オナガサイチョウの保護

オナガサイチョウ by SANJITPAAL SINGH / JITSPICS.COM©

 

オナガサイチョウの生態

オナガサイチョウは、サイチョウの中でも大きく、その体長は110-120cmにもなります。長い尾と白黒2色の羽を持ち、短いくちばしの上に「カスク」と呼ばれる赤い犀角(さいかく)を有しています。カスクは主にケラチンでできており、中が空洞になっている他のサイチョウのカスクとは対照的に、オナガサイチョウのカスクは中が詰まっていて重く、体重の10%以上を占めています。

雑食性で、果物、特にイチジクを好みますが、草の実、小型の爬虫類、哺乳類、鳥類などを餌とします。食物は高い木の上で木の皮や柔らかい木を削り採取しています。

主にブルネイ、インドネシア(スマトラやカリマンタン)、マレーシアやミャンマー南部、タイ南部などの常緑樹林で生息しています。

© Muhammad Alzahri/arinature photography

オナガサイチョウの雄

 

オナガサイチョウに迫る脅威

オナガサイチョウは、主要生息地でさえ少数しか確認されておらず、破壊が進んだ森林や泥炭湿地、海岸林ではその姿をみることができません。現在、IUCNレッドリストの絶滅危惧IA類に指定されています。

オナガサイチョウを破滅に導いているのは、そのカスクの希少さにあります。千年以上に渡り、オナガサイチョウはボルネオ島で捕獲され、中国で売買されてきました。その価格は中国の闇市場で約1,000米ドルもすると言われています。仲介人から資金提供を得た犯罪組織ネットワークによる広範囲に及ぶ密猟がインドネシア(カリマンタンやスマトラ)で報告されています。2010年から2017年の間に、世界中で少なくとも2,878個のカスクが、59以上の押収現場で差し押さえられました。

近年、その需要はとどまるところを知らず、ジュエリーや美術品の材料として重宝されることから、かつてないほどの危機に直面しています。

 

対策

バードライフは、オナガサイチョウの減少傾向を受け、2015年にIUCNレッドリストの保護状況を、準絶滅危惧種から絶滅危惧IA類へ引き上げました。

2017年5月には、オナガサイチョウ・ワーキング・グループ(IUCN種の保存委員会のサイチョウ専門家グループのサブグループ)が結成され、2018年8月には、地域の種の保全戦略と行動計画が策定されました。

オナガサイチョウの保護については、国内外で政治的な問題として取り上げ、対応の必要性を示す必要があり、バードライフはその役割を担い、継続的な活動をしています。

 

© Dewantara/WCS

インドネシアで押収されたオナガサイチョウのカスク

 

オナガサイチョウ保全戦略

バードライフは、2027年までの目標として以下の3つを設定し、各国の政府やNGO、民間企業や地域住民と一緒に保全活動を推進していきます。

 

目標① オナガサイチョウおよびカスクを使った製品の取引の廃止

  • 国際的な政策・条約の履行を通し、全ての商用取引を廃止します。
  • 全ての消費者・消費国を対象に、オナガサイチョウのカスクを使った製品の需要をなくすキャンペーンを実施します。

 

目標② オナガサイチョウ個体群とその生息地の保護

  • 効果的な密漁対策と現場での保全活動により、オナガサイチョウの生息地を守り、持続可能な管理を実施します。
  • オナガサイチョウの生息地において、地元コミュニティとの協力体制を強化します。

 

目標③ オナガサイチョウの健全な個体群の維持、回復に必要な知見の蓄積と共有

  • オナガサイチョウの主要な個体群を特定し、適正な管理をします。
  • 個体群の健全度や脅威の監視のため、継続的なモニタリングを実施します。

 

バードライフ東京は、これらの活動を加速するため、より多くの企業、個人サポーターの支援を必要としています。