EUの生物多様性の次のステップとは?
生物多様性の喪失と生態系サービスの劣化(即ち、既存の法律の不十分な実施、生態系の劣化と喪失、持続不能な農業、持続不能な漁業、外来種およびEUのエコロジカル・フットプリント)に対する行動を起こすための、2020年までの‘EU生物多様性戦略’は、2010年に欧州委員会、欧州議会およびEU加盟国により承認されました。
これを達成するための時間はまだ4年あるのですが、EUと加盟国が正しい方向に進ませられるほど十分なアクションが行われたわけではありません。EUは以下の行動を起こす必要があります。
EU野鳥指令と生息地指令は種と生息地を守る上での優れた法制です。現在行われているいわゆる‘フィットネス・チェック’の結果、私たちはEU委員会と加盟国がナチュラ2000サイトを含め、これら二つの指令の実施と資金面の改善をすることを期待しています。
法的保護は現場での真の保護にならなければなりません。EU加盟国はサイトの保全を強化し、鳥の密猟に対する行動を起こさなければなりません。多くの種や生息地は望ましい保全状態に達するまでに数年あるいは数十年を要します。欧州の野生生物を回復するための基礎を築かねばなりません。
欧州委員会は‘グリーン・インフラ’(ナチュラ2000サイトを繋ぐために重要なエリアのネットワーク、洪水からの防御、人の活動により本来の生息地を失った種への新しい生息地の提供)の構築と劣化した生態系の15%の復元を達成するのに必要なリーダーシップを発揮することができませんでした。
去年までに復元のための国家政策の枠組みを構築した加盟国は僅か一国でした。あと数カ国が現在枠組みを策定しています。このような枠組みは加盟国における活動が目標を持ち、資金が良好に使われ、復元目標を達成するのに重要です。
次の5年間、農業はごた混ぜの状況となるでしょう。しかし分かっていることもあります。今年はいわゆる共通農業政策(CAP)の‘グリーニング(農作業をより環境に優しいものにする)’要素の実施初年度に関する欧州委員会報告がある予定です。また既存のCAP法制の単純化にも進展があるでしょう。疑問点は新CAPに設けられた抜け穴が塞がるのか、あるいは広がってしまうのかということです。
この法制は‘エコロジカル・フォーカス・エリア(EFA: 顕花植物が帯状に生育するゾーンのような、生物多様性の機能や野生生物を強化するには重要な農地の空間だが、ほとんどが農薬が施された作物に置き換わっている場所)を5%から7%に拡大する必要があるかどうかを判断する材料となる2017年報告を求めています。けれどもこのEFAの質については何も述べていません。
2020年までに‘持続可能な漁業’を達成することは単に漁業資源を持続可能なレベルに戻すということではありません。漁業が環境破壊をし続ける(例えば、漁網によるイルカや海鳥の偶発的‘混獲’)ことがないようにすることも含まれます。
問題を何年も無視した後にEUは漁業政策を改革しました。これは政治家が科学者の言うとおりに‘漁獲高’に上限を設けなければならないことを意味します。漁師は‘技術的’対策(例えば、鳥を脅して漁具から遠ざけるための器具を漁船に付ける)を行うことにより混獲を防がなければなりません。私たちは状況をモニターし、データを集め、全てが上手く運ぶように法制や計画を通して漁業手法の転換を進める必要があります。
EUが懸念する侵略的外来種の初めてのリストが採用されたことに伴い、加盟国は3年以内に外来種の意図しない侵入経路に対する行動計画を策定する必要があります。欧州委員会と加盟国は2016年に現在37種しか含まれていないEUの外来種リストを、現在はまだ侵入していないか侵入の初期段階にある種の防止に優先的に取り組み、リスク評価を利用して、一層の進展を図らなければなりません。これはバードライフ・ヨーロッパが科学者や自然保護活動家と共同で作成した影のリストを基に行うべきです。
より多くのEU加盟国が船舶のバラスト水および沈殿物の制御と管理に関するIMO(国際海事機関)条約を批准しなければなりません。この条約には海洋での外来種の侵入に取り組み、防止するための効果的な方法が含まれています。
欧州のリーダーたちは国際的な持続可能な開発目標を批准しましたが、最近導入された一連の循環経済施策は専門家から酷評されています。同施策は生物多様性に有害な農業への補助金を止める必要があります(これは今回が初めてではなく2014年に韓国で開催された国連生物多様性会議でも公約されました)。生物多様性と環境懸念を通商政策の中で主流化する取り組みをより真剣に行わねばなりません。欧州委員会は森林伐採と森林劣化に関してもEU行動計画を策定する必要があります。
欧州委員会は先頃野生生物の密売に対するEU行動計画を策定することを約束しました。これは至急進めなければなりません。
報告者: Sanya Khetani-Shah
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