マリーンIBA
マリーンIBAとは:選定と海洋保全への応用
マリーンIBA(Marine Important Bird and Biodiversity Areas: 重要海洋環境)は、陸のIBAの考えを海洋にまで広げたものです。海洋における食物連鎖の上位に位置する海鳥を指標として、生物多様性や環境保全において重要な海域を選定する活動で、海洋と海鳥双方の保全に貢献することを目的としています。マリーンIBAは、主に以下の海域に相当します。
- 海鳥の繁殖地周辺の海域
- 非繁殖期の海鳥が集まる沿岸および遠洋の海域
- 渡りの要所
バードライフと世界各国のパートナー団体はマリーンIBAの選定を2004年に開始し、これまで3,300ヶ所のマリーンIBAが選定され、多くの国や地域でマリーンIBAが海洋保全政策に取り込まれています。例えば、2009年にマリーンIBAの選定が終了したスペインでは、選定された43ヶ所のマリーンIBAのうち、42ヶ所がスペイン政府により特別保全区域(SPA)として認定されました。また、2010年の生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)では「生態的及び生物学的に重要な海域」(EBSA)の重要性が議論されましたが、続いて世界各地域で開催されたEBSAの候補地を抽出するワークショップでは、多くのマリーンIBAがEBSAの候補地として選ばれました。
このように、マリーンIBAは海洋保護区やEBSAの設定における基礎資料として役立っています。また、長期的にマリーンIBAをモニタリングすることで、地域住民が持続的な海鳥の保全活動を実施することができます。
アジアのマリーンIBA
2010年、バードライフは日本経団連自然保護基金の助成を受け、アジア各国のパートナー団体と協働で、マリーンIBAの選出を開始しました。東京で開かれたアジア地域ワークショップを皮切りに、日本、インド、ロシアで国内ワークショップが開かれ、これらの国ではマリーンIBAの選定が終了しています。
日本のマリーンIBA
27ヶ所の日本のマリーンIBA
日本では、バードライフと日本野鳥の会が共同で選定を進め、これまでに、保全上重要な海鳥の繁殖地(44ヶ所)周辺で、採餌に利用する海域27ヶ所をマリーンIBAとして選定しました。これら27ヶ所のマリーンIBAと選定に使われた44ヶ所の繁殖地の情報は「マリーンIBA白書」(2016年出版)にまとめられています。また日本野鳥の会ホームページでも詳しい情報を見ることができます。