近日発刊: スペインの渡り鳥の地図帳
野鳥保護の柱になるのは分布、個体数、個体群の傾向と規模などに関する知識です。多くの渡り鳥が見られるスペインのような国々では渡りのルートと中継地に関する情報も必要です。SEO(スペインのパートナー)は数千人のボランティアと共に、数十年に亘ってこのようなデータを収集するための活動を行って来ました。
SEOの‘野鳥モニタリング部門’は2011年にスペインで繁殖あるいは越冬する渡り鳥のそれぞれの種の動きを記述するために‘Migra(渡り)イニシアティブ’を始めました。これは特にどの種が長距離の渡りをするか、そのルート、中継地および越冬地を追跡することを意味します。短期的にはSEOはMigraのデータと過去の研究結果を用いてスペインの渡り鳥の地図帳を編集、発行することを目的としています。
衛生発信装置、GPSデータロガー、ジオロケーターなどのMigraの新しい標識システムは数年に亘り毎日鳥の位置情報を記録し、それにより渡り鳥が正確にはどのくらいの期間繁殖地および越冬地に留まるか、渡りを開始する時期、そのルート、渡りの速度と高度、気候変動と気象条件がどのように影響するか、鳥は毎回同じルートを辿るのかどうかなどを知ることが出来ます。
これらのデータはそのための装置に集積され、鳥を捕えること、短距離の場合は直接ダウンロードし、あるいはインターネット経由で衛星追跡システムにより回収することが出来ます(注: データの回収方法は装着した装置により異なる)。これらの装置には特有の難点と問題がありますが(データを回収するための鳥を捕獲は困難、装置が小型、軽量で空気力学的に耐えうるものでなければならないこと、バッテリーが数年しかもたないことなど)、これまで多くの重要な情報を提供して来ました。2011年以来、Migraは24種の332羽(うち98羽は今もデータを提供)の鳥のデータを追跡し、合計634,460もの位置情報(地図帳発行時点で)を提供しました。
Migraは鳥類の情報に欠けている部分も埋めてくれるでしょう。特定の絶滅危惧種や希少な種のデータや、多くの中型および大型種に関する数少ない情報や、事実上記録のない多くのスペインの小鳥の情報が入手可能になるでしょう。渡り鳥それぞれの種の習性を早急に知ることも重要です。この情報なしでは渡り鳥のこれまでの足跡を見失い、彼らの生態の変化を理解するための基本情報も入手出来なくなるからです。
最近の数十年で確認されたのは多くの種が毎年渡りの習性を変えたことです。その中の何種かは渡りの距離を短縮し、アフリカを越えません(シュバシコウ、ナベコウ、ヒメクマタカなどが地中海沿岸あるいはスペインのグアダラキヴィール川の下流域で越冬する数が増えています)。このような変化は少なくともその一部は気候変動の結果もたらされた温暖な冬と繁殖地での食物増加によるものと考えられています。
けれどもMigraは科学的調査にのみ有用なわけではありません。それは人が渡りという素晴らしい現象を理解するためのツールとしても利用できます。この目的でSEOはMigraのウェブサイトをスペインだけでなく、バードライフ・パートナー全体のヨーロッパ、アジア、アフリカに拡大することを提案しています。渡り鳥についてあまり良く知らない人たちに渡りと渡り鳥が直面する危険についての関心を広めることは大きな保護のためのツールになるでしょう。
報告者: Juan Carlos del Moral
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