平成29年度東南アジア地域における湿地管理促進業務

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業務の概要

環境省は、1989年より東南アジア各国の湿地管理能力の向上及び各国の湿地のラムサール条約への登録等を支援しています。平成28~29年度(2016~2017年度)は、カンボジアにある東南アジア最大の湖、トンレサップ湖南端部に位置するストゥン・セン湿地(Stung Sen)のラムサール条約への登録を目指し、生物多様性および湿地の恵みを活かした地域住民の生活に関する基礎調査を行うとともに、地域住民レベルから郡および州、中央政府レベルまでの会合を行い、ラムサール条約登録に向けて主要なステークホルダーの合意形成を進めました。平成30年度は、同業務の3年目として、ラムサール条約への登録完了を目指して活動を行っています。

背景と目的

ストゥン・セン湿地には、雨季と乾季で水位が大きく変化する水系に拠水林が発達し、様々な生物が生息する独特な生態系が形成されています。しかし放火や伐採、違法な狩猟・漁業などによって生物多様性の劣化が懸念されています。2015年6月に開催されたラムサール条約第12回締約国会議で採択された条約の戦略計画2016-2024では、条約湿地の面積・数及び条約湿地間の生態学的連続性を顕著に増大させることを目標の一つとして掲げており、新たにラムサール条約登録を目指す本業務はそれに呼応するものといえます。本業務は、カンボジアにおける持続可能な湿地の利用・管理を促進するため、ストゥン・セン湿地のラムサール条約への登録支援を目的に実施しました。

業務概要と成果

平成28年度の同業務では、ストゥン・セン湿地に関する調査を実施して同湿地の生態系サービスや周辺地域に暮らす住民の生活の状況を明らかにするとともに、ラムサール条約の登録区域の草案を作成しました。さらにその草案をもとに地域住民、郡政府、州政府との会議を順に開催し、各ステークホルダーの合意を得ることができました。

それを受けて平成29年度は、カンボジア環境省をはじめ関連政府機関や地域住民などを招いて国レベルの会議を開催し、ステークホルダーから合意を得るとともに、登録候補区域を確定させました。また、登録後のより効果的な湿地管理に向けて、同湿地のレンジャーに対して鳥類のモニタリング手法に関する研修を実施し、レンジャーの湿地管理能力の向上を図りました。

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ストゥン・セン湿地に発達する拠水林

 

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ホシバシペリカン(IUCN準絶滅危惧種)

 

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地域住民とのワークショップの様子


全国会議の様子