気候変動が絶滅危惧種への最後の一撃となる可能性
最新の研究によれば、絶滅の危機にある陸生哺乳動物の半分と鳥類の4分の1が気候変動の影響を受けていることが示唆されています。転換点を迎えてしまったのでしょうか?
気候変動への懐疑論が一部の政治グループで勢いを増してているようですが、もしあなたが世界で最も気候変動の影響を受けやすい生態系で暮らす動物であったなら、見て見ぬふりはしないでしょう。
バードライフの2015年の報告書「メッセンジャー」で述べられているように、気候は既に変化してきており、自然界に影響を及ぼしています。世界中の鳥類や哺乳類が高緯度地方に新たな生息地を求めて分布を移動したり、個体数や分布域を減らしたりしています。
地球温暖化によって、生物が拠り所にしている絶妙なバランスで成り立っている生息環境が撹乱されているのが原因です。分布域が変われば、食物連鎖、渡りのパターン、その他もろもろの広範な影響が生じます。
最新の追跡調査により、気候変動が既に危惧されている種にどのような影響を及ぼしているのかが今回初めて明らかとなり、地球上の生物多様性の未来にとって憂慮すべき結論が導き出されていました。
この調査は我々が気づいても居ないうちに気候変動が世界で最も絶滅が危惧される種に更なる影響を与えていることを明らかにしました。モデル解析によれば、世界的に絶滅が危惧される陸生哺乳類のほぼ半数(47%)と鳥類のおよそ4分の1(23.1%)が影響を受けています。これらの種の多くは既に絶滅の瀬戸際にあり、それが認識すらされていません。
この調査はローマ・ラ・サピエンツァ大学の「全世界哺乳動物評価プログラム」と共同でバードライフの科学者が行いました。その主な目的の一つは哺乳類や鳥類を危機に追い込む気候変動の特徴を明らかにすることでした。そのために調査チームは気候変動への哺乳類と鳥類の応答に関する100以上の研究を体系的に見直しました。
負の影響には繁殖成功率や生存率の低下、個体数の減少あるいは分布域の縮小などがあります。全体で1990年から2015年の間に公表された120種の哺乳類についての70の研究と569種の鳥類に関する66の研究が見直されました。
これらの研究を解析した結果、気候変動の悪影響を最も強く受けているのは、過去60年の間に降水量があまり変化していない一方で気温に大きな変化が起こった地域に生息する、巣穴を使わない種であることを発見しました。
この現象は、気温あるいは降雨量に典型的な季節変動がほとんど無い地域では、気候変動への耐性が弱い植物が生育するため、気候変動によりそのような植物が減少して別の植生に取って代わると、これらの植物に食性を特殊化している草食動物も影響を受けることで生じると考えられています。
この仮説はデータが裏付けています。カンガルー目(有袋類)、霊長類、鯨偶蹄目(ブタ、シカ、ウシなどの偶蹄類)および長鼻目(ゾウ)など主に草食動物が最も気候変動の影響を受けているのです。
鳥類もほぼ同じ要因で負の影響を受けているようです。また、鳥類は高緯度地方に生息する種ほど危機度が高くなります。気温が上昇しても彼らはこれ以上北に行くことができないという単純な理由です。
これらの結果から種の特性と気候変動への応答の関係をモデル化し、このモデルを世界中の絶滅危惧哺乳動物に当てはめました。それによれば、絶滅危惧哺乳動物の半数と鳥類の4分の1の種で、一部の個体群が既に気候変動の負の影響を受けている可能性が高いという懸念すべき予測に至りました。
「これは絶滅危惧種のうちの何種が気候変動の悪影響を既に受けているのかという初めての推定です。」とバードライフの研究者チーフでこの論文の共著者のStuart Butchart博士は言っています。「今回の結論は大きく警鐘を鳴らすもので、気候変動は多くの種にとって、既に起きている脅威を深刻化させ、保護上の課題を増大させてしまうことを示しています。」
この解析から、気候変動の影響が過小評価されていることは明らかです。気候変動による負の影響を受けている数百種のうち、IUCNのレッドリストで、気候変動および厳しい気候が理由で絶滅危惧種に指定されたのは哺乳類の7%、鳥類の4%に過ぎません。
これは、気候変動が既に困難と闘っている種に対する最後の一撃とならないようにに、保護活動家が現在実施している保護活動を再評価し、状況に応じて適応させることが急務であることを示しています。
報告者: Alex Dale