トヨタ： レッドリスト対象種保護のための車両提供プログラム
背景
保全活動では、アクセスが非常に悪い場所まで出向かなければならないことがあります。車でしか行けないような場所もしばしばで、さらに舗装されていない悪路も多く、信頼できるSUV車が必要になります。しかしながら、こうした車両は一般的に価格も高く、財政基盤の弱い地域団体には手が出ないことがあります。
活動概要
バードライフとトヨタ自動車株式会社は、2016年に日本企業初のグローバル・ビジネス・パートナーシップを結び、包括的な環境保全活動を進めました。本プロジェクトでは、バードライフ・パートナーの中でもとくに緊急性の高い団体に、トヨタ自動車株式会社より車両を提供していただき、より効率的かつ効果的な保全活動の実施を支援しました。とくに、レッドリストに掲載されている絶滅危惧種やその生息地の保全に役立てています。2016年から５年間に渡り、合計10台の車両が10カ国のバードライフ・パートナーに寄贈されました。
これまでの提供先
2020年
ネパール（Bird Conservation Nepal）
Bird Conservation Nepalは、ネパールのバードライフ・パートナーです。寄贈された車両は、絶滅危惧種ベンガルハゲワシ等の保全のため、放鳥や野生復帰のモニタリング、生息状況調査、普及啓発、地域・国家レベルの絶滅危惧種保全に関する政策立案支援等の活動に役立てられます。
アルゼンチン（Aves Argentinas）
Aves Argentinasは、アルゼンチンのバードライフ・パートナーです。寄贈された車両は、絶滅危惧種カオグロナキシャクケイやキバラムクドリモドキ等の保全のため、密猟の監視、鳥類モニタリング、飼育下での繁殖と野生復帰、適切な家畜管理の訓練等の活動に役立てられます。
2019年
ミャンマー（BANCA）
BANCAは、ミャンマーのバードライフ・パートナーです。寄贈された車両は、干潟の開発などが原因で近年急速に減少するヘラシギの約半数が越冬するミャンマーにて、ヘラシギをはじめとする干潟を利用する渡り鳥の調査や保全活動に使用されます。
タヒチ（MANU）
MANUは、タヒチのバードライフ・パートナーです。寄贈された車両は、一時期は残り35羽まで減少したタヒチ島の固有種タヒチヒタキなどの生息地の復元活動や環境教育などに使用されます。
2018年
インドネシア（Burung Indonesia）
Burung Indonesiaは、インドネシアのバードライフ・パートナーです。寄贈された車両は、独特で貴重な生態系が形成されているスラウェシ島での保全活動に使用されます。セレベスツカツクリやアカコブサイチョウなどスラウェシ島の固有種や絶滅危惧種の保全、地域住民の生計向上や環境教育などを通じて、生態系全体を保全するための取り組みを進めます。
ジンバブエ（BirdLife Zimbabwe）
SBirdLife Zimbabweは、ジンバブエのバードライフ・パートナーです。ジンバブエには6種類のハゲワシが生息していますが、そのうちの5種は絶滅危惧種に指定されています。しかしハゲワシは、動物の死骸を食べることで環境をきれいに保ち、疫病の蔓延を防いでくれる重要な役割を持っています。寄贈された車両は、これらのハゲワシを保全するための活動に使用されます。
2017年
ベトナム（Viet Nature Conservation Centre）
Viet Natureは、ベトナムのバードライフ・パートナーです。寄贈された車両は、主にIBAの保全活動のほか、ベトナム固有の青いキジ、コサンケイの保全活動に使用されます。IUCNレッドリストで絶滅危惧IA類に指定されているこの鳥は、ベトナム戦争や森林伐採の影響で激減し、2000年以降は野生では確認されていません。そのため野生個体の探索や、人口繁殖した鳥を野生に返す活動を行っています。
ブラジル（SAVE Brasil）
SAVE Brasilは、ブラジルのバードライフ・パートナーです。寄贈された車両は、主に大西洋岸森林の保全やそこに生息するカオグロナキシャクケイの保全に使用されます。この鳥は果実を主な餌としており、種を運ぶ重要な役割を果たしています。そのためこの鳥を守ることは森林そのものを守ることにつながります。しかし絶滅危惧IB類に指定されるなど数は極めて少ないため、人口繁殖した鳥を野生に返すプロジェクトを実施しています。
2016年
メキシコ（Pronatura Sur A.C.）
Pronatura Surはメキシコのバードライフ・パートナーであるPronaturaグループの１団体で、主にメキシコ南部（ゲレロ州、オアハカ州、チアパス州）で活動しています。メキシコ南部は南北アメリカ大陸を縦断する渡り鳥の重要な中継地であり、数多くのIBA（Important Bird Area）もあります。寄贈された車両は、メキシコ南部に生息する絶滅危惧種やその生息地の保全活動に使用されます。この地域には、絶滅危惧ⅠＡ類のミジカツノユウジョハチドリや、絶滅危惧ⅠＢ類のツノシャクケイ、キホオアメリカムシクイ、ミズイロフウキンチョウなどが生息しています。
南アフリカ（BirdLife South Africa）
BirdLife South Africaは、南アフリカのバードライフ・パートナーです。寄贈された車両は、主に「西ケープ地域保全プログラム」で使用され、モニタリングや調査、絶滅危惧種やその生息地の保全活動に使用されます。この地域には、23のIBAがあり、絶滅危惧ⅠＢ類のケープシロエリハゲワシ、ナンアチュウノガン、ケープペンギンの他、多くの絶滅危惧種が生息しています。