エジプトハゲワシを救おう: まだ使命は果たせる。

エジプトハゲワシはもっとも小型のヨーロッパ唯一の渡り性ハゲワシで、
2007年に絶滅危惧ⅠB類に指定されました。
写真提供: Torsten Prohl

ハゲワシ類は美しい鳥とは呼べないかも知れません。彼らはその外見からしばしば悪口を言われ、密猟や毒殺の対象になりがちです。しかし彼らの有用性には文句の付けようがありません。

例えばエジプトハゲワシは動物の死骸を主食にしています。それは自然の廃棄物処理サービスで、病気のまん延を防ぐ重要な役目を担っています。本種はハゲワシ類の中で最小で、ヨーロッパでは唯一の渡り性ハゲワシで、2007年には生息域の大部分で個体数が減ったことから絶滅危惧ⅠB類に指定されました。

ヨーロッパではエジプトハゲワシはこの50年間に50%以上、バルカン諸国では30年間に80%以上減少しました。

 

なぜこのようなことが起きたのか

エジプトハゲワシのほとんどの個体群は渡りを行います。本種の東部個体群(バルカン諸国、トルコのアナトリア地方、中央アジア、中東で繁殖)はアフリカのサヘル地域(セネガル、モーリタニア、マリ、ナイジェリア、スーダン等々の諸国を通ってアフリカ大陸を東西に横切る広大な陸地)とアラビアで越冬するために数千キロの渡りの旅を行います。

一般的には大規模な脅威には以下のことが含まれます。土地利用の変化による生息地の劣化と食糧不足、畜産方法の変化、風力発電設備への衝突、農薬の使用、獣医学診療と衛生習慣の変化、野良犬の管理(狂犬病対策による)などです。これらのことが繁殖地だけではなく、渡りのルートや越冬地においてもハゲワシに悪影響を及ぼします。

けれども最も頻度の高い原因は偶発的な毒殺のようです。ハゲワシはキツネやオオカミなどの捕食動物を対象とする毒入り餌を食べてしまったり、毒殺された動物の死骸を食べたり、ハゲワシにとって有害な獣医薬で手当てをされた家畜の死骸を食べてしまうのです。

感電死も主な脅威の一つで、特に半砂漠地帯の越冬地では塒の場所が少なく、そのためハゲワシは電柱を塒にしてしまいます。スーダン港から紅海沿岸までの30キロに及ぶ通称‘キラー電線’は1950年代に建設されて以来数百羽あるいは多分数千羽のエジプトハゲワシを感電死させたと想定されています。

スーダン港の電線は昨年閉鎖されるまでは単一の原因としては最大の脅威だと考えられていました。UNDP/GEFの渡り性飛翔鳥プロジェクト、スーダン野生生物協会、BSPB(ブルガリアのバードライフ・パートナー)の協力およびスーダン政府と電力供給・送電会社の支援のお蔭で、電線が新しい完全な絶縁体の、鳥にとって安全なものに取り換えられたのです。

最近バルカン諸国で行った遠隔調査では若鳥のおよそ半数が初めての渡りで死んでいることが分かりました。その主たる理由は次善の渡りルートとして地中海を越えようとしたことで、それよりも軽度の理由としてはアフリカでの直接的な迫害(昔からの薬品としてハゲワシを使う)です。

 

現在何が行われているか

ブルガリアとギリシャでエジプトハゲワシを保護するためのLIFE+プロジェクトである‘エジプトハゲワシの復活’のパートナーであるBSPB(ブルガリアのバードライフ・パートナー)、HOS(ギリシャのパートナー)、WWFギリシャおよびRSPB(英国のパートナー)はCMS(移動性野生動物種の保全に関する条約)の‘猛禽類覚書’(アフリカ・ユーラシア全土で渡り性猛禽類の個体数減を反転させるための国際的協力活動を推進するもの)のメンバーと共同で7月にブルガリアのソフィアでワークショップを開催しました。

合計70人の保護活動家、研究者、33ヵ国からの代表が‘国際エジプトハゲワシ・フライウェイ行動計画’の策定のために参加しました。同計画は大陸を越えた協力関係と、エジプトハゲワシの世界の個体数の40%を守っているバルカン諸国、中央アジアとコーカサス地方、中東およびアフリカにおけるエジプトハゲワシの生存を確実にする保護対策の実施を導くでしょう。実際に、オマーンやイエメンなど数カ国では個体数が安定し、増加さえしています。

 

バードライフもエジプトハゲワシを含むアフリカのハゲワシ類が直面している脅威に取り組むべくパートナー団体と共に活動を進めています。10月にはアフリカのハゲワシ・キャンペーン’について更にご紹介する予定です。

報告者: Stoyan Nikolov

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