きたことがあります。
アフリカ(1種)
絶滅危惧度:絶滅危惧Ⅱ類
残存個体数:50,000羽
面白情報:アフリカ原産唯一の種で、騒々しくロバ似た声で鳴くことから、別名Jackass(オスのロバ)ペンギンとして知られています。
直面する脅威:人間による卵の採取が昔からの脅威で、1900年から1930年の間に1,300万個の卵が採取されました。1960年代までに個体数は30万羽に減少し、この数はイワシなどペンギンが好む魚の過剰漁獲によりさらに減少しました。ペンギンとその餌の食物網をつなぎ直す試みとして、現在バードライフ南アフリカが、魚の豊富な水域の近くに新しいコロニーを再建しようとしています。
南極(5種)
絶滅危惧度:準絶滅危惧種
残存個体数:595,000羽
面白情報:コウテイペンギンはペンギン類の中で、最も大きく、体重が重い種です。また身にしみる様な冬の南極で繁殖をする唯一の種です。彼らは零下60度まで下がる気温から雛を守るために数百羽で周りを囲い保護しています。
直面する脅威:今のところコウテイペンギンの個体数は安定していますが、気候変動予測によると、今後3世代のうちに20~29%の個体数減少が示唆されています。海氷の厚さが減少することにより、適切な繁殖場所を見つけることがより困難になるからです。
絶滅危惧度:軽度懸念
残存個体数:不明
面白情報:深さ300mまで潜水が出来るオウサマペンギンは、このような深い場所でイカやハダカイワシなどの発光生物を餌にしています。
直面する脅威:海の表面温度の上昇により、本種の分布域が南に向かい(南極方向へ)、インド洋北部のコロニーは餌を求めてさらに遠くまで行かなければならなくなります。
絶滅危惧度:軽度懸念
残存個体数:758万羽
面白情報:コウテイペンギンと共に南極大陸に生息する2種のうちの1種。ロス島のロイズ岬にあるアデリーペンギンのコロニーは、鳥の集団繁殖地の南限です。
直面する脅威:アデリーペンギンそのものの個体数は実は増加傾向にありますが、気候変動の影響を受けている場所では数が減っています。南極調査基地の増設と観光客の増加が一部のコロニーにおける繁殖に影響を与えています。
絶滅危惧度:軽度懸念
残存個体数:774,000羽
面白情報:水中での遊泳速度が時速36㎞に達する、ペンギン類最速のスイマー。
直面する脅威:フォークランド諸島・ラスマルビナスのコロニーで昔から行われている卵の採取が脅威です。また観光客による攪乱と島周辺でのオイル漏れが現在起きている懸念です。
絶滅危惧度:軽度懸念
残存個体数:不明
面白情報:2004年にニューヨークの動物飼育員が、雄のヒゲペンギン2羽がペアになり石を「孵そう」として抱卵していることに気付きました。飼育員が他のカップルから卵を取って来て石と交換したところ、2羽のオスはこれを抱卵して孵し、雛を育てました。この話は子供の本、「タンゴタンゴはパパ二人」となって永遠に伝えられています。
直面する脅威:南氷洋のオキアミが彼らの主要な餌ですが、このままの状態では人間による乱獲が脅威になる可能性があります。サウス・サンドウィッチ島のヒゲペンギンの大きなコロニー付近で最近起きた火山活動により、正確な数はまだ不明ですが、絶滅危惧度を引き上げるのに十分な数のペンギンが死亡しました。
アメリカ大陸(3種)
絶滅危惧度:準絶滅危惧種
残存個体数:不明
面白情報:本種は1519年にポルトガルの探検家フェルディナンド・マゼランの船団が南アフリカを通過した際に観察されたことから、マゼランペンギンと命名されました。マゼラン本人は旅を完遂する前に亡くなりましたが、この航海は人類初の世界一周の成功でした。
直面する脅威:気候変動と漁網に絡まることに加えてオイル漏れが主な死亡原因です。1980年代と90年代には毎年2万羽がアルゼンチンの沿岸で殺されたと推定されました。これはウルグアイとパタゴニア沖での原油採掘が計画されていることから現在も続く懸念です。
絶滅危惧度:絶滅危惧Ⅱ類
残存個体数:32,000羽
面白情報:本種を最初に発見した西洋人のプロシャの探検家アレクサンダー・フォン・フンベルトの名にちなんで、フンボルトペンギンと命名されました。
直面する脅威:過剰漁獲、外来種、生息地の喪失、開発などほぼすべての脅威が複合的に影響し、フンボルトペンギンの個体数を徐々に減らしています。
絶滅危惧度:絶滅危惧ⅠB類
残存個体数:1,200羽
面白情報:ガラパゴス諸島は赤道にまたがっていることから、ほんの少しですが北半球に進出した唯一のペンギンです。
直面する脅威:気候変動が主たる脅威です。世界で最も希少なペンギンは餌の供給を変化する海流に依存しています。長引く海水温の上昇期間が飢餓を招き、過去には回復するまでに数年を要した壊滅的な個体数の崩壊が起きたことがあります。世界的な気温上昇による飢餓の恒常化が増え、ガラパゴスペンギンの絶滅が心配されています。
報告者: Alex Dale
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