トヨタ環境活動助成プログラム: ベトナム ラタンの植林による森林保全と貧困削減(2014年~2015年)
プロジェクトの背景:
ベトナムの森林破壊の現状と貧困問題
ベトナム中部には、低地性の森林が広がり、固有種や希少種が多数生息していますが、木材、非木材資源の過剰収集、狩猟、他地域からの流入による人口急増、農地不足、環境に対する知識不足などで、森は減少の一途を辿っています。植林も行われているものの、ほとんどがパルプの原料となるアカシアの植林で、豊かで多様な生態系を損なう上、森林資源に依存してきた地域の人々は、住処をなくし、生計を維持することも困難になっています。地元行政でも自然資源の持続的な利用に関する知識が圧倒的に不足しており、地域の貧困率は40%に達しています。このような森林と生態系を守るには、地域住民が持続的に資源を利用し、暮らしが成り立つ仕組みを考えていく必要があります。
プロジェクトの目的と概要
プロジェクトでは、地方政府が住民に10年間、森林を利用する権利を認め、住民がその森を管理しながら換金可能なラタンの植林などを行うことで生計を向上していくことを目的としています。住民が持続的に森の資源を用いながら生活できる仕組みをつくることで、オーナーシップを持って森林保全を継続していくことを目指します。
本プロジェクトは、2011年度の「トヨタ環境活動助成プログラム」で実施したクアンチ省ダクロン郡での成功事例をモデルとして展開していきます。
プロジェクト対象地: クアンチ省ファンホア郡の地域コミュニティ(ホー村)
プロジェクト期間: 2014年1月より2015年6月末まで
プロジェクトサイト
活動地周辺の森林
ラタンの苗木準備(イメージ)
ラタンの植林(イメージ)
プロジェクトの主な活動内容
- 活動対象地を選定し、自然資源や土地利用について調査を実施する。
- 地方政府が住民に長期間(10年程度)森を利用する権利を認め、手続きを進めるための支援を行う。目標面積は100ヘクタール。
- 地域住民が土地を使用し、管理する仕組みを検討する。また地域行政と地主、地域住民の間で森林の保全と利用についての合意をまとめる。
- 上記の利用権の認められた森林で、少なくとも20世帯の住民がラタンの植林を行う。
- 自治体、地域住民等のステークホルダーが森林や生態系、持続可能な林業などへの理解を深めるため、研修やワークショップを実施し、キャパシティビルディングを行う。
- 地域住民による森林保全グループを編成し、モニタリングを実施できるよう支援する。
現在までの主な活動と成果(2014年1月から6月)
- ホー村には500ヘクタールの自然林があるが、行政機関やステークホルダーとの協議の結果、そのうち120ヘクタールをコミュニティへ10年間貸与し、住民による持続的な森林管理と資源の利用を認めることが決定した。
- ホー村の54世帯のうち、24世帯が選定され、各世帯1ヘクタールをラタンの植林地として利用することが認められた。プロジェクト対象地域には先住民や少数民族が多く、貧困率が高いが、上記の24世帯はすべて少数民族Van Kieuであり、当該プロジェクトが、生計向上に寄与することを目標とする。
- ホー村における自然資源や土地利用についてインタビュー調査を実施、また行政機関との協議の上、住民への貸与を認めるエリアを選定、またラタンを植林するエリアを選定した。
- プロジェクト対象地のホー村の住人等に持続可能な林業、ハチミツなど非木材資源の生産と利用などの研修を実施し、延べ123人が参加した。
クアンチ省森林保全局、ホー村の自治体関係者と協議を実施
2014年6月にホー村で実施された研修活動
このプロジェクトは、「トヨタ環境活動助成プログラム」の助成を受け活動しました。