太平洋の小さな楽園をどう救うか

板挟みになっている小ラパ島の鳥 写真提供: © Fred Jacq

孤島の希少な在来野生生物が、明日の日も知れない命になってしまっています。2017年度「バードフェア」の支援を受けた緊急プロジェクトが小ラパ島のこの「小さな惑星」を救うために外来種に対する反撃を進めています。
「ラパ島は太平洋の島々の基準から言っても極めて孤立しています。」とバードライフの侵略的外来種プログラムのマネジャーのSteve Cranwellは言います。ラパの在来野生生物を守ることは、彼の緊急課題です。
およそ400万年前に南米とオーストラリアの中間に太平洋の広大な広がりの下で火山が噴火し、一風変わった新世界の始まりをもたらしました。4,000ヘクタールの「小ラパ島」は、遠くから区別するために、より大きな「東ラパ島」とは別に命名された、フランス領ポリネシアの最南端のバス諸島の一つです。住人500人のこの島へ行くには、月に一度の補給船に頼るしか他ありません。

小ラパ島の‘小さな惑星’
写真提供: © Fred Jacq

このような隔離にもかかわらず、自然は何とか栄えています、とCranwellは言います。「つながる陸地がないので、この地の多様な野生生物は大洋と風による旅とその結果の種の放散の驚くべき証拠です。」パラシュートで降下するクモ、種子、海鳥の糞の肥料のことを考えてください。この結果、ラパ島は固有種で有名です。三つの分類群の希少鳥類、植物の31%、数百種の無脊椎動物(68種のゾウムシを含む)および数種の魚類は世界のほかの場所では見られません。
かつて海鳥の群れが太陽の光を遮るほどだったと言われていましたが、多くの太平洋の島々と同様、人がネズミなどの外来種を持ち込み、進化的に備えがなく、防御を欠く原産の動植物に大惨事をもたらすことを防げません。悲しいことに在来の森林被覆は今では5%以下となり、同時に、島の鳥は数種がネズミの攻撃を逃れているだけです。侵略的外来種により包囲された小型の惑星のようなラパ島の「月」は文字通り、外来種のいない岩礁や近づきがたい崖の聖域にしがみついて生き残っている在来種が行きついた場所です。
世界的な絶滅危惧種の鳥であるハワイセグロミズナギドリ、ノドジロウミツバメ、ラパヒメアオバトやウスハジロミズナギドリ(準絶滅危惧種)も生息しています。今年4月にDavid and Lucile Packard基金の支援を受けてバードライフの調査隊がそれらの鳥を救う緊急作業のための設備を調べるためにラパ島に出かけました。2017年英国バードウォッチング・フェアによる収益は、多くの他の太平洋の島々で先駆者となった外来種駆除技術を足場にする「太平洋の楽園を守ろう」プロジェクトを可能にするでしょう。そのような駆除技術には私たちのアクテオン&ガンビア諸島での成功があり、鳥の復活に必要な安全なスペースを与えるものです。

スズメより小さなシロハラウミツバメ
写真提供: © Fred Jacq

無駄な時間はありません。「ウミツバメについては陸地では外来種のなすがままになってしまうスズメよりも小さく(体重20-100グラム)防御の手段を持たない種がいます。捕食されたり、巣が踏みつぶされたり、雑草による幼鳥を育てるために必要な環境の劣化などです。」とCranwellは言います。今年の調査まではノドジロウミツバメのラパ島での運命はほとんど分かっていませんでしたが、調査はかすかな望みをもたらしました。「私たちは4月の調査では彼らの姿を見ることができませんでしたが、生息が知られている二つの小島にネズミがいないことが確認でき、繁殖期が始まれば彼らは島に戻り、今年も幼鳥を育てるのに成功すると期待しています。」と彼は言っています。

科学的調査には、離れすぎているか?
ラパ島へ行くのが困難であるという事実に向き合いましょう。これほど離れていると、そこにいる種はどれほど科学的に知られているかに影響します。2種の海鳥のうちラパミズナギドリと呼ばれるハワイセグロミズナギドリの地方型とノドジロウミツバメのタイタン亜種はあまりにも調査ができていないため、彼らが完全な別種かどうか分かりません。ただし、最近得られた証拠は、ラパミズナギドリが明らかな別種であることを示しています。分類上の論争にもかかわらず、無慈悲な捕食と生息地の劣化によりこれを確認するための時間がほとんど残されていません。「私たちはこれらの種が絶滅した後に、別種であることが分かる悲劇的な運命の種にしてはなりません。まだ確認すべきことはたくさんありますが、これは彼らがあまり重要ではないという意味ではありません。」とCranwellは言います。鳥類の観点から「惑星ラパ」を述べると、1つはっきりしていることは、外来種の駆除により個体数や分布域を増やし、島を復活させることができるということです。真に保護活動が行われているのです。
この島で一番カラフルな鳥が陰鬱な雨の光景で際立っています。ラパヒメアオバトの姿はかつて島を覆っていた鮮やかな原生林を映し出します。このハトのカモフラージュする緑の羽毛は木から木に飛び移り、ディスプレーで示す時には黄色、バラ色の紫色、木の実の赤の炎に道を譲ります。ラパ島の原生林の果物と花に依存している本種にとってこの環境の復元以上に急務はありません。私たちの個体数調査は前回の調査が行われた30年前に比べ、恐らく半減したことを示しています。「調査は個体数が200羽以下であることを示唆しており、本種はほぼ間違いなく絶滅危惧IA類に分類されるでしょう。」と調査を主導したSOP Manu(仏領ポリネシアのパートナー)のCaroline Blanvillainは述べています。Cranwellが言う通り、ラパヒメアオバトは絶滅から逃れるために息も絶え絶えなのでしょう。まだ野良ヤギ、ウシ、伐採、山火事により失われていない小さな森林の断片に生息が限定されていますが、外来種の抑制と組み合わせた植樹プログラムがこの美しい鳥と、あまり目立たない多くの種を救う助けになるでしょう。
ラパ島と周辺の小島を外来種から守ることはかつての栄光を取り戻し、鳥よりもはるかに大きな利益をもたらすことを意味します。食物連鎖の底辺には数百種の固有の陸生カタツムリが生息しており、全てが絶滅へと向かう滑りやすい坂の上にいるのです。植物の間にも戦いがあります。キバンジロウ(別名ストロベリーグアバ)「恐ろしいほど密な茂み」などの雑草と、外から持ち込まれたマツが、繊細な自生植物を食べたり、踏みつけたりする野良ヤギ、ウシ、ウマの助けを得て、侵攻しています。悲しいことに4月の調査ではラパ島固有のビャクダンの最後の木立がなくなったことが確認されました。
生態系全体が影響を受けていますが、迅速に行動をするなら自然は十分に回復する弾力性があります。「例えば海鳥が島に戻ったことにより、彼らが「投入する物」により重要な生態的プロセスが再生するでしょう。」とCranwellは言っています。島からヤギを除去することにより、バードライフとSOP Manuのチームは森林に生息する種の回復基盤を提供し、地上に営巣する海鳥に影響を及ぼす浸食を食い止めるでしょう。急峻な地形が島でのネズミの駆除を困難にしますが、ドローンなどの新技術の利用により解決策を見いだせるでしょう。
1,500キロ離れた場所からの人と機材の運搬を含む島の復元は、チームにとってやり甲斐があります。「英国バードフェアからの支援は鳥類、生物多様性およびラパ島の人々にとって他に類を見ない機会です。このような支援があって初めて私たちはこの太平洋の離れた島独特のものを、次の世代に確実に受け継いで行けるでしょう。」と、Cranwellは希望を失いません。

 

報告者: Shaun Hurrell

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