東南アジアにおける湿地管理促進業務(2013年度)
プロジェクトの背景と目的
環境省は、1989年より東南アジア各国の湿地管理の向上及びラムサール条約湿地等への登録を支援する業務を実施し、近年ではとりわけ開発の著しいミャンマーを対象に業務を展開してきた。本プロジェクトの目的は、ミャンマーにおけるこれまでの環境省の事業の成果を整理し、ミャンマーにおける近年の湿地保全状況と併せて分析、今後の課題及び展開について整理することである。
なお、バードライフ・インターナショナル東京は、2006年より各年度の業務を請け負い、実施している。また、2005年以前はパートナー団体である日本野鳥の会が1989年より業務を実施した。
プロジェクト概要
- ①ミャンマーの湿地保全に関する1989年以降の環境省発注業務内容についての整理
- ②ミャンマーの湿地保全に係る現在の状況について、文献調査とラムサール条約事務局及びEAAFP事務局などの関係者に対するヒアリング調査を実施し、状況を整理
- ③とりわけ重要な湿地についての現地調査とミャンマーの現場関係者に対するヒアリング調査を実施
- ④上記の調査結果の分析を行い、今後の課題、展開についてとりまとめを実施
調査結果概要
湿地はミャンマーにとって重要な生態系の一つであるが、国の開放にともなう経済開発により、急速な環境悪化が憂慮されている。
ラムサール条約登録湿地は2014年3月現在のところ、1か所のみであるが、次の登録に向けて調査が実施されており、3か所の湿地が候補にあがっている。また、ラムサール条約湿地登録の前に、EAAFPへの参加と、5か所を目途にフライウェイ・サイトへの参加も並行して検討されており、政府の湿地保全や渡り鳥の保護への熱意は高い。しかし、国の担当部局のキャパシティが不足しているため、日本の湿地保全の経験やノウハウの提供が強く望まれている。
今回の調査を通じ、ミャンマーの湿地が直面する脅威は、農地転換、養殖場への転換、観光施設の建設等による湿地の消失、灌漑用の取水や農薬による汚染、生活排水による汚染、湿地の集水域での森林伐採や農地開発などによる土壌の浸食、土砂の堆積など様々な脅威があげられた。また、地元住民のタンパク源とするための鳥類の狩猟なども湿地生態系を脅かす要因となっており、地元住民の生計手段の改善や意識啓発などの必要性もある。
ミャンマー政府やラムサール条約事務局へのヒアリングにおいて、こうした脅威へ対処するための重点分野として、湿地管理者の能力向上、地方自治体との協働、地域社会への啓発があげられた。また、ミャンマーの湿地10サイトへのヒアリングの結果からは、サイト特有の課題に加え、共通して湿地管理職員の能力向上と地域住民の意識の啓発と保全への参加があげられている。本調査結果より、今後のミャンマーの湿地保全においては、教育研修や一連の研修カリキュラムの開発、とりわけ重要なサイトの保全活動などの支援を実施していくことが急務と考えられる。
ラムサール条約に登録されているモインジー湿地
ラムサール条約に登録されているモインジー湿地
ミャンマー環境保全林業省へのヒアリング