シーフード認証制度による混獲対策改善の必要性

トロール船により混獲されたアホウドリ 写真提供:© Albatross Task Force Argentina

新しい報告書によると、MSC(海洋管理協議会)の持続可能な漁業・水産物認証制度は、認証漁業における絶滅危惧種の混獲低減に一層取り組む必要があります。

よく知られているMSC(海洋管理協議会)のエコラベルの付いたシーフードは、消費者が考えているほどには持続可能なものではないかも知れません。バードライフの新しい報告書によると、MSCに認証されていることが、漁業による海洋性哺乳類、海鳥、ウミガメ、サメ、エイなどの偶発的な捕獲(混獲)対策への取り組みを保証するわけではありません。

MSCに認証された23の漁業に対して、バードライフは緑・黄色・赤に色分けされたシステムを用いて評価しました。緑は当該漁業が積極的に混獲を最小限にする活動をしていることが、効果的なデータ収集によって証明できることを意味します。黄色は対策が総合的とは考えられなくとも、混獲を減らすための何らかの取り組みがされていることを意味します。赤に評価された漁業は認証期間中に大きな変化がなかったことを意味し、管理対策が不十分、データ収集の不足、混獲のレベルが変わらない、または増加を伴う場合です。バードライフによる評価の結果は3つの漁業だけが総合的に緑、12が黄色、8が赤でした。

最も懸念されるのは、今回調べた漁業のうち明確に混獲のレベルを持続的に減らしていることを示したのが僅か1つであったことです。7つの漁業では認証期間中に混獲のレベルが増加したか変化がなかったことが分かりました。これは場合によっては認証によりデータ収集が改善された結果ですが、全体的に混獲レベルの減少が見られなかったことが懸念されます。

「私たちの報告書は、MSCが予定している規格見直しの機会に、混獲削減のための必須条件に本格的な改善を行う必要があることを強調しています。現状では消費者は認証された魚だからと言って、サメ、海鳥、クジラなどの非対象種に影響を及ぼさないとは確信できません。」とバードライフの海洋保全プログラムの混獲プログラムマネジャー、Rory Crawfordは言います。

1997年に設立されたMSC(海洋管理協議会)は、漁業、水産物を持続可能なものと認証するための規格を運営・管理するために作られた非営利団体です。漁業者が認証を受けるかどうかは自発的で、MSCは対象となる漁業への規格は作りますが、審査は独立した審査機関によって行われます。

MSC認証制度は単に合否を判定するだけではありません。対象となる漁業は認証取得の際に、認証取得後もなんらかの改善を実施することが‘認証の条件’として付与されることがあります。場合によっては、このアプローチは非常に効果的だとバードライフの調査により分かりました。例えば南アフリカ沖のメルルーサ(魚の一種)のトロール漁で漁船団がMSCの必須条件実施のために、バードライフとRSPB(イギリスのバードライフ・パートナー団体)のアホウドリ・タスクフォースと共に活動した結果、海鳥の混獲が大幅に減少しました。しかし今回調べた10の漁業に課せられた条件は、混獲問題に取り組むには不十分でした。また、調査された漁業のうちの僅か3つが実際に効果的な混獲対策を実行していただけでした。

2018年末にMSCは漁業認証規格の見直しを始めると公表しました。絶滅危惧種や保護対象種への漁業の影響も見直しの項目の一つとして含まれます。今回の調査結果により、バードライフはMSCが混獲と関連する規格の見直しを行い、強化するよう勧めています。

Whale and Dolphin Conservation (クジラ・イルカ類の保全団体)の混獲プログラム・コーディネーター、Sarah Dolmanは「今回の報告書はMSCや他の水産関連認証制度に対する警鐘です。イルカ、ネズミイルカ、海鳥および他の保護種の混獲は望ましくなく不必要なことですが、今回調べた認証漁業の一部は混獲レベルが持続不能なものだと分かりました。MSCは責任を持たねばならず、また、保護種の混獲問題は優先課題で、全ての認証漁船に対して最善の管理対策の標準化が確実に行われなければなりません。」とコメントしました。

「私たちはMSCの必須条件に対する改善のために、データに関する規格をより強化することや認証漁業が混獲削減のために最善策を実施することなど、この報告書の中で一連の勧告をしました。」とCrawfordは言います。「MSC認証制度が混獲をなくす戦いをサポートし、環境意識の高い消費者の期待に応えるために必要な行動を確実に取ることを望んでいます。」

漁業による混獲は未だに多くの海洋種にとっての最大の脅威の一つです。その海洋種には、最も絶滅が危惧される大型クジラのタイセイヨウセミクジラと、22種のうちの15種が絶滅を危惧されているアホウドリ類が含まれます。

バードライフのMSCに関する報告書はこちらから、またこの報告書の裏付けとなる事例はこちらからご覧ください。

本調査を支援していただきました、デイビッド・アンド・ルシール・パッカード財団に御礼申し上げます。

報告者:Margaret Sessa-Hawkins

 

 

 

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