シマアオジ: 普通種から絶滅寸前へ

かつてシマアオジは夏の北海道では普通に見ることが出来た種でした。本種はユーラシア大陸全域でも最も普通で広く分布するスズメ目の鳥の一種でした。ところが、1990年代から個体数が減り始めたのです。このことは最初日本における繁殖鳥調査により分かり、後に多くの調査により分布域全体で確認されました(フィンランドでは繁殖鳥としては絶滅しました)。2015年に科学者のチーム(バードライフ・インターナショナル東京のシンバ・チャンを含む)が全ての調査地で個体数の減少は80%を超え、かつての繁殖地の一部で地域的絶滅が起きていることを知り、結果を要約しました。IUCN(国際自然保護連合)による本種の状況もこの激減を明示しています。シマアオジは2004年以前には危惧種とは考えられていませんでしたが、2017年までに絶滅危惧ⅠA類に指定されたのです。おそらく、かつての普通種が僅か20年でのこのような急減を経験した例は他にはないでしょう。

シマアオジを救うためにバードライフ・インターナショナルは2016年11月に中国の広州市でワークショップを主催しました。本種を救うための国際的な活動計画を策定するためのこの会議には11ヶ国から50人の専門家が参加しました。この活動計画は2019年に公表される予定です。

 

2016年11月に中国広州市で開催されたシマアオジを救うためのワークショップの様子

活動はバードライフとそのパートナーによりワークショップ後に実施されています:

― バード・ロシアによる調査がロシアのサハリンとチュクチ自治管区で繁殖期に行われました。その結果、これらの地域でのシマアオジの大規模な減少が確認されました。サハリン南部では本種はおそらく繁殖鳥としては絶滅しており、サハリン北部では少数が存続していると思われます。

― 2017年7月の初めにサハリン北部でバードライフ・インターナショナル東京、日本野鳥の会、バード・ロシアによりシマアオジのカラー・バンディング(色付き足環付け)が行われました。この調査は2018年の繁殖期にも継続され、サハリン個体群の渡りのルートを調べるためにジオロケーターがシマアオジに装着される予定です。

色付き足環を装着したシマアオジ

ロシア(アムール地方、サハリン)、モンゴル、香港で共同のカラー・バンディングが行われ、この計画の国際コーディネーターはロシアのSergei Kharitonov博士が務めます。

香港チームが色付き足環を装着したシマアオジ

― 2017年にシマアオジの繁殖個体群の遺伝子解析のためのサンプリングがサハリンと北海道で始まりました(北海道のサンプルは標本から抽出)。私たちはすべての異なる繁殖個体群のサンプルが解析されることを望んでいます。これは遺伝子の多様性だけではなく、異なる個体群の渡りに関する理解を助けるでしょう。2018年2月にはロシアでシマアオジのDNA解析に関する会議が開催され、ほとんどの関係国が参加する予定です。

- 中国はシマアオジの保護を強化しており、その(食料としての)消費は犯罪とみなされます。私たちはメッセージを公表することによりこの法律の実施を支援しています。その目的のためにバードライフと香港観鳥会(HKBWS)がポスターを作りました。

香港観鳥会が作成したシマアオジを食べることに反対するポスター。中国語で「シマアオジを食べないで」と書いてある。

- 香港観鳥会(HKBWS)は香港のロングヴァレー地区でシマアオジにやさしい有機米の栽培に取り組んできました。これは日本の“里山運動”と同様のイニシアティブです。シマアオジのワークショップ参加者が広州でのワークショップ終了後に香港を訪れた時、彼らは野生生物にやさしい米に感銘を受けました。HKBWSは類似の農作業の振興のために、カンボジア、タイ、ミャンマーなどのシマアオジが越冬する国と活動を共にするでしょう。

― 香港観鳥会(HKBWS)はシマアオジを中国内での過剰捕獲から救う活動を主導して来ました。上掲のポスターを印刷し配布しただけではなくHKBWSは中国南部でシマアオジを救うためのメッセージを込めた2つのビデオを作成しました。一つはHKBWS自身が制作したもの(資金の一部は日本の地球環境基金が支援)、もう一つは香港ラジオ・テレビ局(香港の公式放送機関)との共同制作です。バードライフ・インターナショナル東京のシンバ・チャンはこの二つのドキュメンタリー制作を助けました。

香港ラジオ・テレビ局(RTHK)によるドキュメンタリーの制作現場

HKBWSのビデオ(広東語のナレーションに英語、北京語の字幕)はこちらからご覧いただけます。

RTHK局制作のビデオ(中国語の字幕のみ)はこちらからご覧いただけます。

加えて、シマアオジへの懸念が高まっています。2017年11月の末に2017年11月の広州市のワークショップに参加したサロベツエコネットワークがシンポジウムを開催しました。2017年の調査では良い結果が得られ、日本で繁殖するシマアオジを保護するために将来何を行うべきかについての有益な討議が行われました。

こちらからそのシンポジウムの様子をご覧いただけます。

HKBWSのVicky Yeungから“シマアオジにやさしい米”のパックを受け取るサロベツエコネットワークの長谷部氏

ミャンマーのBANCA(同国のバードライフ・パートナー)のThiriさん

ロシアでは2018年1月末~2月初めに開催されるロシア鳥類学会議の期間中にシマアオジに関する国内ワークショップが行われます。またカンボジアなどのシマアオジ越冬国の国内ワークショップが2018年末~2019年に計画されています。私たちは密猟を止めることへの協力と小型の渡り鳥の保護について一般大衆の関心を高めるために中国に接触しています。

シマアオジ・プロジェクトは主として日本の地球環境基金とバードライフ・インターナショナル東京のガラ・ディナーからの資金支援を得ています。

 

以下の二つのURLは日本語版のシマアオジに関する記事です。

https://tokyo.birdlife.org/archives/news-and-world/news/4589

https://tokyo.birdlife.org/archives/news-and-world/world/3963

次の二つのURLは英語版の記事です。

https://www.birdlife.org/worldwide/news/yellow-breasted-bunting-next-passenger-pigeon

http://www.birdlife.org/asia/news/yellow-breasted-bunting-declined-90

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